如何なる星の下に
高見順(著)
/講談社文芸文庫
作品情報
昭和十三年、自ら浅草に移り住み執筆をはじめた高見順。彼はぐうたらな空気と生存本能が交錯する刺激的な町をこよなく愛した。主人公である作家・倉橋の別れた妻への未練を通奏低音にして、少女に対する淡い「慕情」が謳い上げられるのだった。暗い時代へ突入する昭和初期、浅草に集う人々の一瞬の輝きを切り取り、伊藤整に「天才的」と賞賛された高見順の代表作にして傑作。
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商品情報
- シリーズ
- 如何なる星の下に
- 著者
- 高見順
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- 講談社文芸文庫
- 書籍発売日
- 2011.10.07
- Reader Store発売日
- 2015.09.11
- ファイルサイズ
- 3.6MB
- ページ数
- 288ページ
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この作品のレビュー
平均 3.5 (4件のレビュー)
-
語り手の作家の倉橋は作者をモデルとしている。
倉橋は浅草に仕事用のアパートを借りている。しかし執筆にはそこまで熱心ではない。
浅草仲間と小料理屋へ行ったり、レビュウを見たりして過ごす日々。
以前の妻の…鮎子は倉橋が留守の時に荷物をまとめて次の男のところへ出て行った。
だが今ではその男とも仲良くやっている。
そして倉橋には今は想い人がいる。まだ若い…幼いといってもよいレビュウダンサーの小柳雅子。本人にあったことはない、ただ純粋に想っているだけ。
そんな倉橋を料理やの美佐子は「あなたは猟奇趣味で浅草にいるの?そういう人は嫌いよ」という。
浅草の雑多な様子、それはいろんなものが入り混じった匂いであり、夜のにぎやかさと昼の倦怠感であり、幼い踊り子たちが化粧を落とした疲れて青白い顔であったり、入り乱れた男女関係だったりする。
倉橋は考える。わたしは浅草の外の人間でただ浅草を冷やかしに来ているだけなのか。
しかし浅草はそんな人間を抱き込み、そして倉橋はそんな浅草から離れないでいる。
***
如何いかなる星の下に生れけむ、われは世にも心よわき者なるかな。暗にこがるるわが胸は、風にも雨にも心して、果敢なき思いをこらすなり。花を採るべく、月や望むべし。わが思いには形なきを奈何にすべき。恋か、あらず、望か、あらず・・・。
-高山樗牛-
高見順は日記で「空襲により『如何なる星の下に』で書いた店や橋が焼け落ちた」と記録しています。
(「敗戦日記」はこちら)
https://booklog.jp/item/1/4122045606続きを読む投稿日:2019.04.12
著書は読んでいなかったけど、ご病気が重篤で『死の淵より』などの作品が話題になっていた記憶がある。有名な鎌倉文庫や駒場の近代日本文学館などの文学活動をなさっていた印象も強い。
謹厳な堅苦しいような作…家、初期のこの作品はぎやかだった戦前の浅草を描いた、通俗小説のようで意外な気がしたが、作品が書かれた時の作家の身辺を知ればわかる気もする。
思想的なことや妻に去られたことなどで何もかも行き詰っていて、脱却したいために遊興地浅草でブラブラしていたのだが、それでもなお悶々としていた時代を材料に私小説風な作品。
別れた妻への未練、戦争への暗い道の予感、可憐なダンサーに寄せる慕情。時代の背景・風俗がよく書き込んでありおもしろいのはさすが。
昭和14年頃の浅草なんてもうこのような本で知るしかない。有名なのは永井荷風の作品。そういう意味では貴重な文芸作品でもある。続きを読む投稿日:2018.12.15
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