にほんご歳時記
山口謠司(著)
/PHP新書
作品情報
季節の移り変わりも、言葉がなければ、ただ目に映って消えていくばかりである。一見、当たり前に見える四季それぞれのことを「歳時記」として、一つひとつの言葉にすることによって、我々の先祖は、「季節」を意識していった。そして、その有り難さを想った。すでに失われたもの、受け継がれているもの、気がつかないほど当たり前になっているもの。例えば。年中、食べられるマグロに季語なんてあるのだろうか? 実はある。江戸時代、マグロは冬にしか食べられなかった。その名残で今でもマグロは冬の季語なのである。そんなこと知らなかった! でも季語があったからこそ、本来のマグロや当時の日本人を知ることができる。日本文献学を専門に、海外で活動していた著者は、イギリス、フランス、中国の言語や文化に明るく、比較しながら日本独自の季節感を本書で解説する。薫る風、朧月夜、蝉合唱・・・・・・四季をきちんと味わう大人になれる100の言葉。
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商品情報
- シリーズ
- にほんご歳時記
- 著者
- 山口謠司
- 出版社
- PHP研究所
- 掲載誌・レーベル
- PHP新書
- 書籍発売日
- 2015.07.15
- Reader Store発売日
- 2015.08.14
- ファイルサイズ
- 1.1MB
- ページ数
- 224ページ
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この作品のレビュー
平均 4.0 (2件のレビュー)
-
俳句の歳時記ではなく、いろいろな言葉を春から順に100取り上げて、語源、関連する和歌や俳句、漢詩、詩、昔の生活などに蘊蓄を傾け、著者の考えも加えたもの。読んでいて非常に楽しい。うーん、自分はこういうも…のが好きなんだなあ、と今更ながらに思う。
昔は、大名などは陶器の枕を使った。うわー、首が凝りそう。庶民は蕎麦殻や小豆を入れた枕を使った。小豆は毎年一回取り換え、正月15日は小豆粥を食べる習慣があったという。小豆の海老茶色は、古代中国では生命を象徴し邪気を払うとされた。漢方では、解毒剤とされた。
百人一首の「夏の夜はまだ宵ながら明けぬるを雲のいずこに月宿るらむ」は、後朝の別れの歌で、宵は酔いに掛けてあり、月はかわいい女の子である。雲に月が隠れたというのは、大和絵の伝統的技法のすやり霞が場面の変わり目を表すように、彼女は空間的にも時間的にも次の間へ行ってしまっているというのである。
「新た」は「あらた」と読むように「新しい」は、もともと「あらたしい」と読んでいて、言いにくさを回避するために「あたらしい」になった。「山茶花」も同様で「さんざくぁ」ともともと読んでいたのである。山茶花は病人に贈ってはいけない、ぽたりと花が落ち、まるで突然命を落とすようにも見えるから。
とまあ、へえー、ほーという感じで蘊蓄満載でにんまりしてしまう。続きを読む投稿日:2020.03.16
日本語から感じられる季節感にまつわる全100項の雑学的エッセイです。春から冬まで、25編ずつです。
夏目漱石が落語の影響を受けた文体であるとか、台風は昔は颱風と書きさらに昔は野分と言ったとか、枯れ尾…花の尾花はススキのことだとか、日本の四季にまつわるなにげないのだけれど僕なんかは全く知らない雑学の数々が興味深かったです。さらに、蚊取り線香のあの渦巻き型を思いついたのは明治期の女性であったとか、ラジオ放送が始まったのが大正十四年でその影響で寄席が減っていったとか、エピソード的雑学もいろいろ語られています。
歳時記というくらいだから季語についてのエッセイなのだけれど、俳句に限らず、和歌や古典、中国の漢詩まで引いていろいろな「にほんご」に秘められた雑学を光の当たるところに引き出してくれている。ひと項目2ページの分量で読みやすいですし、なかなかおもしろいです。
松尾芭蕉の俳句と、清少納言の『枕草子』が多く引かれています。在原業平も何度かでてきました。僕が感じたのは、なんていうか、平安時代の和歌にこめられている心情ってぐっとくるものがあるなあということ。表現力がすごいですよね。今でいえば、切実な「LOVE SONG」の数々といった感じ。
というわけで、日本語というものを鍵にして開けた扉の先に知る、日本の面白いところ、佳きところを味わえる本でした。続きを読む投稿日:2023.05.28
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