宮沢賢治の青春 “ただ一人の友”保阪嘉内をめぐって
菅原千恵子(著)
/角川文庫
作品情報
「私が友保阪嘉内、私が友保阪嘉内、我を棄てるな」と賢治に言わしめた盛岡高等農林学校時代のただ一人の友、保阪嘉内。才気煥発、明朗闊達な彼に強く魅かれ、大きな影響を受ける賢治。だが、二人の交流は賢治の国柱会への傾倒をめぐって変化し、やがて訣別してしまう。『銀河鉄道の夜』をはじめとする厖大な作品群の成り立ちと実生活の謎の数々を、二人の友愛を裏づける多くの資料をもとに解き明かす、画期的かつ衝撃的な賢治研究の新成果。
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この作品のレビュー
平均 4.4 (8件のレビュー)
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『銀河鉄道の夜』が法華経の思想を元にした「愛する人を失う悲しみを乗り越える物語」であるとする「カンパネルラ=妹トシ説」。それももちろん素敵だとは思う。しかし、カムパネルラとジョバンニの関係性は、本書で…紹介される現存の書簡からも親友・保阪嘉内と賢治のそれに何らかの繋がりがあると思わざるを得ない。それはきっと極めて個人的な、独白のような切実な他者受容の苦悩なんだろう。僕はそう思う。
銀漢ヲ行ク彗星ハ
夜行列車ノ様ニシテ
遥カ虚空ニ消エニケリ
1910年、ハレー彗星の接近に際して少年保阪は一枚の彗星のスケッチを書いたそうだ。その中に添えられたメモ書きがこれ。本書では取り上げられていないが、うーむ、保阪説。続きを読む投稿日:2011.09.29
2023.6.2 市立図書館
テレビで宮沢賢治についてのドキュメンタリー番組をたまたまやっていて、そういえば賢治の友人の保阪嘉内については少し前に梨木香歩さんが「本の旅人」に連載していたけれど(「きみ…にならびて野にたてば」)、あれはどうなったんだっけ、と思い出し、その連載はPR誌の休刊もあり、どうなったのかよくわからないのだけれど、梨木さんの参考資料ともなっていた(はずの)本を思い出したので予約を入れて借りてみた。
前半は賢治が保阪嘉内に送った手紙と保阪嘉内の手紙や日記や作品などからふたりの関係や気持ちの変化を読み解いていく作品で、高等学校時代のエピソードは梨木香歩さんの連載でも読んだ覚えがありどんどん読める。賢治と嘉内の両人やこの時代に限らず、跡取り息子と父親との相克はなかなか厳しいものがあるのだなと伝わってくるし、若い二人が理想に燃えて何者かになろうとしもがく姿は今ちょうど再放送している「あまちゃん」のアキとユイにもどこか重なるように思えた。
晩年のあたりを読んだときは、農民たちのよかれを思いつつ非力にして理想の実現にほど遠い現実に苦しむ賢治の姿が、地方の酒販店主として小売業のありかたを模索しつつさまざまなものを諦め絶望しつつ店も人生も畳んだ父の姿がオーバーラップしてやるせない気持ちになった。
これが著者の卒論(宮城学院女子大学)を増補したものだというからおどろく。妹トシ(の死)をあまりに軽く扱っている、作品と作者の人生を恣意的に寄せすぎているという異論もあるらしいが、妹との関係にせよ、親友との関係にせよ、完全な真実(宮沢賢治自身が認める正解)を知るのは不可能なのであるし、私にとってはひじょうに興味深く説得力もある解釈で、著者の解釈には感服した。賢治をめぐるキーパーソンとしては嘉内やトシ以外に実際には想い人がいた説などもあり、あの説この説に接した上で、もう一度自分なりに「銀河鉄道の夜」を読み直してみたいと思えた。
みずからの青春も重ねつつ宮沢賢治研究にうちこんだ著者自身、病を得て2010年に亡くなっている。梨木香歩は「きみにならびて野にたてば」で、(病を発症し命を落とした)菅原千恵子の一生を書き留めねばという個人的な思いが本作品の執筆動機の一つだと明記していたらしい(←個人的な記憶でなくネット上でみつけた情報)だけにそのへんの経緯もちょっと気になる。続きを読む投稿日:2023.06.02
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