ぼくらの民主主義なんだぜ
高橋源一郎(著)
/朝日新書
作品情報
日本人に民主主義はムリなのか? 絶望しないための48か条。「論壇時評」はくしくも3月11日の東日本大震災直後からはじまり、震災と原発はこの国の民主主義に潜んでいる重大な欠陥を炙り出した。若者の就活、ヘイトスピーチ、特定秘密保護法、従軍慰安婦、表現の自由・・・・・・さまざまな問題を取り上げながら、課題の解決に必要な柔らかい思考の根がとらえる、みんなで作る「ぼくらの民主主義」のためのエッセイ48。大きな声より小さな声に耳をすませた、著者の前人未到の傑作。2011年4月から2015年3月まで、朝日新聞に大好評連載された「論壇時評」に加筆して新書化。
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商品情報
- シリーズ
- ぼくらの民主主義なんだぜ
- 著者
- 高橋源一郎
- 出版社
- 朝日新聞出版
- 掲載誌・レーベル
- 朝日新書
- 書籍発売日
- 2015.05.01
- Reader Store発売日
- 2015.06.03
- ファイルサイズ
- 0.5MB
- ページ数
- 256ページ
- シリーズ情報
- 既刊2巻
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この作品のレビュー
平均 4.0 (80件のレビュー)
-
朝日新聞に2011年から2015年まで月1回連載された「論壇時評」を新書化したもの。
「時評」という言葉を辞書で調べたら、2つの意味が書かれていた。(1)当時の世間の評判(2)世の中に起こっているさま…ざまな出来事についてする評論。ここで用いられているのは、(2)の方の意味であろう。また、ついでに「論壇」の意味も辞書で調べると、同じく2つの意味が書かれていた。(1)意見を論じ述べる壇。議論を戦わせる場所(2)議論を戦わす人々の社会。評論家の社会。言論界。ここで用いられているのは、やはり(2)の方の意味であろう。本連載は月1回のものだったので、連載前1ヶ月の間に論壇に発表された色々な意見に対しての評論、というのが「論壇時評」という題名が表す意味だと理解した。
原発やTPP、その他、多くのことがテーマとなっているが、本書は、そういったことに対しての「高橋源一郎の意見」が直接的に語られている訳ではなく、そういったテーマに関して、前1ヶ月に論壇で発表された意見に対しての論評という形で、高橋源一郎の意見が、間接的に示されている。かつ、1回あたりの分量が、論評の対象の出所データを含めて新書で5ページ。出所にたいてい、だいたい1ページ使われているので、論評自体は新書で4ページという短いものである。そういうこともあり、私の、本書を読んでみての最初の感想は、よく分からない、というものであった。
TPPに関して論じた(正確に言えば、TPPについて書かれた記事に関して論じた)、「"憐みの海"を目指して」という題名での回がある。そこで、高橋源一郎は、TPPに反対する多くの論者の意見に賛意を示し、あるいは、感銘を受けたりする。更に、最後の切り札的に、エマニュエル・トッドの「自由貿易と民主主義は長期的に両立しません」という言葉を引用する。高橋源一郎自身が、TPPに反対していることは、これを読むと分かるし、なぜ、反対しているのかも、ある程度分かる。しかし、ここでは、TPPについてのメリットやデメリットが総合的に論じられている訳ではないので、読者は、「高橋源一郎はTPPに反対している」という事実のみしか、あるいは、「TPPには皆さんも当然反対と思いますが、私も反対ですし、この1ヶ月の論壇でも、このような反対意見がありました」という紹介しか、この回の記事からは読み取れないのだ。
私自身は、そのような評論は、無理があると思うし、第一、面白くも何ともないと感じた。続きを読む投稿日:2022.01.01
学校教育の授業の現場で扱いにくい話題は、性、宗教、そして政治。それは塾でもさほど変わらない。入試過去問題の文章にそれらが扱われていても、何となく回り道せざるを得ない(平安古文なんか大変!)。しかし、日…常の会話でも取り上げにくいそれらこそ、実は、教育の現場で語られるべきものだとも思う。オープンに議論するという土壌のないこの国で、民主主義を考える機会が確保されていると言うことはできない。◆この本は、朝日新聞に月一回掲載の「論壇時評」の最近四年分をまとめたもの。扱われる言説の範囲はいわゆる「論文」だけにとどまらず、雑誌の記事やインターネット上の発言、YouTube の動画までに及ぶ。難しい言説だけを取り上げて高所から見下ろすのではない、著者の柔らかな姿勢が伝わってくる本だ。◆一冊の本としてあらためて読むと、著者の一貫した姿勢が伝わってくる。戦争の過ちと犠牲の上にようやく作り上げてきた民主主義を、現代の私たちが大切にしていない事実を考察する。「反知性主義」とも言われる、ヘイトスピーチやバッシング、国家全体の右傾化が、民主主義を虚構に過ぎないと暴こうとする。しかし、それらの「思想」もまた、自己肯定のための虚構に過ぎない。どちらを「現実」として選択するかは、私たち次第なのだ。戦後七〇年を迎える今夏、この本を、学校の夏の課題に埋もれることなく、「ぼくらの」という言葉の意味を、自分の頭で考える契機としてほしい。(K)
紫雲国語塾通信〈紫のゆかり〉2015年6月号掲載続きを読む投稿日:2024.02.23
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