出生前診断 出産ジャーナリストが見つめた現状と未来
河合蘭(著)
/朝日新書
作品情報
羊水検査、絨毛検査、母体血清マーカー検査、NIPT、着床前スクリーニング・・・・・・1970年代に始まり、次々に登場してきた胎児診断技術。検査を受けるか否か。結果をどう受けとめるか。晩産化が進み、産科医療も進歩するなかで、多くの女性たちが重い問いに対峙し、葛藤している。体験者の生の声、医療関係者の賛否両論に、日本で唯一人の出産専門フリージャーナリストが迫る。
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商品情報
- 著者
- 河合蘭
- 出版社
- 朝日新聞出版
- 掲載誌・レーベル
- 朝日新書
- 書籍発売日
- 2015.04.01
- Reader Store発売日
- 2015.06.03
- ファイルサイズ
- 3.3MB
- ページ数
- 512ページ
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この作品のレビュー
平均 4.7 (7件のレビュー)
-
日本の出生前診断の70年代からの流れを追い、現状までを見渡す1冊。デリケートな問題を扱いながら、丁寧で冷静であり、著者の「良心」を感じさせる良書である。
出生前診断とは、胎児の段階で、医学的な問題が…あるかどうか検査することを指す。
本来は、できるだけ早い段階で疾患を発見し、出産後速やかに治療に移れるようにし、可能な場合は胎児治療を行うことを目的としてなされる検査である。
だが、重篤な疾患が見つかった場合、妊娠の中断、すなわち中絶につながるケースは多い。
検査そのものが抱える問題点としては、羊水検査の場合であれば、頻度は低くても流産などの合併症の危険性を伴うことが挙げられる。また、どのような検査でも、陽性でないのに陽性と判断される偽陽性、陰性でないのに陰性と判断される偽陰性はつきものである。いくつかの検査を重ねれば偽陽性も偽陰性も低下させていくことは可能だが、0にすることは難しい。
不確定であっても陽性の検査結果を聞けば親は動揺する。ショックの中で、しかし、その検査が何を意味するのか、もしも診断を受けた疾患であったとしたら、その子を交えた生活はいったいどのようなものになるのか、情報が乏しい中で、あるいは自力で窓口を探し、あるいは途方に暮れることになりがちである。
近年、高齢出産が増えているが、高齢になれば染色体異常の率はまず間違いなく上がる。
不妊治療を受ける人も増える中、治療と出生前診断は背中合わせでもある。治療の成功率を上げようとすれば、胚の選別を行うことになるからだ。
こうした問題に、日本における「優生保護法」の歴史が影を落とし、また、医師の言うことを絶対視する「パターナリズム」の問題も絡んでくる。個々の判断を尊重するよりも、全体の足並みを揃えようとする社会の「空気」も無視できない。
医療の発展に伴い、選択肢が多様化していく中で、判断が困難なことは増えていく。現状では、実は、確率でしか語れないことは多いのだと思う。例えば癌のマーカー値がある程度高かったとする。放射線療法を選ぶか、切除するか、放置するか、選べと言われる。統計的に集計して、数値がどの程度の人がどのような経過をたどったかを記載することはできても、今、現実にどの治療法が自分にとって有効か、将来的に自分が「幸せ」かはわからない。そこはおそらく、患者個人についてどうかということは、医師であっても確実なことは言えない。だから患者が選ぶしかない、ということになる。
一般的な医療における選択に加えて、さらに出生前診断の難しいところは、それが「自分」ではなく、まだ生まれぬ「胎児」対象である点だ。重篤な障害が見つかったとして、その命を選ぶのか、選ばないのか、「決めろ」、というのは非常に酷な選択である。産むと決めても産まないと決めても、いずれにしても親には大きな心の負担がかかる。さらに試験自体を受けるのか受けないのかということに関しても、「もし精度が高く、危険性も少ない検査があるのならば、受けない選択は正しい選択なのか」と批判する人が出てこないとも言えない。
かつては見えなかったもの。しかし見えるようになってしまったもの。それをどうするか、社会はまだ、十分な準備は出来ていないのではないか。
結果が出たら専門医のカウンセリングが受けられるようにし、同じ疾患の子を育てる親へのつながりを作る。費用の面でも、人材の面でも、ハードルは高いが、そうした努力を続けていかなければならないのだろう。
日本ダウン症協会会長のスタンスが印象的である。協会は出生前診断の技術そのものには反対しない。但し、マススクリーニングのような形で検査を強いたり、ダウン症を初めとする染色体疾患を持つ子が生まれることを「不幸」と位置づけたり、逆に検査自体を受けさせないことには反対の立場を取る。すなわち、個々の夫婦の判断を尊重するという立場だ。
初めに触れたように、出生前診断の究極の目的は「治療」であるという。バチカン教皇庁教理省の見解を著者は引く。
【出生前診断は道徳的に正しいことか】
もし出生前診断が胎芽と胎児の生命と完璧さを尊重したもので、ひとりの人として護り癒すことを目的としているのであれば、答えはイエスである
現状では理想論に近くても、ここに込められた「祈り」は大切なものであると思う。
医師に判断を任せるのではなく、もちろん診断試験を営利主義的に使用するのでなく、科学者のみに委ねるのでもなく、子の親に責任を押しつけすぎず、社会で共有すべき問題なのだと思う。
鋭利すぎるハサミを手にしてしまった我々は、それを上手く使いこなすのか、それともそれによって傷つけられてしまうのか。覚悟を持ってあたっていくべきなのだろう。
それにはまず、ハサミ自体の特性を社会全体が注視し、よくよく考えていくことが必要なのだと思う。続きを読む投稿日:2015.06.25
感情、コスト、倫理、複数の要素が複雑に絡み合っている難しい問題だと思います。
思い込みやネット上の不確かな情報に振り回されないためにも、妊娠を望んでいる方とそのパートナーは読んでおくべき本だと感じま…した。続きを読む投稿日:2019.01.26
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