メモリアル病院の5日間 生か死か―ハリケーンで破壊された病院に隠された真実
シェリ・フィンク(著), 高橋則明(訳), 匝瑳玲子(訳) / 角川マガジンズ
作品情報
2005年8月29日、ハリケーン・カトリーナがニューオーリンズの街を襲った。ニューオーリンズでは湖と水路の堤防が複数の個所で決壊。その結果、市内の約8割が水没し、その被害は甚大なものとなった。メモリアル病院も被災し、水道も断たれ、電源を喪失した中で、200人を超える患者、600人を超える病院スタッフ、避難してきた1000人を超える近隣住民とともに、5日間、救助を待ったのである。本書は、その5日間の様子と、そこで医師により行われた命の選別がもたらした事件を追った詳細な記録である。暑さと疲労と絶望の中、医師たちは救助する患者の優先順位をつけ始めるが、一部の医師たちによって重症患者と蘇生禁止患者の救助は後回しにするという判断がなされていく。そして、なかなか来ない救助を待つ間に、さらに一部の医師たちによって、延命拒否の患者たちは病院から救助しないと決定され、患者たちに致死量のモルヒネが注射されていったのである。その後、メモリアル病院で行われたこの行為について、司法の手が入ることになる。果たして、患者を楽にさせるためという理由から、医師たちの行為は許されるのか。安楽死か、殺人か。司法の判断は?この事件の報道で2010年ピューリッツァー賞を受賞した著者:シェリ・フィンクによる渾身のノンフィクション作品である。
もっとみる
商品情報
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- KADOKAWA
- 掲載誌・レーベル
- 角川マガジンズ
- 書籍発売日
- 2015.05.01
- Reader Store発売日
- 2015.05.11
- ファイルサイズ
- 2.4MB
以下の製品には非対応です
この作品のレビュー
平均 3.8 (4件のレビュー)
-
大洪水で孤立した病院で助かった命と、失われた命
ジャズ発祥の地として有名なニューオーリンズ市をカトリーナという超大型ハリケーンが襲ったのは、2005年の8月末のことだった。市の中心に位置するメモリアル病院は、周辺を洪水に囲まれ、交通は途絶し、電気を…失い、入院患者をケアすることが出来なくなっていく。その中で、患者をヘリやボートで被災地の外へ搬送しようとするが、様々な困難が立ちはだかる。洪水を想定した準備が全く不十分だったうえ、支援部隊との意思疎通も上手くいかず、医師や職員は先の見えない闘いで消耗していく。
著者は、後に裁判沙汰になる事件だけでなく、病院で起きた事実を総合的に再構成しようとしており、情報の収集には多大な苦労があったものと推察される。洪水に見舞われた病院で起きた事実を客観的な立場で読者に追体験させようとする労作。続きを読む投稿日:2015.08.30
-
極限状態に置かれた時、人間は命の選別をしてもいいだろうか。
助からないかもしれない命よりも、確実に助かる命を優先すべき
なのだろうか。
2005年8月29日、ハリケーン・カトリーナに襲われ、市…内の約8割が
水没したニューオリンズ。映像は今でも覚えている。そのなかには
本書が取り上げるメモリアル病院もあった。
病院スタッフ・患者・周辺から避難して来た住民のすべてが救助された
あとには、45体の遺体が残されていた。同じように被災した病院に比べ
遥かに多い死者数は不審を招いた。あの時、病院内では命の選別が
行われていたのではないか…と。
重症患者から移送する。被災した病院は当然そうするものだと思って
いた。確かにメモリアル病院でも当初は重症患者を優先して搬送する
努力がなされていた。
水道・電気が止まったなかで病院スタッフは患者を少しでもリラックス
させようと努力もしていた。しかし、時間の経過と共に考え方が切り
替わってしまう。
患者に施されたトリアージは救助する患者の優先順位に他ならな
かった。自力で歩ける患者、車いすに座っている患者を救助する。
その他は…。
「私たちはこれをしていいのか?」。安楽死の処置が始まった時に
ひとりの男性医師が看護師に問いかけた言葉だ。医療従事者で
あるのなら、命を救うことが使命ではないかと私も思う。
例えば心臓や肺が機能を停止したら蘇生処置を施さないで欲しいと
の意思表示をしている患者でも、死期を早めるような処置をしても
いいとは思わない。それは自然死ではないからだ。
亡くなった患者のなかには最後の救助が行われた日の朝まで、
死の兆候がなかった患者もいたのに、何故、彼ら・彼女jらは医師の
手で死を早められなくてはならなかったのか。
ハリケーン・カトリーナ襲来の際にはアメリカ政府・州政府・ニュー
オリンズ市のそれぞれの対応が非難された。避難命令の発令は
確かに遅かった。避難場所も避難方法も確立されていなかった。
だが、メモリアル病院は救えたはずの命をみすみす見捨てたのは
ないだろうか。その証拠に「スタッフが疲れているから」との理由で
夜間のヘリによる救助を断っている。
しかも電気が止まったとはいえ、敷地内の一部の施設では電気が
通じている場所もあった。そこへ患者を移動させることもせず、
貴重な酸素ボンベは病院スタッフが暑さをしのぐために使われた
りもしていた。
不必要な殺人だったのではないかと思う。しかし、第2級殺人で
逮捕された女性医師とふたりの看護師はのちに不起訴となって
いる。
医療を受ける側の人間として、納得がいかない。もし、今、巨大な
自然災害が起こったら私たちはやはり命を選別されるのだろうか。
そんなことを考えながら読んだ。続きを読む投稿日:2017.08.21
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・今なら優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。