しんがりの思想 反リーダーシップ論
鷲田清一(著)
/角川新書
作品情報
やかましいほどにリーダー論、リーダーシップ論がにぎやかである。いまの日本社会に閉塞感を感じている人はとくに、大きく社会を変えてくれるような強いリーダーを求めている。しかし、右肩下がりの縮小社会へと歩み出した日本で本当に必要とされているのは、登山でしんがりを務めるように後ろから皆を支えていける、または互いに助け合えるような、フォロアーシップ精神にあふれた人である。そしてもっとも大切なことは、いつでもリーダーの代わりが担えるように、誰もが準備を怠らないようにすることであると著者は説く。人口減少と高齢化社会という日本の課題に立ち向かうためには、市民としてどのような心もちであるべきかについて考察した一冊である。鷲田清一(わしだ・きよかず)1949年、京都生まれ。哲学者。京都市立芸術大学学長。大阪大学名誉教授。せんだいメディアテーク館長。専門は臨床哲学・倫理学。京都大学大学院文学研究科博士課程修了。関西大学文学部教授、大阪大学教授、同大学文学部長、総長、大谷大学教授をへて現職。著書に『分散する理性』『モードの迷宮』(以上2冊でサントリー学芸賞)、『「聴く」ことの力』(桑原武夫学芸賞)、『「ぐずぐず」の理由』(読売文学賞)、『「待つ」ということ』、『哲学の使い方』など多数。2004年、紫綬褒章受章。
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商品情報
- シリーズ
- しんがりの思想 反リーダーシップ論
- 著者
- 鷲田清一
- 出版社
- KADOKAWA
- 掲載誌・レーベル
- 角川新書
- 書籍発売日
- 2015.04.10
- Reader Store発売日
- 2015.04.10
- ファイルサイズ
- 0.5MB
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この作品のレビュー
平均 3.8 (18件のレビュー)
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たまたま「鹿の王」のあとに読みました
グローバリズムと膨張国家の狭間でコミュニティが縮んでいく勢いが収まらないなか、いかに生きやすくあれるかをめぐる様々な思考の現在地。現状を言い表す「押しつけとお任せの合わせ鏡」という言葉がじわじわくる。…期せずして上橋菜穂子著「鹿の王」とテーマが近く、そういう時代認識が生活感覚ともフィットしていて興味深かった。続きを読む
投稿日:2015.06.12
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社会は変わり人も変わり生き方も時代も変わった。かつて戦後復興から奇跡的に世界のトップにまで上り詰めた高度成長。何をするにも働き手が不足し「24時間働けますか?」の掛け声の元、土日返上寝るのも惜しんで人…は働き続けた。実際私の父も土曜日は当たり前の様に働き、日曜に仕事に行く事も何度もあった。今考えたら一体いつ休んでいたのだろう。家にはテレビ、冷蔵庫、エアコンは当たり前、何不自由なく生活できた上に、小学生の時には家も建て替えられ、自分の部屋を持って自分専用の本棚、一人で占有するベッド。何もかもがあった。パソコンだって今では考えられないハードディスク装置(今はFlash、SSDが当たり前だが)すら無い、ペラペラの5インチフロッピーディスクに全てが詰まっていた時代だ。家に50万円以上するパソコンで遊ぶ(勉強ではない)ために、学校から友達が集まってきた。
そんな時代は人口も増え経済は確実に拡大していた。だから今日より明日、明日より明後日と毎日便利に裕福になっていたようだ。
今はどうだろう。平成20年(2008年)からはいよいよ日本も人口減少時代に入った。人口が減るということは、当たり前だが、二人の親が二人以上の子供をもうけない社会だ。当たり前ではあるが、年月が過ぎれば人は確実に死に向かうから、現在の様な出生率1.2%程度では確実に減少に向かう。
かつての人口増加、経済拡大の時代は何をやっても明るい未来しか想像できなかったが、バブルが弾け、経済が急激に萎み、更には人口減少と続く社会に於いては、これ迄とは違った戦略とものの考え方が必要になる。
本書はそんな縮小傾向に向かう日本においてはどの様な考えで生きていく必要があるかを説いている。タイトルにある「しんがり」とは、軍隊で言えば撤退する際に、味方を逃し最後尾で戦う部隊だ。山登りの一番最後尾は最も山を知り尽くし、隊の誰かに大事があれば真っ先に手を差し伸べる役割を担っている(よって隊を先導する先頭には実力2番目の隊員が立つ)。今、人口減少、経済縮小に向かう日本を「撤退戦」と見たてて、そこに必要な人材に迫る。それはグイグイみんなを引っ張るリーダーシップではなく、後ろから支えるフォロワーシップになる。
本書は最初にそうしたリーダーシップ本が多いことに苦言を呈しているが、確かに会社にリーダーシップばかりの人材が溢れたら、それは単なる我の強い個人戦になりかねない。誰かが倒れても誰かが代わりになれるのは良いが、果たしてその様なチームに纏まりはあるだろうか。寧ろ静かに黙々と仕事をこなすメンバーがいてこそチームは成り立つ。全員が我よ我よと我を全面に押し出していたら纏まりはないだろう。メンバーの個を生かしチームとして後ろから支える様な力が必要だ。
またメンバーが自分くらい良いやと無責任になれば、物事は成し遂げられない。一人一人が自分の領域に責任感をもって熱心に取り組む必要がある。本書はそうした状態を、選挙で選ばれた政治家と民衆の関係に例える。選んだ方は、無責任に政治家に「押し付け」るし、選んだんだからやってくれと「おまかせ」してしまう。これはかつての日本が子供を地域で育てた時代とは明らかに違う。昭和の子供は近所中にお母さんがいた。どこに行っても可愛がられたし、その逆に怒られもした。社会全体が子供を育てることに対して責任を持っていた。
本書はこうした例を次々と挙げて、各自が責任を持つことの重要性と、縮小に向かう日本における戦い方を示す。
経済は中国語の「経世済民」からきた言葉だ。政治が世の人々を勝手に救い続ける時代では無い。そのうち医療や教育に携わる人間も減っていく。その一方で何もかも頼りきりの人間だけが増え続ければ何は破綻するのは目に見えている。私は自分を自分で責任もって生かしていけるだろうか。少なくとも、食べて暮らしていけるだけの元気な体と体力を責任もって維持していきたい。続きを読む投稿日:2023.07.04
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