2050年の世界 英『エコノミスト』誌は予測する
英『エコノミスト』編集部(著)
,船橋洋一(解説)
,東江一紀(訳)
,峯村利哉(訳)
/文春文庫
作品情報
シンクタンク機能を持った英『エコノミスト』誌が、2050年までの世界を20の分野で大胆に予測。「2050年の日本のGNPは韓国の半分になる」「2050年の日本の平均年齢は52.7歳。アメリカのそれは40歳」。人口動態、戦争の未来、次なる科学と技術、環境、生活などなど。あなたの未来も見えてきます。
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商品情報
- 著者
- 英『エコノミスト』編集部, 船橋洋一, 東江一紀, 峯村利哉
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 文藝春秋
- 掲載誌・レーベル
- 文春文庫
- 書籍発売日
- 2015.03.10
- Reader Store発売日
- 2015.03.17
- ファイルサイズ
- 7.2MB
- ページ数
- 496ページ
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この作品のレビュー
平均 4.0 (6件のレビュー)
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40年先を見据えるための最初のつかみどころを提供
英エコノミスト誌の選りすぐりの執筆陣が40年後の世界を幅広く分析する。
「40年前を振り返るのは、40階建ての建物の最上階から下を見るのと同じようなもので、めまいを起こしそうになる。非常に短い時間の中…に、非常に多くの物事が詰め込まれているように思えるからだ。40年先を見据える場合、また違う感覚のめまいを覚える。むしろ、はるか彼方の青空をじっと眺めるのに似ている。視界は開け、果てしなく広がる一方で、これといった目標物はない。つかみどころがないのだ」
その意味で最初に取り上げられる人口動態は、ある程度確実な指標の一つと言える。
・中国の人口は2025年に減少に転ずる。
・2050年までの人口増加分の半分はアフリカ人が占める。
・人口の増大は戦争に結びつくという仮説があるが、2050年にどれだけ人口が増加しようと、必ずしも暴力水準が上昇するとはかぎらない。
・出生率は世界的に低下している。
・出生率の変化が及ぼす世代間への影響には20年のタイムラグがある。すなわち、たとえ出生率が大幅かつ持続的に回復したとしても、高齢化のトレンドを逆転させるまでには、最低でも20年の時間が必要となる。
・出生率の低下は、ある世代のみが突出して多いという現象を生み出し、その世代が年齢層のどこにいるかで、その国の経済が変わってくる。この出っ張り世代が子供から労働年齢に達したとき、その国は急成長する。これを「人口の配当」という。さらにその世代がリタイヤし、被扶養世代になると、その配当は負に変わる。
・人口の配当が自動的に経済成長を創り出すわけではない。事の成否は、増大する労働力を国家が生産的に活用できるかどうかにかかっている。
・これから人口の配当を受ける地域は、インドとアフリカと中東である。しかし、若年層の膨らみは政治的な不安定要困ともなる。若い労働者の増加は、成長の向上につながる場合もあるが、彼らが仕事にあぶれれば、社会の不安定性が進むこととなる。
・ここから人口の負の配当を受けるのは、日本と欧州、そして中国である。ほかとは比較にならないほど人口動態の負の配当を受けるのは中国だ。安い労働力による世界の製造工場の役割を中国は終える。日本は世界史上未踏の高齢社会になる。
・グローバル化と技術進歩によって、"物理的な距離の死"は起こったが、"文化的な距離の死"は起こっていない。人々の嗜好には地域色がいつまでも残り続ける。
・無宗教者の出生率の低さとは対照的に、高い出生率による信者数の増加が、各宗派間のバランスを逆転させ、ひいては地域の宗教性を高めていくことになる。
・二酸化炭素を増やす石炭も、そのすべてが天然ガスと置き換わってしまった場合、それまで硫化物の冷却効果によって受けていた恩恵が失われ、ひょっとすると2050年における気温上昇を大きくするかもしれない。
・2050年までの間に最も大きな争いの種となるのは石油ではなく水であり、水不足と気候変動が、国際紛争や大規模な人口移動の引き金となるかもしれない。イエメンは、2015年までに水が枯渇する最初の国となる可能性があるとの指摘は、昨今の同国の状況を早くも予言しているようで興味深い。
・2050年までの間に、中国では一党独裁国家ならではの脆弱性に直面し、インドでは複数政党制ならではの欠点と挫折に苦しめられるだろう。
・防衛面では、中長期的に見ると、長距離以外の作戦行動の大部分は、さまざまな種類の無人機によって遂行される確率が高い。
「西側の政治制度は、内部でも二つの大きな危機に瀕している。パニックの危機と自己満足の危機だ。パニックは人々を臆病にさせる。彼らは強い指導者と手っ取り早い方法を望み、未来ではなく現在を懸念し、公益より私益を気にかける。パニックの原因として挙げられるのは、戦争や、テロや、あらゆる形の自然災害と経済危機。これらが発生したとき、政治制度は増強される代わりに、容赦なく弱点をさらけ出すこととなるだろう。
自己満足はもっと危険だ。自己満足が蔓延すれば、市民たちの積極行動主義は、自治体レベルでの雑事に呑み込まれていき、退屈な国政は優れた思索家たちを惹きつけられなくなる」続きを読む投稿日:2015.03.17
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このレビューはネタバレを含みます
2015年(底本2012年)刊。
レビューの続きを読む
約40年後、この世界はどうなっているか。
環境・外交・食糧・人口・軍事・情報通信・エネルギー他資源・科学技術などについて、多面的な角度から検討を加える。
未…来論といいつつも、さほど遠い未来ではないので、現代の問題点の網羅的把握にこそ適した書と言えそうだ。読み応えもある。
ただ、楽観的に叙述すると言いつつも、軍事・外交はさほど楽観的でない。一方で、環境・食料・エネルギーは楽観的。
というように、やはり方向性の偏頗さは感じざるを得ない。
元来、この種の書は、現状放置は危険性を孕むという警告の書であり、実際には正解せずとも構わないものである。現に本書の中でも、未来学は当たらないものと叙述されている。そういう意味で、多少厳し目に書いても過ぎたペシニズムとは思わないのに、と感じてしまう。
さて、具体的内容だが、①中国の台頭(ただし高齢化の急進展によって経済的には頭打ち)と、②米国の外交・軍事面での脆弱化(勿論、一強という事態は変わらないが、廻りにも攻め手があるし、米国も思い通りにできにくい。南北格差の解消)、あるいは③資源問題の肝は水という点は納得できるところだ。
また、21世紀は生物学の世紀である点も同様である。
逆に、国内・領域内の相対的不平等面での格差拡大には甘め。また、環境問題(温室効果ガス比率の拡大による地球環境の急変・激変。典型例が夏季北極海の全面的解氷)の甘い評価はどうにも座りが悪い。というより、叙述から何らかのミスリーディングを企図したのではと勘繰りそうだ。
他方、アフリカの帰趨と核拡散。重要なテーマだが、これは読めないなぁ。
しかも、国家財政危機が亢進し、各国とも財源確保が必要なため、全世界的において累進課税強化へ、予測する。しかしホントか?。
また、日本の衰退は既定路線。
人口減・高齢化、基礎科学への資金投入不足。応用科学は他国のキャッチアップに遭遇ゆえ。さもありなん。
さて、現在は、世界的に貫徹されているとは言えない「法の支配」。
これは正しい法律の存在とは違い、遵法の精神である。また、裁判官買収・判決の非遵守はしない信条。もっと言えば、平和的デモに権力側が銃口を向けない誠実さとこれへの信頼感。道徳的に、あるいは能力的に悪徳な政治家を選挙で落選させられる自浄作用等を含意する。
確かに、これは民主主義の十分条件ではないが、必要条件ではある。
そもそも、法の支配は予測可能性を高め、実は強者にも利益があるのだが、強者はそのことを自覚できないのが始末に負えない。続きを読む投稿日:2016.12.24
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