「私はうつ」と言いたがる人たち
香山リカ(著)
/PHP新書
作品情報
――ある日の診察室。「私うつ病みたいです。休職したいので、診断書ください!」。この思い込みにまわりは迷惑、ほんとうに苦しんでいる人が泣いている。仕事を休んでリハビリがてらに海外旅行や転職活動に励む「うつ病セレブ」、その穴埋めで必死に働きつづけて心の病になった「うつ病難民」。格差はうつ病にもおよんでいる。安易に診断書が出され、腫れ物に触るかのように右往左往する会社に、同僚たちはシラケぎみ。はたして本人にとっても、この風潮は望ましいことなのか? 新しいタイプのうつ病が広がるなか、ほんとうに苦しんでいる患者には理解や援助の手が行き渡らず、一方でうつ病と言えばなんでも許される社会。その不自然な構造と心理を読み解く。
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商品情報
- シリーズ
- 「私はうつ」と言いたがる人たち
- 著者
- 香山リカ
- 出版社
- PHP研究所
- 掲載誌・レーベル
- PHP新書
- 書籍発売日
- 2008.07.15
- Reader Store発売日
- 2015.03.13
- ファイルサイズ
- 4.2MB
- ページ数
- 200ページ
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この作品のレビュー
平均 3.2 (41件のレビュー)
-
本は、自分で自分のことを「うつ病」と言いたがる人たちの話から始まります。仕事に行くと落ち込んだりするんだけれど、ハワイに遊びに行くと元気いっぱいでストレスが発散できる。「私はうつなの」と言って同情を集…めたがったりする。「うつ病」であることを自分のアイデンティティにしたがる・・・・そういう感じの人たち。
本を読み進みながら、きっと「うつってそんなもんじゃない。ちゃんとした診断基準があり、それに合う人がうつ病であり、そういう人には薬を処方する。そうじゃない人は単なる甘え・・・」みたいなストーリー展開なのかな・・・と期待していたのですが、なんと、私の想像とはまったく異なり、うつ病の診断とは、次の症状のうち、5つ以上のものが2週間以上続いていれば「うつ病」である、といった、超シンプルなものでした。
1.ほぼ一日中の抑うつの気分
2.ほとんど一日中またはほとんど毎日の、すべての活動への興味、喜びの著しい減退
3.食事療法をしていないのに、著しい体重減少、または増加、または毎日の食欲の減退または増加
4.ほとんど毎日の不眠または過眠
5.ほとんど毎日の精神運動性の焦燥または制止
6.ほとんど毎日の易疲労性、または気力の減退
7.ほとんど毎日の無価値観または過剰であるか不適切な罪責感
8.思考力や集中力の減退、または決断困難がほぼ毎日認められる
9.死についての反復思考、特別な計画はないが反復的な自殺念慮、自殺企図または自殺するためのはっきりとした計画
昔は内因性、心因性、外因性などといって、その原因を探ってから診断していたものが、最近はこれで一律に診断しちゃうんだそうです。それゆえ、本当に重いうつ病で、1メートル先のものを取ることも大変なほど無気力になっている人であろうが、仕事をしている間は落ち込んでいるけれど、ハワイに行っている間は大丈夫だった・・というような人まで同じ病気に扱われちゃったりするから困るのよね・・・という議論が続いていました。
そして、最近、精神的な病気を理由に会社を休む人が増えているが、それは必ずしもストレスが昔より多くなっているからそういう人が増えているということではなく、本当に重い病気の人は昔と同じくらいしかいなくて、それ以上に単に今まで以上にそういう理由で休むことが簡単になっているから増えているんじゃないか・・・といったことが説明されていました。
それくらい、「診断書があれば休んでもいいって人事部が言ってましたから」といって診断書をせがみ、「うつ病」と言われたら喜ぶような人が増えている現状が臨床現場にあるということなんでしょう。
精神科医の中ではジョークとして「うつ病と診断されて喜ぶ人はうつ病ではなく、そう言われてショックを受ける人がうつ病である」といううつ病の診断基準がある・・・なんていう話も載っていました。
なるほど・・・
この本を読むまでに勝手に思っていた「うつ病」の定義と随分違いました。
本の感想はというと、確かに知らなかった情報を得ることは出来たので、目的は達成しましたが、中身は超書き下ろし的でした。こんなんで本にしちゃっていいんだ・・・と、中身の密度に関してはかなり疑問・・・。ま、読みやすかったので、1時間くらいで流し読みする分にはいいかも・・・です。続きを読む投稿日:2011.01.08
うつという概念が社会に広まり、うつそのものの幅も広くなった。うつにも色々ある。
筆者は、社会に広まったうつ病概念を、本当のうつ病と言われる「大うつ病」、躁うつ病の一種と言われる「双極性障害II型」、そ…して「うつ病になりたがる人たち」の3つに分けている。(ほか、パーソナリティ障害をうつと誤診するケースもある)。
その中でも「うつ病になりたがる人たち」は、うつという診断を欲し、診断書を水戸黄門の印籠のように使う。アイデンティティを求め、それを「うつで可哀想な自分」とすることで安心を得る「平凡恐怖」や、病気を申告することで心配されたり異動や休職の許可が容易に出る「疾病利得」などが挙げられており、読んでいて自分が関わってきた人にも、そのような人がいたなと思い出す。
近年では発達障害が似たような状況になっていないだろうか。もちろん、実際に苦しんでいる方がおり、治療が必要な場合も多いが、発達障害はスペクトラムであり、凸凹である。大なり小なり、全ての人に得て不得手がある。本来はそれを周囲に相談したり、理解を得ながら生活をするが、最近は安易に、伝家の宝刀のように「私は発達障害だからできない」となることが多いように感じる。
著者が指摘するように、これでは本当に治療が必要な患者が困る。悩みを悩みとして、ゆっくり時間をかけて消化したり、周りに相談ができる環境づくりが必要な気がしている。
続きを読む投稿日:2022.03.19
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