神様からひと言
荻原浩(著)
/光文社文庫
作品情報
大手広告代理店を辞め、「珠川(たまがわ)食品」に再就職した佐倉凉平(さくらりょうへい)。入社早々、販売会議でトラブルを起こし、リストラ要員収容所と恐れられる「お客様相談室」へ異動となった。クレーム処理に奔走する凉平。実は、プライベートでも半年前に女に逃げられていた。ハードな日々を生きる彼の奮闘を、神様は見てくれているやいなや・・・・・・。サラリーマンに元気をくれる傑作長編小説。
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商品情報
- シリーズ
- 神様からひと言
- 著者
- 荻原浩
- 出版社
- 光文社
- 掲載誌・レーベル
- 光文社文庫
- 書籍発売日
- 2005.03.20
- Reader Store発売日
- 2015.02.27
- ファイルサイズ
- 0.4MB
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この作品のレビュー
平均 3.8 (627件のレビュー)
-
1.著者;荻原氏は大学卒業後、広告代理店に勤務。その後、代理店を退職。コピーライターになり、39歳の時に小説を書き始めました。理由は、「広告の文章は所詮人のもの、誰にも邪魔されない文章を書きたくなった…」からとの事。初の長編小説「オロロ畑でつかまえて」で小説すばる新人賞、「明日の記憶」で山本周五郎賞、「海の見える理髪店」で直木賞・・を受賞。他にも多数執筆。
2.本書;企業の実態を描いたサラリーマン小説。主人公の佐倉は大手広告代理店をトラブルで退社。異業種の「珠川食品」に再就職。ここでも問題を起こし、リストラ要員の待機所“お客様相談室”に左遷。それにもめげず、同僚達とクレーム処置に奮闘し、人生を見直していく話。「珠川食品」は、製造管理・商品管理がいい加減な会社。誰も責任をとりたくないので、正当な苦情すら闇に葬ろうとする。そんな環境下での生き方(人生への気付きと再生)が、読者にユーモアと希望を与える。16章構成。
3.個別感想(心に残った記述を3点に絞り込み、感想と合わせて記述);
(1)『第1章』より、(佐倉)腹が立つのは、肩書だけで人を抑えつける奴だ。名刺一枚で他人を動かせると信じてる奴らだ。(同期の高野)「ぜぇぇったい出世しないな、お前。上にしがみついて、下を蹴落とす。それが出世ってもんだ。上司にペコペコ、スリスリ。部下にガミガミ、ネチネチ。他人に厳しく、自分に甘く。そういう人間が出世するのよ」
●感想⇒尊敬する上司に教えられました。「上司のタイプを『対上司or対部下×厳しいor優しい』で4区分してみなさい。良い上司は、上司にも部下にも厳しい人。悪い上司は、上司に優しく部下に厳しい人だ。部下を持ったら、良い上司を目指しなさい」と。振返ると、色んな上司に仕えました。彼のように、人生の道標を教えてくれたのは少数でした。ある上司は、部下にやたらに厳しく気分的・感情的に部下を叱る人でした。しかし、私事になると、勤務中にも拘らず、部下のいる執務室で、息子の世話の依頼を電話で知人に度々していました。秘書曰く、「人間性を疑います」と。“人のふり見て我が振り直せ”ですね。
(2)『第10章』より、(佐倉)「僕らが書いている報告書ってどこへ行ってるんです?」(同僚の篠崎)「製造統括本部のシュレッダーの中。・・持っていく先が製造統括じゃどうしようもない。あっちにしたら自分達のミスだもの。原因究明の為になんて言ってラインでも止めたり、出荷停止になったりしたら、それこそ大騒ぎだ。誰もそんな事しやしない。溝口専務に報告を上げようものなら、クビが飛びかねないし。犯人に証拠品を返してあげちゃってるようなもんだよ」
●感想⇒メーカーが重視しなければならないのは、安全は言わずもがな、次には品質保証です。欠陥商品は誰も買いません。劣悪な物を販売する会社はいずれは顧客に見放されるでしょう。自動車会社の例です。新製品生産の為に、組織横断的なチーム(開発×生産×・・)を編成して検討を重ねると聞きました。クレーム製品についても、関係部署が協力して対応するそうです。ユーザーに安心・安全な商品を提供するという使命から言えば、当然の取組みですね。“悪い情報を隠さず、事実の前には謙虚に襟を正す”という企業風土の構築が必要です。旗振りは経営者。他人事ではないと肝に銘じなければなりません。
(3)『第11章』より、(篠崎)目の前のおでん鍋を指して、「ほら、狭いとこでぐつぐつ煮詰まってさ、部長だ課長だ役員だなんて言ったって、所詮鍋の中の昆布とちくわが、どっちが偉いかなんて言い合っているようなもんだ」・・・「会社の序列なんて、たいした順番じゃないんだよ。一歩外にでたら、ころりと変っちまうかもしれない」
●感想⇒会社の序列は、“社内+関係先”では絶大と思います。そこに勘違いが起こるのです。役職者は決裁権と人事権を持つので、自分が人間としても偉いと勘違いするのです。大企業勤務の管理職や学校の役職者は地域社会での行事(地域清掃等)に消極的な人が多いと聞きます。個人的には、そういう人は少数と思いますが、思い上がりは良くないですね。本田宗一郎さんは、仕事に厳しく、人にやさしい人だと言われ、言行一致の人でした。本田さんが新入社員に贈った言葉です。「会社で長が付けば偉いという事はあり得ない。それは組織での名前であり人間としての偉さではない」と。至言ですね。
4.まとめ;副社長に対する佐倉の言葉、「会社はあんたの遊び場じゃない。社員はあんたのおもちゃじゃない。何の苦労もせずに手に入れた肩書で、人に偉そうにするな」等を読むと、溜飲が下がる人もいるでしょう。しかし、この会社は同族会社の特異性があるのかも知れません。会社は色んな人の集合体です。性・年齢・学歴・職位・・が違い、複雑です。中には常識が通用せず、“会社の中の偉さ”が外でも通用すると、勘違いする輩もいます。会社の将来を真剣に考えている人もいるはずです。本書は、フィクションと割切って読めば、痛快です。但し、世間はそんなに甘いものでは無いと心して読みたいものです。続きを読む投稿日:2022.05.22
このレビューはネタバレを含みます
仕事が嫌だと悩んでいるときに読みたい本。
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同じような仕事をしているけど、こんなにユーモラスに苦情解決できるだけの度胸が自分にあればなぁ…
最後は全部スッキリ後味のいい作品でした。投稿日:2024.03.15
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