日本人のしつけは衰退したか 「教育する家族」のゆくえ
広田照幸(著)
/講談社現代新書
作品情報
「パーフェクト・チャイルド」──しかしながら、大正・昭和の新中間層の教育関心を、単に童心主義・厳格主義・学歴主義の三者の相互の対立・矛盾という相でのみとらえるのは、まだ不十分である。第一に、多くの場合、彼らはそれら三者をすべて達成しようとしていた。子供たちを礼儀正しく道徳的にふるまう子供にしようとしながら、同時に、読書や遊びの領域で子供独自の世界を満喫させる。さらに、予習・復習にも注意を払って望ましい進学先に子供たちを送り込もうと努力する──。すなわち、童心主義・厳格主義・学歴主義の3つの目標をすべてわが子に実現しようとして、努力と注意を惜しまず払っていた。それは、「望ましい子供」像をあれもこれもとりこんだ、いわば「完璧な子供=パーフェクト・チャイルド」(perfect child)を作ろうとするものであった。──本書より (講談社現代新書)
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商品情報
- 著者
- 広田照幸
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- 講談社現代新書
- 書籍発売日
- 1999.04.20
- Reader Store発売日
- 2015.02.27
- ファイルサイズ
- 3.9MB
- ページ数
- 214ページ
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この作品のレビュー
平均 4.0 (25件のレビュー)
-
「新しい時代を拓く心を育てるために」(1998)という、有名な中教審答申がある。サカキバラ事件を発端とした、心の教育ブームの火付け役である。
この答申では、日本の現状は「家庭の教育力が低下してきている…」「父親の存在が家庭になくなってきている」「家庭のしつけが衰退している」状態であるという。
世論調査でも、こうした現状認識がされているようである。
少年事件が起きると、学者・文化人・コメンテータが常識のようにマスコミで語るイメージである。
しかし、こうしたイメージは正しいのだろうか。
本書は、これらの命題を問い直すことを目的としている。
「当然だ。常識だ」とされている前提を疑ってみる、という習慣をつけたいと思う。
どうして「青少年の凶悪犯罪の増加している」と思われているのか。
テレビがそう言うからでしょう。
テレビというメディアはいつも事実に基づいたのメッセージを発信しているわけではない。
本書のようなメディアを通して社会を見ることも必要なのではないだろうか。
本書が絶対に正しいとは思わない。
思い込みに負けずに、自分で考えることを学びたい。
1.家庭の教育力は低下しているか。
→歴史的考察から、「昔」より現在の方が家庭は教育力を持っている。
2.家庭の教育力低下が、青少年の凶悪犯罪の増加を生みだしている。
→青少年の凶悪犯罪は減少している。
3.家庭の教育力を高めることが、現在求められている方向である。
→現在は、子どもの教育への最終的責任を家族が一身に引き受けざるをえなくなっている。続きを読む投稿日:2010.08.30
しつけは家庭でするもの,という信念が私にはある。家庭でいわゆるしつけが行われるならば,家庭の実態が異なればしつけも異なることを資料に基づいて歴史的変遷として解説する。家庭に暇な大人がいて,対処する子供…の人数がすくなければ関与が多くなり,逆は関与が少ない放任型。孟母三遷の教えがあるが,孟母は直接関与したというよりも環境を選んだ(最後は裁断することで想いを伝えた)。子供は周囲から影響を受ける。家庭はもちろん社会(メディア),学校,友人,近所,等。全てをコントロールすることはできないし,子供時代できたとしてもそれを維持することはできない。子供に教育を受けさせる義務という憲法の呪縛が家庭に子供の行動の原因を帰属させるものかもしれない。「他者と自分の命や健康,財産を害さない,これを破るのは絶対に許さない」という釣りバカ浜ちゃんのしつけが最も穏健で妥当だと思う。続きを読む
投稿日:2023.05.14
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