ホームレス入門 上野の森の紳士録
風樹茂(著)
/角川文庫
作品情報
元ビジネスマン、出稼ぎ日系人、哲学者、アル中・・・・・・ホームレス達のサバイバルと、それを取り囲む役所、争議団、宗教団体、手配師達の実態。
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商品情報
- シリーズ
- ホームレス入門 上野の森の紳士録
- 著者
- 風樹茂
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- KADOKAWA
- 掲載誌・レーベル
- 角川文庫
- 書籍発売日
- 2005.01.01
- Reader Store発売日
- 2015.02.19
- ファイルサイズ
- 1MB
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この作品のレビュー
平均 3.0 (8件のレビュー)
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ホームレス「問題」の入門書
塚田努の書いた「だから山谷はやめられねえ」のホームレス版なのかなと思いましたが、ちょっと違いました。筆者は失業者と称しておりますが、もともと自由業のような人ですので、ホームレスになるかもとの不安を抱…きつつも、実際には最後までホームレスになってはいません。しかし、上野の森に通い詰め、そこに住まう人達とかなり親密になり、また、その関係から様々な公的機関に顔を出すことによって感じ取ったことがかなり詳細に述べられています。つまり、ホームレスになるための入門書ではなく、ホームレス問題を考えるための入門書といった感じでありました。
これが書かれたのが、2000年くらいですので、現在は少し状況が変わっているのかもしれません。でも、本質的には何も変わっていないのが実情でしょう。多額の援助を国際社会には行っているのに、国内はどーなんだ、というのはホームレス問題だけのことではないですね。これを筆者はこう表現してます。「外見が大事とばかりに破産した肉親には見向きもせずに、町内会には多額の寄付を行う。」なるほど、まさにそのとおりですね。
また、炊き出しなどを行っているのが、韓国のキリスト系の団体というのも初めて知りました。なぜ、仏教寺院は行わないの?の疑問には、僧侶だというホームレスがこう答えます。「日本の宗教は武道の宗教ですよ。むしろ自分個人の解脱のためだから、人を助けるという目的はないですよ。こっちが逆に托鉢するんだから、ぜんぜん逆。」これもまた、なるほどねぇ。でも、聖徳太子がつくったという施薬院のような施設も歴史上いくつかあったのだから、そうとばかりは言えないとは思いますけどね。また、日本の皇室とイギリス王室の対応の違いに憤っています。これも回りの人間が悪いんだろうね。それから、ちょっとビックリしたのが、ホームレスの人が不幸にもお亡くなりになった場合、身元がわからないという人はほとんどいないと言うことです。それはなぜか、そこの所はネタバレになりますので、この本を読んでみて下さい。これは結構、人間の核心を突いていることだと思います。
さて、著者の提唱する解決策は、なかなか面白いと思いますが、プロデューサーが問題だろうなぁ。兎にも角にも、まさか今時単なる怠け者がホームレスになると思い込んでいる人はいないと思いますけれど、この本はホームレス問題を通じて、現在社会を別の側面から考えてみるよいきっかけになると思います。続きを読む投稿日:2016.02.01
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今から数十年前。子供の頃、上野の地下道は薄暗くて少々怖い
場所だった。それなのに亡き祖母は上野に行くと必ず地下道を
ゆっくりと歩く。
そこには傷痍軍人がいた。本当にそうなのか、傷痍軍人を装っていた
…のかは分からぬ。だが、子供の私には彼らの姿がとても怖かった。
祖母は彼らの前に置かれた器に小銭を入れ、小さな声で「よくお帰りで」
で声をかけて歩いていた。
そんな思い出のある上野も、いつの間にか傷痍軍人は姿を消していた。
彼らと入れ替わるように路上で生活する人たちが目に付き始めたのは
いつ頃からだったろう。
路上や地下道だけではなく、広大な上野公園も彼らの生活の場だ。
失業を機に自分もいつホームレスになってもおかしくないと思った
著者が、上野公園のホームレスたちに親近感を持ち、その生活や
お役所との問題を追ったルポルタージュである。
ホームレスといっても彼ら・彼女らが路上や公園に行き着いた理由は
様々だ。本書に登場するホームレスはそれぞれに個性的。元教師
だったり、植林業者だったり、自営業者だったり。
彼らの生活やホームレスを取り巻く状況は興味深いが、著者の立場
がかなり微妙なのが気になる。
日本は海外へのODAで何兆円もの金をつぎ込んでいるのに、国内の
困窮者に対しては有効な対策を打ち出していないと批判するのだが、
著者本人も失業するまでは海外の支援コンサルタントをしているのだ
よな。
多分この人、自分が失業しなかったらホームレスたちに目を向けなかった
と思うのだけれど。なんだかすっきりしない読後感である。
本当にホームレスを体験しその経験を綴った松井計の『ホームレス作家』
の方が面白かったな。
ただ、ホームレスたちを取り巻く環境を知るには参考になる。続きを読む投稿日:2012.06.05
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