怪帝ナポレオン三世 第二帝政全史
鹿島茂(著)
/講談社学術文庫
作品情報
偉大な皇帝ナポレオンの凡庸な甥が、陰謀とクー・デタで権力を握った、間抜けな皇帝=ナポレオン三世。しかしこの紋切り型では、この摩訶不思議な人物の全貌は掴みきれない。近現代史の分水嶺は、ナポレオン三世と第二帝政にある。「博覧会的」なるものが、産業資本主義へと発展し、パリ改造が美しき都を生み出したのだ。謎多き皇帝の圧巻の大評伝!(講談社学術文庫)
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商品情報
- シリーズ
- 怪帝ナポレオン三世 第二帝政全史
- 著者
- 鹿島茂
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- 講談社学術文庫
- 書籍発売日
- 2010.10.12
- Reader Store発売日
- 2014.12.05
- ファイルサイズ
- 16MB
- ページ数
- 608ページ
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この作品のレビュー
平均 4.1 (11件のレビュー)
-
▼今年の読書の大テーマである、「フランス/パリを軸にして、ルイ14世から第2次大戦までを読んでいく」の一環です。ちなみに発端はロバート・キャパの評伝「キャパ」(ウィーラン作)があまりにオモシロかったか…らなのと、「第一次世界大戦っていうのが、どうもまだ皮膚感覚でよくわからん」なんですが。
ここまで「キャパ評伝三部作」を除けば以下の道のり。
■集英社「まんが世界の歴史13・第一次世界大戦とロシア革命」
■「太陽王ルイ14世」鹿島茂
■「賭博者」ドストエフスキー ※これも20世紀初頭のフランスの感じってにじむなあ
■「異邦人」カミュ ※アルジェリアが仏植民地であるということが20世紀前半のフランス感だなー、と。
■「ナポレオン、フーシェ、タレーラン」鹿島茂
■「イギリスの歴史が2時間でわかる本」 ※比較してこの時期のイギリスっていうのがもやもやして気になってしまったので。
■「二都物語」ディケンズ ※このテーマを持っている今こそ読むべきだな、と。二都ってパリとロンドンですから。
■「贖罪」マキューアン ※第2次大戦前後。イギリス人兵隊がフランスの戦場で、もだえ苦しむ。
■「怪帝 ナポレオン三世」鹿島茂
という歩み。
今後も、(まあちょっとどこかで挫折するかもですが)
■「感情教育」※再読だが ■「葬送」平野啓一郎 ■第一次世界大戦の本2冊くらい? ■「西部戦線異状なし」 ■「第三帝国の興亡」 ■ルパンシリーズの未読のものを2~3冊 ■バルザックの未読のものをひとつくらい ■「移動祝祭日」 ■「武器よさらば」 ■「フランス組曲」
などを(できれば)読み進めて、「パリは燃えているか?」で閉幕したいと思っています。2024年いっぱいくらいは楽しめるかな、と。
▼閑話休題それはさておき。この本ですが、文庫本608ページという読み応え、各種脱線ありまくりの「ナポレオン三世とその時代」です。同じ鹿島さんの「ナポレオン、フーシェ、タレーラン」から続いて読むというのは正しかった気がします。
▼つまりは、「ナポレオン三世であるという妄執はあるんだけど、理想としては共和制と民主主義とナポレオン帝国の融合であったという不思議な人物」なんですね。そして、「今日のパリ、パリらしさ、みたいなものはナポレオン三世が作った」という事実。
▼それらが興味深いのは、結局、19世紀(日本で言えばまさに幕末前夜~明治維新なんですが)のこの時代に、ナポレオン三世は簡単に言っちゃえばロンドン育ちなんですね。で、ロンドンは当時の産業力学としては先端だった。しかもイングランドは以前から上手いこと、王政→ブルジョワジーによる民主的な政治 にソフトランディングできている。で結局、ナポレオン、といういかにもフランス革命そのものを代表する精神の塊のような固有名詞を持った「三世」は、ロンドンから吸収した美学をパリにぶち込んだんですよね。それでいて「ナポレオン」そのものは現代的に言うと「イタリア人」だったりするから、ヨーロッパって面白いなあ…。続きを読む投稿日:2023.11.03
三世というと、ルパン三世を思い出す。
しかし、同じフランスが生んだこちらの三世は、とらえどころがない。
学校の世界史を普通にさらっただけの知識では、叔父のナポレオンの威光で皇帝となり、普仏戦争で捕虜…となった残念な皇帝、というイメージくらいか。
もう少し詳しいと、今のパリの街並みを整備した人、という程度。
当時、ヨーロッパ各国にいた”皇帝”像をもって捉えようとすると理解に苦しむ。
かといって共和制寄りかというと、そうでもない。
彼の時代を第二帝政と呼ぶが、”第二”と言っても実質ナポレオン三世の時代。
彼だからこそあのような時代になったのだろう。
帝政ではないが、その後のファシズムもシステム上はさほど差異はない。そのような意味で極めて幸運な時代、ベルエポックだったのかもしれない。続きを読む投稿日:2020.04.19
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