石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか? エネルギー情報学入門
岩瀬昇(著)
/文春新書
作品情報
HONZ代表・成毛眞氏から「エネルギー界の池上彰さん誕生!」と太鼓判を押された著者は、商社マンとしてエネルギー関連事業に40年以上携わり、訪れた国は60カ国を超えるという経歴の持ち主です。これまで誰も言わなかった石油埋蔵量のカラクリ、中国の資源戦略、日本のLNG価格が高い理由など、日々のニュースをより深く理解するための基礎知識が身につきます。駐在国でのエピソードも読みどころ。エネルギーがわかれば世界が見える。安全保障、世界経済、ナショナリズム、環境、新技術――この世のあらゆる問題に絡むエネルギーの基礎知識をこの一冊で!
もっとみる
商品情報
- 著者
- 岩瀬昇
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 文藝春秋
- 掲載誌・レーベル
- 文春新書
- 書籍発売日
- 2014.09.20
- Reader Store発売日
- 2014.10.31
- ファイルサイズ
- 4.6MB
- ページ数
- 256ページ
以下の製品には非対応です
この作品のレビュー
平均 4.0 (39件のレビュー)
-
化石燃料に関してこれ一冊でおおよそのイメージがつかめ、あまり難しいことは書いていないお勧めの入門書
OPECは2015年の原油見通しを日量2892万バレルと従来予想から28万バレル引き下げた。サウジアラビアは11月に8万バレル減らし、リビアの政情不安などを背景に10月から39万バレル減少したというが…それでも、3005万バレルあり来年見通しは更に100万バレルの原産になる。サウジアラビアのシェールつぶしという話もあるがそれ以上にロシアやベネズエラが苦しんでいる様だ。
2014年4月エネルギー庁が中心となり「エネルギー基本計画」を策定したが著者の岩瀬氏はその内容に違和感を覚えたという。「国の根幹に関わるエネルギー基本政策が、エネルギーミックスに関する比率目標を持たず、もっぱら電源エネルギーをどうするかを中心にきじゅつされているからだ。また、我が国における「緊急事態」「非常時」が「3.11」のように国内でしか発生しない前提で書かれているのも気になる。エネルギー基本政策とは、「根本的な脆弱制を抱えている」一次エネルギーをどうするか、から始まるのではなかろうか。地下資源に乏しい我が国が先ず考えるべきは、一次エネルギーをいかに確保するか、であろう」
日本の一次エネルギー比率は石油44.1、ガス22.2、石炭27.1、原子力0.7、水力3.9、再生エネルギー2.0となっている。原発が稼働していた2010と比べると石油+4、ガス+5、石炭+2.4、再生+1で原子力の減を補った。次に消費の面から見てみると投入が21.1百万テラJに対し最終消費が14.5百万、6.6百万がロスとして消えている。2次エネルギーでは発電で投入が9.2百万に対し発電ロスが5.4百万で自家消費と送電ロスを除くと電力として使用されるのが3.4百万このうち産業用、家庭が各百万、民生の業務用が1.2百万ほどだ。最終消費は民生家庭が2.1百万、民生業務が2.9百万、運輸旅客が2.1百万、運輸貨物が1.3百万そして産業用が6.2百万となっている。電気が足りる足りないと言ってるのは一次エネルギー投入からすると16%ほどのことなのだ。運輸と産業用はまず石油が一番で鉄鋼などは石炭が必要になる。石化製品も石炭や天然ガスから作られるC1ケミカルが増えて来ているとは言えまだまだこれから。
日本が高いLNGをスポットで買っているのもちゃんと理由がある。元々天然ガスは消費地が近くにないと輸送と貯蔵に問題がある。天然ガスのほとんどは生産地で消費されており、貿易量は生産量の30%さらにその70%がパイプラインで輸送されている。LNGは生産量のわずか10%しかなくそのうち37%が日本向けだ。日本では公害対策として発電用に使われた電力価格が原価積み上げ方式だったため天然ガスも熱量等価で原油リンクとしたわけだ。その後アメリカでは天然ガス先物市場が確立し現物決済をしなくていい先物市場ができたからこそ、スポット取引や買い手の決まっていない天然ガス開発プロジェクトも進められる様になった。天然ガス田の開発プロジェクトをするためにはどうやって需要地まで運ぶかもセットになり新たにパイプラインを作るにせよLNG基地とタンカーを作るにせよ1兆円規模のプロジェクトになる。売り手ー買い手と輸送方法がセットできないと銀行団のファイナンスが組成できない。これが長期契約の日本のLNGが高いといわれた原因となっている。
石炭はほとんど生産国内で消費され世界最大の産出国の中国も輸入している。輸出余力があるのはオーストラリア、インドネシア、ロシアと南アぐらいしかない。これにアメリカ、インドを加えると世界生産の9割ほどになる。一次エネルギー全体では上位13カ国で需要の7割を消費している。中国とアメリカの2国で4割、5位の日本が3.7%となっている。産油国のイランとサウジが11、12位でイギリスよりも多いのが興味深い。日本が誇れるのはエネルギー効率でGDP当たりのエネルギー消費を見るとドイツには少し負けるがイギリスやイタリアと並んで高い。一人2000キロカロリー程度を食事として消費している人類はそれ以外に22万8千キロカロリーを別の形で消費している。1900年代以降人口が爆発的に増え、寿命も延びたのは基本的にはこのエネルギー消費によって支えられている。気候変動の対策が必要とは言えそうそうエネルギー消費を減らすことは出来ないし、途上国の人口増と経済発展は更なるエネルギーを要求する。
エネルギーミックスを考える上ではダニエル・ヤーギンが「探求」の中で1章を割いた第5のエネルギー「省エネ」がおそらく日本の最大の2次エネルギーになる。札幌地下鉄の様に暖房オフにするというのも一つの考え方だが、輸出できるのは快適な省エネ技術だろう。ノーベル賞の天野教授は青色LEDのGaNの技術を次世代パワー半導体に生かそうと研究している。続きを読む投稿日:2014.12.11
-
実践的エネルギー論
元商社マンによるエネルギー論。なんといっても現代社会の基幹であるエネルギーについて手ごろな見取り図を与えてくれる。石油・ガスの話がおおむね中心。ブローカーの存在意義など「あれっ?」と思う記述があったり…、電力会社の原油生焚きのようなわたくしのごとき浅学にとっては説明不足だった箇所もあるがご愛嬌レベル。
ガス田/油田開発の経済、なぜ日本の買う天然ガスは高いのか、パイプライン大国アメリカの市場、原油先物取引市場の成立史など続きを読む投稿日:2016.10.09
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です
続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能です