- 最新巻
銃口 下
三浦綾子(著)
/角川文庫
作品情報
昭和16年、北森竜太は治安維持法違反の容疑で、7カ月間勾留される。釈放されたものの退職させられ、その上、軍隊に召集される。苛酷な軍隊生活で身も心も衰退した20年8月15日、満州から朝鮮への敗走中に、民兵に銃口を突きつけられた――。純粋な心根の青年教師が戦争に翻弄されていく悲劇。かつて北森家で命を助けられた朝鮮人労働者金俊明の運命。軍旗はためく昭和を背景に戦争と人間の姿を描いた感動の名作。
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商品情報
- シリーズ
- 「銃口」シリーズ
- 著者
- 三浦綾子
- 出版社
- KADOKAWA
- 掲載誌・レーベル
- 角川文庫
- 書籍発売日
- 2009.08.01
- Reader Store発売日
- 2014.09.22
- ファイルサイズ
- 1MB
- シリーズ情報
- 既刊2巻
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この作品のレビュー
平均 3.9 (10件のレビュー)
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時代に翻弄される主人公に、作者の怒りを見た気が
作者の怒りが透けて見える様でした。
教師を一生の仕事と志す主人公は、しかし戦時中の言論統制に巻き込まれて職を失い、失意の中で唯一の希望だった結婚もその直前に召集令状を受けたために叶わなくなります。
思…想教育と言論弾圧の愚かさ、一人の人間が国家に自由を奪われることの理不尽さに翻弄される主人公は、それでも人として誠実であることを貫き通そうとしますが、その姿勢こそが、どこか間違った世の中に対する精一杯の抗議と抵抗だったようにも。
非常に真に迫る物語でした。
作中「恩を返したと思うことが最大の忘恩だ」という言葉が印象的。続きを読む投稿日:2014.12.14
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本作に関しては、頁を繰り続ける都度、物語が進めば進む程に「如何いうように?」という興味が高まる感じだ。頁を繰り続ける程に「停められない」という度合いが高まる。そして夢中で読了に至ったのである。
本作は…少年時代に小学校の教員を志すようになり、その道へ進んだという北森竜太という青年が主人公だ。作中の殆どの部分がこの北森竜太の目線で綴られている。
上巻は北森竜太の少年時代、長じて教員となり、教員としての活動に励みながら、同じく教員となった子ども時代からの馴染である女性と幸せな家庭を築くことを夢見るようになって行くという展開である。昭和に元号が改まったような頃から、昭和17年頃迄の経過となる。
下巻はおかしな事件に巻き込まれた北森竜太の苦悩、それでも幸せな家庭を築こうとした想いが、戦争という時代の渦に砕かれる様、満州でのこと、そして終戦後の帰国に纏わること等ということになる。
実在の地名等も多い他方、一部に架空の地名等も交る。作品を鳥瞰すると、昭和の初めから終戦直後頃の時期の20年間程を描く大河小説という雰囲気だ。が、核心は上巻の最後の辺り、おかしな事件に巻き込まれて行く経過と苦悩なのであろう。
北森竜太は旭川の質店の息子である。両親、姉、弟という家族である。近所に同じ年の従兄弟の楠夫達も在って兄弟同然だ。竜太は小学校で出会った坂部に惹かれ「あの坂部先生のように」と教員を志し、中学から師範学校へ進み、教員として採用されるという経過である。
教員としての活動に関することだが、「あの時代の学校?」という様子が非常に詳しく描かれる。そして熱心に授業に取組む竜太達の様子も凄く引き込まれるモノが在る。
そして「綴り方」である。これは国語関係の課業の一つとされ、書き言葉を学ぶものなのだが、小説の描写等によれば「作文」ということになる。自由な主題で、または与えられた課題で児童が作文を綴り、教員が講評する、または教室で綴った児童が朗読し、教員や児童達が話し合うというような取組が為されている。
この「綴り方」であるが、言葉を読み、解釈し、考え、その考えたことや見聞を言葉で伝えて行くというようなことが、学習や暮らしの基礎として重要と見受けられることから、授業の充実や児童の関心を高めようと熱心に研究しようという教員達が在った。こういう人達が集まりを持って意見交換をしようというような活動をした。そこから波紋が拡がるのである。
戦争の時代に入って行く中で<治安維持法>やそれに伴う警察や軍の憲兵の活動が拡がる。北海道では「綴り方」の授業の研究をしようとしていた集まりに参加した教員達が密かに逮捕され、「赤化思想」等と決め付けられ、教員を依願退職することを無理強いされたという事件が実際に在ったのだという。私財を投げ打って弁護士費用を出した人物の支援と、熱心な弁護士の活動で、逮捕された関係者の中で起訴された人達は「有罪ながら執行猶予」と、受刑することは辛うじて免れたそうだ。
本作の核心は、北森竜太がこの「綴り方」の教育を研究しようという集まりにほんの少しだけ関ったということで、逮捕されて退職を強要され、戦争の渦中にも身を投じるようなことになるという様子である。
それにしても<治安維持法>やそれに伴う警察や軍の憲兵の活動というようなモノは禍々しいものだ。念願し、熱心に勤めていた教員の仕事を奪われた竜太は、父親の伝手等で勤めるようになった新しい職場にも監視が入って孤立させられて1ヶ月も居られないようにされ、酷く孤立させられてしまう。
題名の『銃口』は、恐らく「何時でも、何処でも、銃口か何かを突き付けられているかのような気分を強いられる羽目」という竜太の様子を暗示するものなのだと思う。
言葉を読み、解釈し、考え、その考えたことや見聞を言葉で伝えて行くというようなことが、学習や暮らしの基礎として重要と見受けられるとして、本作の竜太や教員達が研究しようとするのだが、これは「時代を問わずに大切なこと」のように思う。
他方に「集まれば危険」と、密かに関係したと見受けられる人達を逮捕して、そういうことを全く公にせず、個人の仕事や尊厳を踏み躙ってしまうような振舞いに及ぶという、怖ろしい状態が嘗ては在った。こういうのは「時代を問わずに忌避するべきこと」のように思う。
読後の余韻に浸りながら思った。「学習や暮らしの基礎」となるような、言葉を読み、解釈し、考え、その考えたことや見聞を言葉で伝えて行くというようなことが大切にされているであろうか?考えたことや見聞を言葉で伝えるという程度のことを、蔑む、危険視するというような、妙なことが行われてはいないであろうか?そういう余韻が在って、本作に関して「変な旧さは微塵も無い」という程度に思った。少し言い換えれば、本作で問われているようなことを、現在でも少しは考えなければならないのではないかということだ。
作中の竜太だが、色々な叙述から推定して1918(大正7)年頃に産まれている。本作の制作に着手されているのは1989(平成元)年、1990(平成2)年だ。作中の竜太と同年代の人達は70歳代の初めというような感じになっている頃である。本作で参考にされた様々な証言のようなモノに関して、70歳代位であれば「来し方を語る」というように直接に詳しく話して頂くということが叶う可能性も高いと見受けられる。そういう意味で、「この機を逃せない!」というタイミングで得た情報を反映させることが叶った本作かもしれない。
本作を綴った三浦綾子は1922年生まれである。作中の竜太達より少しだけ若いが、殆ど同じ時代を潜って、昭和の最後を迎えていた。そういう中での「想い」が強く、色濃く反映された力作がこの『銃口』であるとも思う。
余韻も深い本作を広く御薦めしたい。続きを読む投稿日:2023.11.11
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