実録・外道の条件
町田康(著)
/角川文庫
作品情報
なにゆえかくも話が通じないのであろうか。丁重な文面であるのにもかかわらず、その文面のなかにときおり顔をのぞかせる強い調子、攻撃的な排他性のごときを改めて強く感じ、その根拠として彼らが標榜しているボランティアという概念について、普段そんなことについてまるで考えたことのなかった私が、この困惑を契機に深く考えるようになってしまったというのは、いったいいかなる因果・因縁であろうか。(「地獄のボランティア」より)芥川賞受賞第1作となった傑作小説集。
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商品情報
- シリーズ
- 実録・外道の条件
- 著者
- 町田康
- 出版社
- KADOKAWA
- 掲載誌・レーベル
- 角川文庫
- 書籍発売日
- 2004.12.01
- Reader Store発売日
- 2014.09.10
- ファイルサイズ
- 0.7MB
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この作品のレビュー
平均 4.0 (32件のレビュー)
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『しかしながらみんながみんなエンターテイナーになってしまっては国が立ちゆかないので、子供には家庭で学校で、アリとキリギリスの話をするなどして、ともすればエンターテイナーを目指そうとする子供に、そういう…面白おかしい生活は人間としてはおろか、昆虫としても間違っているのだ、という教育を施し、一丸となって、子供のエンターテイナー化を防止してきたのだけれども、それがこのところおかしくなってきた。』
『確かに木原の話は魅力的である。がんがん宣伝をやってがんがんCDが売れれば、収入もがんがん、みんながんがん、わたしもがんがん、人生が明るく豊かになるに違いないのだけれども、ひとつ問題があるとすれば、木原の話にはなんの裏付けもない、ということである。』
『わたしは、出演料、印税、原稿料などによって生計を立てている。そしてそれらはときに、健康で文化的な最低限の生活を営むために必要な額を下回っていた。』
『現場に通ったわたしは、どういうわけか顔面を真っ黒に塗られ、結局のところヒーローが救助に現れたため未遂に終わるのであるが、ヒロインをマンションの一室に連れ込んでレイプに及んだ挙げ句、その一部始終をビデオに撮影してこれを売り捌かんとする悪漢の役を誠実かつ真摯に演じたのである。』
『すなわち、人間、土下座さえしていればおのずと道は開ける、という様田の乞食哲学は完全に破綻、蹉跌を来したわけである。』
『僕はそういう立場にない、と説明したが、しかし、土下座が生き甲斐の様田は聞く耳を持たない。彼女はこの世に土下座が嫌いな人が居るということに思い至らぬのである。』
『それからまた一週間。月曜日はししゃも食って火曜日は眼鏡を失くして水曜日はたにし採って木曜日は根津権現にお参りをして金曜日は靴下の片方がねぇじゃねぇか、と言って大暴れ、自暴自棄になって外出を取りやめ、大酒を飲んで、土曜日は二日酔。』
『なんだか荒涼として貧寒として、木やなんかも赤茶けてたり、白っぽかったりして元気なく、その配置もまた、戦場に拵えた公園のように味気がなく、風情がなく、ものの五分もいたら気持ちがささくれ立って自殺したくなりそうな公園なのである。』
『おおっ、とどよめきのような感嘆の声をあげ、そうなんですか。ちっとも知りませんでした。蒙を啓かれた思いです。積年の疑問が氷解しました。目から鱗が落ちました。ぼーん。と、これは鱗が落ちた音です、といった反応を期待していたのだろうか』
『この茶淹れ機たるや、スイッチを入れた途端、がしゅっ、がるるるるるるる、がじゅがゅがしゅ、ぎゃああああああ、という野獣の咆哮のごとき大音響を発し、初めてスイッチを入れたとき私は、てっきり機械が故障したものだと思いこみ、終始狼狽のあまり、軽く踊ったくらいである。』
『死のうと思った。こんなところでこんなつまらない品書きを眺めしゅず子ずれと食事をしているような腐った人生を生きるなら死んだ方がましだ。俺はムール貝を注文した。ムール貝などといって気取っているが、この店のこと、必ずやいい加減な、おそらく目と鼻の先の川でガタロが鉄屑と一緒にさらえてきた、訳の分からぬ毒に汚染された、それも一ヶ月くらい前の貝に違いないと確信、その貝の毒にあたって死んでやろうと決意したからである。』
『僕の死骸はごみ焼却場で紙屑と一緒に焼いて遺灰をリスの躰に塗りつけて下さい。』続きを読む投稿日:2012.02.16
題名に「実録」とあって、更にあとがきでもデフォルメされ、また解説の松尾スズキも「これはほとんど実話をアレンジしたものであろうと推測される。」と指摘している通り、作者≒主人公が出くわしたエンタメ業界に巣…くい善人に群がる外道たちの記録ともとれる傑作短編小説集。表面上は穏やかだが心の内では怨讐を露わに呪詛をパンキッシュに叫び続けるようなその独特且つ滑らかな文体にひたすら読み進むことができ、爆笑。このシニカルなユーモアのセンスがたまらないし、とにかく正しく弱き善人である主人公≒作者はそのエネルギッシュさを失うことなくこれからも戦ってほしい。続きを読む
投稿日:2024.02.03
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