「アラブの春」の正体 欧米とメディアに踊らされた民主化革命
重信メイ(著)
/角川oneテーマ21
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中東に訪れた「民主化」の波。独裁政権崩壊という同じような状況に見えて、その内実は大きく異なる。なぜNATO軍はリビアにのみ軍事介入したのか?天然資源取引における基軸通貨戦争とは。欧米の、資本の原理が潜む。
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この作品のレビュー
平均 4.1 (31件のレビュー)
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特殊な経歴を持つ著者の、普遍的な話
人の著書を評価するにあたり、その親のことをあれこれと言うのはアンフェアかもしれない。
だがやはり私は著者の母に興味があり、本書を手に取った。
重信房子。日本赤軍の幹部で、レバノンやシリア、パレスチナ…で活動していた所謂「テロリスト」であった。
著者は重信房子とパレスチナ人男性との間に生まれ、父の暗殺、母の逮捕後、来日し日本国籍を取得、同志社大学で社会学を学び、中東問題を専門とするジャーナリストとして活動している。
軽薄かもしれないが、やはり、彼女の特殊すぎる経歴に興味を持ち、読んでみた。
他の中東本と違うなあ、と思ったのは「わたしたちのことをわかってほしい」という切実な思いを感じたこと。
日本人が書く多くの中東本は過剰なまでに「中立性」を意識している。センシティヴな問題だから。
それはわかるのだが、やはり、「当事者」の声を聞きたい、むしろ「偏った=生きた」話を聞いてみたいのだ。
その目線はなかった、その発想はなかった、というところが満載の本書。
例えばムスリム同胞団への批判として「イスラエルの主張を容認している」という指摘。
ビン・ラディンですらイスラエルときちんと戦っていない、と非難する。
結局、イスラム原理主義者もアメリカやイスラエルを敵に回し、国際社会で孤立するのが怖いのだ。
もっと積極的に戦えというのか?日本語で書かれた本としてこういう批判は普通出てこないのではないか。
(ちなみに彼女の両親はイスラエルと戦った、のだ)
しかし、テロリストの妄言かというと、そうでもない。
やはり、「生活感」があり、「皮膚感覚」があり、そこから生まれる「良識」があるのだ。
何故イスラエルが憎いのかというと、自分たちの命を脅かしているからに他ならない。
普通に生活したい、突き詰めればそこなのだと思う。
パレスチナで生まれ、アラブ諸国で育ったからこそ感じたもの。
この本のテーマは「民主化」に関するものだが、
民主主義は選挙制度があればそれで実現するというものではないはずです。
その国、その地域の文化に基づいてカスタムメイドで作っていかなければ
本当の民主主義にはなりません。
という。一般論として、誰もが納得することではないか。
しかし、「カスタムメイドの民主主義」は実現しなかった。
何故か。それは、本書を読んでほしい。
さいごにあとがきから一部抜粋。
私には、日本の社会では、アラブで起きていることは宗教的で民族的な問題だから、専門家にしかわからないと思い込んでいるように感じられました。
しかし、私に言わせれば、パレスチナ問題は宗教的でも民族的でもなく「人間的な問題」です。
人間として絶対に許してはいけないことがパレスチナで起こっていることをわかってほしいのです。
ぜひ、この声に耳を傾けてほしい。続きを読む投稿日:2014.10.04
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とくにチュニジアでは、高い教育を受けても、コネがなければ路上で野菜を売ることでしかお金を得る手だてがありません。しかも、そのささやかな仕事も国から取り上げられてしまう。その一方で、私腹をこや…している政治家や官僚、その家族がいるのです。 不満がたまっていたところに、爆発するきっかけがあって、大きな運動に盛り上がっていきまし続きを読む投稿日:2023.07.18
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