こなもん屋うま子
田中啓文(著)
/実業之日本社文庫
作品情報
その店は、大阪のどこかの町にある。仕事に、人生に、さまざまな悩みを抱える人びとが、いかにも「大阪のおばはん」の女店主・蘇我家馬子(そがのやうまこ)がつくる、たこ焼き、お好み焼き、うどん、ピザ、焼きそば、豚まんなど、絶品「こなもん」料理を口にした途端・・・・・・神出鬼没の店「馬子屋」を舞台に繰り広げられる、爆笑につぐ爆笑、そして感動と満腹(!?)のB級グルメミステリー! 日本コナモン協会会長・熊谷真菜氏も太鼓判! 読んだら必ず食べたくなります! ちなみに、「こなもん」とは・・・・・・小麦粉を使った料理の総称を指す大阪弁。
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商品情報
- シリーズ
- こなもん屋うま子
- 著者
- 田中啓文
- 出版社
- 実業之日本社
- 掲載誌・レーベル
- 実業之日本社文庫
- 書籍発売日
- 2013.08.01
- Reader Store発売日
- 2014.08.08
- ファイルサイズ
- 0.4MB
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この作品のレビュー
平均 3.8 (23件のレビュー)
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コテコテの関西が味わえます
こなもん屋「馬子屋」を舞台に様々な事件が起こる、連作短編ミステリ。
毎回ちがった語り手役(この正体がまた‥)が登場し、探偵役はおばちゃん店主蘇我屋馬子が務めるのだが、、、とにかく馬子のキャラが凄まじい…。一般的な大阪のおばちゃん4,5人をぎゅーっと凝縮して一人分にしたようなどろっどろのコッテコテの、えげつない位の浪速気質。だが、作るコナモンはもう絶品で、語り手は必ず常連と化し、馬子にあだ名で呼ばれる羽目になる。
そして、なんやかんやあって、最後はちょっとだけほろっとさせられるという、ミステリ2割、新喜劇8割の、気楽に楽しめる作品です。頭からっぽにしてアホになりたい時にどーぞ。続きを読む投稿日:2014.10.30
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迷える人を導く隠れ家
今日はどんな日ですか?
昨日までとあまり変わらず、いつも通りに暮らす日?
それはよかった、頑張ってください。
いや、何かまだ、足りないことがある?もう少しで「この先」へ行けそうなのに、大事なパー…ツが見つからない?それは危ない、気をつけて。なんとなく踏み入れた路地裏に、怪しいお店が現れても、安易に扉を開けてはいけませんよ…だってそのお店は!
てなわけで、謎の店主「蘇我家馬子」が、悩める来店者たちを導く、地獄にご馳走、ついでに罵倒、変なアダ名に思わず苦笑のシリーズです。
(1)馬子屋に行けるお客は限られる
好みというものは不思議なもので、本人にもうまく説明できない、激しいこだわりを生むことがあります。こだわりが強くなればなるほど、仲間や理解者は少なくなります。「何かを深く愛するとき、人は必ず異端となる」という指摘もあるほどです。
食についてもそれは同様。対象に抱く感情が強いほど、他人からは理解しがたい、独特のこだわりが発生します。
誰ともわかりあえない苦しみを抱えたひとは、大きな重い星がブラックホールに吸い込まれるように、馬子屋に引き付けられていくのです。
したがって、こだわりがほどけ、重い悩みを手離すことができた人は、もう馬子屋には行かれなくなります。
童話「はだかの王様」に出てくる「正直者にしか見えない服」のように、馬子屋は、悩める孤独な人にしか見つけられない店なのです(第二作「大阪グルメ総選挙」では、神出鬼没の馬子屋にたどり着く特殊能力をもった人物が登場しますが)。
この設定が素晴らしい。至福の時間に必ず終わりが来る点が、人生の転機と重ね合わされます。
(2)共感しないがゆえの信頼
下町のお好み焼き屋やたこ焼き屋を舞台に、悩みを抱えたお客が、美味しい食事で人生の悩みに活路を見出だす、とくると、「ああ人情ものね」と早合点する方もいるのでは。
しかし、本書はいわゆる下町人情ものとは違います。ポイントは、店主の馬子らが、他人の悩みに共感しないこと。
大関と相撲をとって負かすエピソードなどから、なんとなく推測がつきますが、馬子は、一種の神様のような存在です(詳しくは、同じ作者の「UMAハンター馬子」をお読みください)。愛情をもって人間(常連客たち)の面倒をみてくれますが、決して同格の存在ではありません。
安易に共感しない。寄り添わない。だからこそ、そのアドバイスは信頼がおけるのです。馬子は強い。苦境にある人を肯定するだけでなく、そこから脱出するエネルギーも与えます。優しく癒やされる人情ものとは違う、神の視点からの的確なアドバイスが、本書にパワーを与えています。
(3)蹴りたいダジャレにまたやられ
田中啓文作品には欠かせない、しょうもないダジャレも健在です。
散々盛り上げて、うっかり感動しかけたときに、ガクッと腰が砕けるようなくだらな~い一発を仕掛けてくる腕前は、もはや名人の域。
あーもーわかっていたのに!と拳を振り上げたくなりますが、これが田中啓文ですから、仕方ありません。
その他、本書には、当然ながら「大阪もの」としての側面もあります。
しかし残念ながら、串カツよりも天丼を愛する、根っから野暮な関東人の私には、この面での評価はできません。お好み焼きは「焼いてくれる店がいい」という記述に「大阪の人もそうなんだ」とほっとしたり、誰もが知ってるラジオの有名人とはあの人だな、とぼんやり思ったりする程度です。
大阪在住の方々。ぜひ本書をお読みになって、感想(レビュー)をお寄せください。上方落語を題材にした「笑酔亭梅寿謎解噺」シリーズもお勧めですよ。続きを読む投稿日:2017.09.19
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