鳩の栖
長野まゆみ(著)
/集英社文庫
作品情報
水琴窟という、庭先に水をまくと珠をころがすような安らかな音が鳴る仕掛け。操がそれを初めて知ったのは至剛の家の庭だった。孤独な転校生だった操を気遣ってくれた爽やかな少年至剛。しかし、快活そうに見えた彼には、避けがたい死が迫っていた。病床の至剛の求めるまま、操は庭の水琴窟を鳴らすのだが・・・・・・。少年たちの孤独と淡い愛情、儚い命の凛々しさを描く表題作など珠玉の短編五編。
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商品情報
- シリーズ
- 鳩の栖
- 著者
- 長野まゆみ
- 出版社
- 集英社
- 掲載誌・レーベル
- 集英社文庫
- 書籍発売日
- 2000.11.22
- Reader Store発売日
- 2014.08.01
- ファイルサイズ
- 1.7MB
- ページ数
- 200ページ
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この作品のレビュー
平均 4.1 (98件のレビュー)
-
初読みの作家さん。結論から言うとドンピシャにタイプの文章。シンプルで静かだけど、その中にも美しさが垣間見えるような言葉遣い。国語の教科書に載ってそうな、読解問題向けの短編集だけど普通に趣味で読む分にも…楽しいので、こういう物語に学生時代に出会えていたらよかったのになーという感じ。
本作は表題の「鳩の栖」以外にも中学生の男の子が主人公の短編が4作ある。作者のあとがきにも書いてあるように、この本は「騒がしい思いに駆られがちな年齢の彼らの、静かな部分を描いて」いる。大人に比べればまだ不自由な身で、どこか不器用さが残る少年たちの心の奥を描いた、四季折々の物語。友や家族との死別、複雑な家族構成など、様々な境遇の彼らが何を思い、どう進むのかを繊細に描いているのが好きだな…
中でもお気に入りは「鳩の栖」と「紺碧」。病で伏せている至剛のために水琴窟を鳴らす操の描写が愛おしい。「紺碧」では真木のキャラクター性が好きだった。おちゃらけていて自分の弱さを決して見せないけれど、友達の亨には真摯に接する姿がかっこいい。続きを読む投稿日:2020.01.18
このレビューはネタバレを含みます
2021/03/28 読了。
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感想は某所のブログで書いたものの再掲です!
・長野まゆみ著『鳩の栖』を昨日読み終わりました。電車乗るときにちまちま読み進めてたので、そこそこの時間をかけて…… 中学生…の少年が主人公の短編オムニバス。長野まゆみ…… 嫁を亡くした義兄と嫁の弟の関係が好きすぎるだろ。『レモンタルト』なんか一冊丸々そうだったし、『鳩の栖』では『紺碧』『紺一点(紺碧の続編)』に出てきた。
・長野まゆみ、作中で少年(青年)が同性の人物に心惹かれることが多いのだけど、その感情が恋であるかというのは明言されないことも多い。私はそういう感情の曖昧さも大変好みでして…… 『紺碧』『紺一点』で感情の明言がされていなかったんですが、主人公(浦里亨とおる)と仲の良い、楽天家で活発な真木くんの存在がかなり良い。
・亨くんは姉夫婦と同居していたのだが、姉が亡くなって以来義兄と二人暮らしをしている。姉を亡くしてから近くに住む叔父が自分を引き取ると言っているが、叔父の家には苦手な叔母と従兄弟がいるため、亨くんはまだ決めかねている様子。亨くんの義兄である来島さんは亨くんの学校で教師をしており、ちいさな田舎町で若くして配偶者を亡くした彼は再婚の手立てをいろいろな方からされるのだが、なんやかんや断り続けている。そんな来島さんに亨くんがほのかな好意を寄せていることに真木くんは気づいている。
・なんやかんやあり、来島さんは別の学校へ転任することになってしまう。新しい家は今の住居より狭く、亨くんはやむなく叔父の家に行くことにする様子。そんな事情を知った真木くんは、もう兄さんに迷惑はかけられないから、と煮え切らない亨くんに義兄についていくことをけしかける。
「浦里は、自分の気持ちをごまかすのかい、」
「おれは、浦里のことが好きだからわかるんだよ。来島と離れることなんて、できやしないのさ。それだけは、自分のことみたいに、はっきりわかるんだ。」
・ま、真木~~~~~!!!
・真木!おまえってやつは! おまえというやつは!
・真木~~~!!
・真木くんと亨くんは頭のいい男子校に一緒に進学するのだ。真木、おまえというやつは。
・しかも、真木くんは亨くんのごはんを食べながら「浦里、おまえ旦那をもらうなら無口な奴といっしょになっちゃ不可いけないぜ。すぐケンカになる。陽気で口上手の旦那にしろよ」とか言ってしまう。
・真木よ、どっちなんだい。おまえは亨くんとどうなりたい。おい。となり、長野まゆみに感謝をした。
・ハア……ハア…… 長野まゆみを読むと、文体のうつくしさ、物語のはかなさに反して感情がめちゃめちゃになってしまう。レモンタルト、読み直したいな。
・前述どおり、レモンタルトも義兄と弟の話なんだが、こちらは完全に恋の話になる。「もう、ずっと前から義兄あにのことが好きだった」という帯、作中にも出てくる一節なのだが、この文が出てくる瞬間が本当に良い。長野まゆみよ、ありがとう。
・長野まゆみの少年・青年愛が本当に好きなんだよな。私のオススメは青年愛では『レモンタルト』、少年同士のラブでは『ぼくはこうして大人になる』です。これらでneeの趣味がわかる。続きを読む投稿日:2022.06.19
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