文明崩壊 上巻
ジャレド ダイアモンド(著)
/草思社
作品情報
盛者必衰の理は歴史が多くの事例によって証明するところである。
だがなぜ隆盛を極めた社会が、そのまま存続できずに崩壊し滅亡していくのか?
北米のアナサジ、中米のマヤ、東ポリネシアのイースター島、ピトケアン島、
グリーンランドのノルウェー人入植地など、本書は多様な文明崩壊の実例を検証し、
そこに共通 するパターンを導き出していく。
前著『銃・病原菌・鉄』では、各大陸における文明発展を分析して環境的因子が多様性を生み出したことを導き出したが、
本書では文明繁栄による環境負荷が崩壊の契機を生み出すという問題をクローズアップしている。
ピュリッツァー賞受賞者による待望の書。
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商品情報
- シリーズ
- 文明崩壊
- 著者
- ジャレド ダイアモンド
- 出版社
- 草思社
- 書籍発売日
- 2012.12.01
- Reader Store発売日
- 2014.06.27
- ファイルサイズ
- 3.5MB
- シリーズ情報
- 既刊2巻
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この作品のレビュー
平均 4.1 (66件のレビュー)
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どうやれば社会の崩壊を防げるのか
文明崩壊と言う邦題はキャッチーで良いと思うがある社会あるいは共同体がどのように崩壊したか、あるいは生き延びていったかを比較している。上下1000ページ強となかなか文庫本とは言え重たい1冊。上巻はまず現…代アメリカでも最も自然が豊かなモンタナでさえ色々な問題があることを示している。それでもモンタナの社会が崩壊するとは思えないのだがそれをふまえつつイースター島を含むいくつかのポリネシアの島々、マヤと北アメリカの先住民社会、そしてグリーンランド入植者社会がどのように崩壊していったかを追いかけていく。そうするとモンタナにも共通点が見えて来てしまうという構図だ。
モンタナ州は西はグレイシャー国立公園からイエローストンにかけてのロッキー山脈、北はカナダに接し東半分はプレーリー地帯だ。映画「リバー・ランズ・スルー・イット」の舞台になったブラックフット川とクラークフォーク川の合流地点にミルタウンダムという小さなダムがある。このダムによる小さな問題はマスが海流で着なくなったことで大きな問題はクラークフォーク川上流のビュートの銅採掘所から重金属を含む沈殿物が流れ込みダムに滞留したことだ。1981年このダムから拡がる地下水に基準値の42倍のヒ素による汚染が見つかった。クラークフォーク川はアメリカ最大の浄化現場になっており83年に閉鎖したアナコンダ社の精錬所はアルコを経てBPに買われたがBPは資産と同時に川を浄化する責任を手に入れたことになる。東部のゾートマン=ランダスキー鉱山では金の採掘に堆積浸出という方法を取っている。わずか30グラムの金を取り出すのに50tの鉱石を必要とする低品位の鉱石を処理するのに開発された方法でシアン溶液(青酸カリと思ってもらえば良い)で金を溶かし集めて回収する方法で知らないとびっくりするかも知れないが標準的な方法だ。中国ではレアアースの採掘に露天掘りで酸を流し込み回収しているが似た様な発想だ。この鉱山では廃液の漏出や処理を誤っての青酸ガスの発生など考えられることが全て起こり廃棄された。
鉱山のために森林を伐採し製材所を作るためダムを造るとすべてつながってくるのだが、効率を上げるために選んだ皆伐式の伐採禁止を求める訴訟が持ち上がり製材所は停止に追い込まれている。禿げ山を見て止めたくなる気持ちはわかるのだが森林の適切な管理には金がかかりアメリカで2番目に広い私有林を持つプラム・クリーク社は林業ではなく土地を開発し美しい景色を売り物にする不動産業に鞍替えした。ビタールート・ヴァレーは州外の金持ちが別荘を造るなど人口が増えて来ている。過去に崩壊したいくつかの社会も原因の一つに森林の消失がある。孤立した小さな社会で森林がなくなると土壌が流出したり乾燥したりして作物の収量が落ちていく。ビタールート・ヴァレーの場合は過去の伐採によってそのまま残された間伐材がそのまま打ち捨てられ、乾燥した気候のために薪が置いてあるのと同じ状態になっている。自然の山林では雷による山火事が起こると耐火性のない若木や下草が燃えるが大木にはそれなりに耐火性があり結果として時々火事があることで大きな火事にならない様になっている。人為的に手を入れて間引きしているのが日本の里山と考えれば良いのだろう。また消防技術の改善で山火事を早く消し止められるようになったのも後に災いし、森林密度が高くなったため大規模火災のリスクを高めてしまった。
また農業や酪農も衰退して来ている。モンタナ州の平均収入は下から比べた方が早く大都市圏から遠いのもあり農産物が高く売れない。農業を続けるより不動産業者に売った方が儲かるのだ。一方で昔からの住民は新たな開発に反対し記憶にある景色を守りたがっているのだがそのために費用負担をできるわけではない。気候変動のためグレーシャーの氷河は後退し、降雨不足、灌漑による塩害などのマイナス要員が重なっていく。誰もがモンタナの自然を好みながらそれをどう利用するかとなるとまとまりがつかない。それでもモンタナはアメリカの他の地域よりもまだ持続可能性が高い土地でもあるのだが。
こう言った前提の元に読んでいく社会崩壊の歴史は今後それを繰り返さないとは言えないものになっている。イースター島は昔は森に覆われた島だったのが今では高い木が残っていない。モアイを建てるほどに統合された社会は人口増と食料不足から敵対し合いモアイは倒されていった。マヤのある中央アメリカは熱帯というイメージだが実際には乾期がありカルスト地層のため雨水が地上に残らない。人口増による森林の伐採や土壌の浸食を経て気候の変動が起こった際干ばつにより食料不足になり、また戦争続きでもあった様だ。
上巻の後半はグリーンランドのヴァイキングは姿を消したのに対して、なぜイヌイットが生き残ったか。続きを読む投稿日:2014.11.07
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社会が破滅的な決断を下すのは何故か?
『銃・病原菌・鉄』に続く、三部作の二作目。前作と共通する部分もなくはないですが、前作未読でも問題はないでしょう。個人的には三部作の中では一番好きです。メインテーマは「社会が破滅的な決断を下すのは何故か…?」。一部社会的な危機も扱っていますが、大部分が環境に起因する危機です。八割方は環境問題がテーマと言っても良いと思います。
この上巻では現代のモンタナを上下巻全体の導入として、それ以後は著者が「昨日までの世界」と呼ぶ過去の社会を扱います。古代マヤ、コロンブス以前のアメリカ、モアイ像のイースター島、中世のヴァイキングによるグリーンランド入植など。基本的には彼らの滅亡なり失敗なりを分析し、下巻の現代編へとつなげていきます。結論だけを追うのであれば、下巻から読んでもいいかもしれませんが、個々の分析にも興味深い所が多く、時間はかかっても上巻から順に読み進めていくことをお勧めします。
続きを読む投稿日:2015.03.18
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