「責任」はだれにあるのか
小浜逸郎(著)
/PHP新書
作品情報
最近わが国では、企業の社会的責任、政治家の責任、事故を起こした者の責任など、責任を追及する声がひときわ高まっている。だが、いったい「責任」という概念はいかなる根拠に基づいて建てられているのか。正しい責任のとり方とは。人は責任をどこまで負えるのか。JR脱線事故やイラク人質の「自己責任」論争、戦後世代の「戦争責任」など公共的な問題から、男女、親子における個別の責任問題までを人間論的に考察。被害者─加害者というこじれた感情をどう克服するか。さらに、哲学は責任をどう捉えていたのかについても論考する。丸山真男の「無責任体系」、ヤスパースの「罪」の概念、カントの『道徳形而上学原論』における定義、等々。著者は、法や倫理では割り切れない「責任」の不条理性を自覚しながら、共同社会が共有する「人倫感覚」がどのようなものかを推し量ることが大切であると説く。「求められる責任」と「感じる責任」を真摯に追及した書である。
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商品情報
- シリーズ
- 「責任」はだれにあるのか
- 著者
- 小浜逸郎
- 出版社
- PHP研究所
- 掲載誌・レーベル
- PHP新書
- 書籍発売日
- 2005.10.14
- Reader Store発売日
- 2014.04.04
- ファイルサイズ
- 2.7MB
- ページ数
- 240ページ
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この作品のレビュー
平均 3.5 (6件のレビュー)
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具体的な問題・事例に即して「責任」のありようを論じた第1部と、「責任」についての原理的な考察が展開されている第2部から成っています。
第2部の原理論では、「責任」が問題となるような状況が立ち現われて…くる理由が、うまく言い当てられているように感じました。著者は、カントの責任論が近代的人間像を前提にしていることを指摘し、そこでの「責任」が行為の前には理性的な意志が働いているはずだという虚構に基づいていると論じています。人間が自由な存在だと認めることは、この虚構を採用することにほかなりません。しかしこうした責任理解は、あることにかかわった人びとの事後の感情からはじめて責任概念が立ちあがるという現実的・具体的な状況を織り込んでいないと著者は批判します。
われわれの実存は、未来を見積もるという意識構造をもっていると著者は考えます。「責任」という概念が成り立つのは、われわれの実存にとって未来がこのように「見積もり」として手許につねにたぐり寄せられて「ある」ことに基づいています。未来に対する「見積もり」は、いまだ確定しておらず、偶然的な事態が生じる可能性を否定することはできません。不定の未来、あるいは可能性や蓋然性としてしかありえない未来を、過去の条件から推測しつつあたかも「かくある」はずであるかのようにたぐり寄せて生きているというわれわれの実存のあり方を考慮するならば、あらかじめ客観的・普遍的な形で責任の範囲を確定することはできないと著者は述べます。そしてこうした理解に基づいて、われわれはただ、事が起きればことばによってある範囲確定をしなければならないという不条理なものだということをよく肝に銘じて、それを開かれた、共同的な生へ、よりよい生へ向かおうとする相互の配慮によって支えていかなければならないという主張が展開されています。続きを読む投稿日:2017.10.03
結論的には、そんな凄いことは書いてないのだけど、なかなか突っ込みにくいところを、つついてくれる視点が素晴らしいですね。
投稿日:2012.02.25
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