「たられば」の日本戦争史 もし真珠湾攻撃がなかったら
黒野耐(著)
/講談社文庫
作品情報
歴史において「もし○○していたら」と論じるのは無意味・・・ではない! もし満州鉄道の日米共同経営を受け入れていたら、もし第一次大戦でヨーロッパに派兵していれば、もし真珠湾を攻撃していなかったら――その後の歴史は大きく変わっていたはずだ。そんな「幻の選択肢」を検証する、画期的な戦争史論。(講談社文庫)
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商品情報
- 著者
- 黒野耐
- ジャンル
- 教養 - 戦記(ノンフィクション)
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- 講談社文庫
- 書籍発売日
- 2011.07.15
- Reader Store発売日
- 2014.03.07
- ファイルサイズ
- 3.5MB
- ページ数
- 264ページ
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この作品のレビュー
平均 3.2 (5件のレビュー)
-
太平洋戦争へと向かうさまざまな段階で多くの選択肢が存在したにもかかわらず、そのほぼ全てにおいて最悪の選択を行ったことが、日米開戦に必然的に繋がっていったということがよく理解できた。
その原因のほとんど…の部分を戦前の教育システムの欠陥によって指導者を育成できなかったことにある、ということにも共感できた。
ただ、各要素にかかる分析が、浅い部分にとどまっているように感じた。もっと場面を絞って、多角的な分析をするべきだったのではないか。続きを読む投稿日:2011.10.11
「たられば」で歴史を論じても意味がないと考えるのはおかしなことだ。だって歴史から教訓を得るためには必要条件でしょ?
この本は、果たしてどのような選択をしていたら、日本はアメリカと開戦せずに済ん…だか、ということを研究している。どうやればアメリカに勝てたかということではなく、勝てないとわかっている戦争をどうすれば回避できたか、ということ。
表紙は変だけど、とても真面目な本だ。
日清戦争の時代から真珠湾攻撃まで、時系列に沿いながら、その時点での回避できた点を浮き彫りにしていく。
特に重要な転換点だったと思われるのは、第一次世界大戦で欧州が戦場になっているとき、イギリスなどから参戦の要請を受けていたのに、参戦(派兵)をしなかったこと。なおかつ大戦の混乱に乗じて、山東半島やドイツ領南洋諸島を占領してしまったこと。
これによって、日本人は欧米人に「窮地に陥っている我々を助けるどころか、混乱に乗じて領土を奪う卑怯者」とみられるようになってしまった。
その後のワシントン軍縮会議で日本が厳しい立場に追い込まれた原因はここにある。
あとは比較的よく知られていることだが、満州建国などあからさまになる日本の野心を警戒した欧米は結束して対日包囲網をつくりあげていく。
でも案外、満州だけにとどまっていたら国際社会に認めさせられるだけの可能性はあったようだ。
そもそも欧米が日本に対して怒るのは、日本ばかり中国大陸を食いやがって、という感情なのであって、中国人を守ろうとかそういう考えではない。パイの奪い合いに俺たちも参加させろ、ということだ。だから満州以外は、もう手を出しません、中国には戦争を仕掛けません、と言えば、アメリカとの関係改善の余地は多分にあった。国共合作も起こらなかっただろうし。
でも、いけいけどんどん、で戦争仕掛けまくっちゃうんだよね、現地の軍人たちは…
これを「プチ石原現象」と著者は呼ぶ。
これは政府の意向を無視し、統帥権を都合よく持ち出して、現場の判断で戦線を拡大していき、結果として成果を上げれば、政府の意向を無視したことが問われないばかりか、逆に政府が追認していく、という石原莞爾が得意とした戦術。
満州国を建国したあと、国力増強のため中国との戦争を避けることに動いた石原だが、関東軍には「プチ石原」軍人が多く誕生したため、歯止めをかけられなかった。
やっぱりここで止められなかったことが日米開戦を不可避にした一番大きな要因のように思う。
本書はまだ「真珠湾を攻撃しなかったら」ということも論じているが、これはいかに最小限の被害で講和まで持ち込めるかということを論じたことなので、面白い内容だけれど、回避という点からは外れるのでここで紹介するのはやめたい。
面白かったので、再読するかも。 続きを読む投稿日:2014.10.08
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