分子からみた生物進化 DNAが明かす生物の歴史
宮田隆(著)
/ブルーバックス
作品情報
オスが進化の先導者だった!? ネアンデルタール人と現代人はいつ分かれたのか? 生物最古の枝分かれはどうおきたのか? いまだ多くの謎につつまれている生物の進化。化石には残らない進化の情報が、突然変異としてDNAには刻まれている。DNAに秘められた生物の歴史を丹念にたどり、進化のしくみを解き明かす分子進化学。その基礎から最先端の成果までをわかりやすく紹介する。DNAが語る生物35億年の歴史。(ブルーバックス・2014年1月刊)
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商品情報
- 著者
- 宮田隆
- ジャンル
- サイエンス・テクノロジー - 生物・バイオテクノロジー
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- ブルーバックス
- 書籍発売日
- 2014.01.20
- Reader Store発売日
- 2014.02.28
- ファイルサイズ
- 22.9MB
- ページ数
- 416ページ
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この作品のレビュー
平均 3.5 (5件のレビュー)
-
さすがブルーバックス、入門書のちょうど少し上を行くレベルで、分子生物学に少し興味が出てきたな、という自分のような読者にとって少し知識のレベルアップを図るためにちょうどいい感じで引き上げてくれる。この本…で紹介された遺伝子重複や「遺伝子族」の概念などは、そういった知識引き上げアイテムのひとつと言える。1994年に出された『分子進化学への招待』をその後の同分野の発展に伴って二十年後の2015年に改版して出版したもので、最新の知見が反映されている。
分子生物学は、木村資生が分子進化の中立説を唱えてパラダイムシフトに値する大きな貢献をしたこともあって、日本でも盛んに研究されている分野であるので日本人の手になるものでも比較的その鮮度と正確さが保証されていて頼もしい。著者も日本の分子生物学の研究者だが、本書の中でも紹介されている「オス駆動進化説」を唱えて、一定の成果を挙げている。「オス駆動進化」というのは、遺伝子のエラーが細胞分裂の際に発生することから、その分裂機会が多い精子の方が卵子よりも遺伝子のエラーすなわち進化の元ネタを提供しやすいというものである。著者らは、常染色体と性染色体の変異率を調べることで、それが事実であることを証明している。
「オス駆動進化説」の他にも、カンブリア爆発が可能になったのは、単細胞時代にすでに作られていた遺伝子を再利用することで表現型の大進化が発生したというソフトモデル説や、ネアンデルタール人の遺伝子解析をも含む分子系統遺伝学、真核生物の誕生の起源、などが紹介されている。また、最近ではとみに話題になっているウィルスの進化、その進化がなぜかくも桁違いに速いのか、にも触れられている。生物進化の学問的探求において遺伝子の分子的解析が可能となったのは画期的なことである。最近読んだ『歌うカタツムリ』でもそのことを強く感じたが、それこそ生物進化のあらゆる領域でまだまだ隠された秘密があり、それが今まさにベールがはぎとられていく感じがあり、まさに興味をそそる分野である。
なかなか骨のある本で、改版されたことも含めてブルーバックスらしい一冊。
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『生物進化を考える』(木村資生)のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4004300193
『歌うカタツムリ ―― 進化とらせんの物語』(千葉聡)のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4000296620続きを読む投稿日:2020.05.06
精巧な機能の連携によって機能する、ダーウィンすら惑わせた眼の進化。
突然誕生したようにみえるキリンの首、鳥の羽。
現在も諸説あふれるカンブリア爆発の原因。
"進化"という学問が作られてから200年。人…類はようやく進化の謎に外見以外の要素を交えて語れるようになった。
本書は表題のとおり、進化にまつわる各諸説を分子の観点から語るものであり、
中心となるのは筆者も深く関係する分子の進化中立仮説について。
特に機能に直結する形態レベルの変異は、自然淘汰の影響をダイレクトに受けるが、分子レベルではそうではない。
淘汰に有利でもなく不利でもない、何にも影響しない中立な変異こそが主軸となり、
遺伝子は違ってもコードされるタンパク質は変わらない同義置換や、
重要な機能に直接関与するため変化し難い遺伝子を重複させることによって、
変化し続ける状態こそが正であるシステムを稼働させていた。
こうして見えない領域で蓄積された変異の一部分が、形態変化となって表出する。
というように論としては頷けるのだが、自説を支持するあまり、論理の飛躍と思われるような箇所も見受けられる。
本書のネタ本とも言える『分子進化の中立説』を「種の起源以来の本」と絶賛するのは大仰がすぎるし、
軟骨発育不全症だけをもってオスの遺伝子変異率が子供へ影響するオス駆動進化を説明するが、他の疾患に関してのデータはない。
もちろん素人がこれだけを持って真偽を判定できるものではないが、素直に受け入れるには気になる点が残る。
ダーウィンは現代よりも圧倒的に少ない情報量で新しい学問を創出した。
読書に限らず理解が及ばないときは、つい情報量の不足を理由にしてしまうが、
ときには手元にある情報のみから結論を導き出す訓練も必要だろう。
本書はその手助けになるかもしれない。続きを読む投稿日:2020.08.27
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