「兵士」になれなかった三島由紀夫
杉山隆男(著)
/小学館
作品情報
三島自決の真実に迫る兵士シリーズ最終巻。
1970年11月25日――自衛隊の本拠・市ヶ谷駐屯地で壮絶な最期を遂げるまで、作家・三島由紀夫は毎年のように自衛隊に体験入隊を繰り返していた。<これほどお互ひに敬意と揶揄を忘れぬ、思ひやりにみちた人間集団に、私はかつて属したことがない。>初めての体験入隊後、そう自衛隊を評した三島は、苛酷な訓練にも真摯に臨み、現場の「兵士」=自衛隊員たちとも濃密な交流を重ね、時に「クーデター」への思いも口にしていたという。
そして運命の日、三島は「自衛隊は永遠にアメリカの傭兵として終るだろう」と自衛隊、日本人に告げ、割腹自殺を遂げた。あれから40年――「日米の防衛協力は日米同盟という言葉にとって代わり、いつのまにか『世界の中の日米同盟』に際限なく拡大してしまっている」(本文より)。具現化する三島の“予言”。
三島にとって自衛隊とは何だったのか。そして、長年に渡って封印されてきた「三島自決」までの知られざる道程とは――。
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商品情報
- シリーズ
- 「兵士」になれなかった三島由紀夫
- 著者
- 杉山隆男
- ジャンル
- 教養 - 戦記(ノンフィクション)
- 出版社
- 小学館
- 書籍発売日
- 2010.04.01
- Reader Store発売日
- 2014.02.21
- ファイルサイズ
- 9.3MB
- ページ数
- 256ページ
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この作品のレビュー
平均 3.7 (5件のレビュー)
-
なんだかうまい言葉が出てこないのだけど、あたしが好きなのは、敬愛してやまないのは、三島由紀夫であって、平岡公威ではない、と、そうゆうすごく当たり前のことに気がついた。
けれども、自衛隊という組織に夢を…抱いて、失望のはて自害したのは確かに「憂国」を、「豊饒の海」を書いた三島であって、でも実際に自衛隊に体験入隊までしたのは平岡という男であって、っていう混乱。
人間の男だった。長距離走で苦痛に顔を歪める人間だった。でも、そうゆうのはぜんぶ、あたしの中では平岡という男の体験としてしかとらえられない。三島由紀夫という天才の為した事だとは、うまく信じられないのだ。
でも、「自分は弱い」なんて漏らす三島をひどく愛しく思ったり。人間、得手不得手があるんだから完璧を目指すことなんてないのに、って、ばかなひとだな、なんてあまりに人間くさい劣等感を擁護してあげたくなったり。なんだろこの母性本能的な感情は。
でもあまりにも衝撃的な死があってこその三島文学なのであり、あの死へ至る道のりへの関心は人並以上あるから、三島と平岡をうまく結び付けられなくても、この手のノンフィクションはこれからも読みたい、と思う。やっぱり、好きなひとのことは、知りたいのだ。続きを読む投稿日:2010.05.28
兵士に聞け シリーズ、で15年にわたり自衛隊を取材した杉山隆男による、三島由紀夫と自衛隊の物語。鍛え上げた上半身(腕力)を誇った三島だが、鍛えられていない下半身は脆弱なまま(脚力不足)で体験入隊時の持…久走では、常に劣後していた等の指摘が興味深い。劣後しながらも真剣に付いてゆこうという三島の鬼気迫る雰囲気が印象的だった、という当時の教官(隊員)たちの様々な三島の思い出が語られております。虚弱な体(小柄)だったが故に、太平洋戦争に行けず、兵士になることができなかった三島由紀夫が、敗戦後、作家になったころから体を鍛えはじめ(心を鍛えることも含め)それがどのように展開し、あの壮烈な最後を迎えたのかという内面の物語も少しうかがえる一冊であります。市ヶ谷台に乱入、割腹自殺をした1970年11月25日は、作者(杉山隆男)の18歳の誕生日(日比谷高校の3年生)、という繋がりも披露されております。★四つであります。続きを読む
投稿日:2023.02.02
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