イワン・イリイチの死/クロイツェル・ソナタ
トルストイ(著)
,望月哲男(訳)
/光文社古典新訳文庫
作品情報
19世紀ロシアの一裁判官が、「死」と向かい合う過程で味わう心理的葛藤を鋭く描いた「イワン・イリイチの死」。社会的地位のある地主貴族の主人公が、嫉妬がもとで妻を刺し殺す――作者の性と愛をめぐる長い葛藤が反映された「クロイツェル・ソナタ」。トルストイの文体が持っている「音とリズム」を日本語に移しかえ、近代小説への懐疑をくぐり抜けた後の新しい作風を端正な文体で再現したトルストイ後期中編2作。
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この作品のレビュー
平均 4.2 (40件のレビュー)
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昨年夏にみた映画「生きる」カズオ・イシグロ版がとても良くて気に入る→お正月にそのオリジナルである、黒澤明の「生きる」を見る。なんかすごい話だな、志村喬の目の演技すごいな…。これの元になった小説があるん…だ、しかもトルストイなのか→この本に辿り着く。
こんな流れで読み始めた。
トルストイは実ははじめて読んだ。
戦争と平和、アンナ・カレーニナ。
ドストエフスキーと並ぶ長大重厚露文作家である。
私は長大も重厚も得意ではなく、読めた露文は、ツルゲーネフ(でももう忘れた)、チェーホフ(同じく)、プーシキン(面白かった)くらい。
本書はトルストイの後期の中編が二本という構成。
◯イワン・イリイチの死
倒叙スタイル。ひどい葬式だなと思うも、イワンの人生パートに入ると面白くて目が離せなくなる。
結婚って、妻に子供が生まれることって、男にはこんなふうに見えるのか、さすがに今どきこんな考えの人はいないだろうけど身勝手150%でいろいろ不快。
でも、死というものを描くもろもろがとても手が込んでいて、面白かった。
死を前にした世界には、有無を言わせぬ迫力がある。
というか、映画と全然違うのね?!
公園もブランコも出てこないぞ。
◯クロイツェル・ソナタ
これも倒叙。列車という舞台装置が楽しい。
男女のもつれ、恋愛、結婚とは。謎のじいさんの告白。
みんなをドン引きさせたその発言の真意は。
というところから始まる、やはり現代とは倫理観の違いすぎる結婚すれからし物語。
幼稚で身勝手な男の論理にムカムカと腹が立つし、情けなくてなんだか泣けてくる。
でもやはり話はすごく上手い。こまかなボタンの掛け違い、ちょっとした関係改善と、またケンカ。
あー、あるある、と読者を納得させる力がある。
印象的だったのは、
p294
《妻ですか?そう、妻はいったい何者だったのでしょう?彼女は神秘です。昔も今もね。私には彼女が分かりません。私が知っているのは、動物としての彼女だけです。でも動物を押さえつけるなんてことはどうしたって不可能だし、またそれで当たり前なのですから。》
女をこんなに他者だと思ってるんだな。
その感覚が怖すぎる。
クロイツェル・ソナタはタイトルのとおり、音楽とその作用が物語のキイ。
いったいどんな曲だろうと思っていると、この本を読み終えた翌朝、ラジオ音楽の泉でベートーヴェンのクロイツェル・ソナタが掛かってびっくり。
こんな曲かあ、たしかに狂おしい。
続きを読む投稿日:2024.02.12
黒沢明監督の現代映画『生きる』がイシグロカズオ氏の脚本でリメイクされたと聞き、改めて生きるを視聴しよう!と思った矢先に出会った一冊です。
黒沢監督はこのトルストイの短編から着想を得て、死を間際にした…男が何を考えるか、説こうとしました。
本作品はその原型として読んでみたのですが、似た展開をしつつ、違うものです。
黒沢映画は、作中で主人公の死を突然挟むことで、観るものに驚きを与える効果を狙ったようにみえます。
前半だけ観ていたら『もしかしたら彼は助かるかもしれない』と思うこともできる。
対して、トルストイはそういった驚きよりも、不可避の死を冒頭数ページで描写します。
助かるかどうかという可能性はゼロにして、必然的に起きる死に対して、その過程が書かれます。
最期の数時間の描写は三度読みするほど迫真です。
この原作と『生きる』、そして2023年公開の『living』を一気見して、三者三様の死との向き合い方を比べてみようと思います。
続きを読む投稿日:2023.03.01
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