変身/掟の前で 他2編
カフカ(著)
,丘沢静也(訳)
/光文社古典新訳文庫
作品情報
ある朝、不安な夢から目を覚ますと、グレーゴル・ザムザは、自分がベッドのなかで馬鹿でかい虫に変わっているのに気がついた・・・・・・家族の物語を虫の視点で描いた「変身」。もっともカフカ的な「掟の前で」。カフカがひと晩で書きあげ、カフカがカフカになった「判決」。そしてサルが「アカデミーで報告する」。20世紀文学を代表する作家カフカの傑作4編を、もっとも新しい〈史的批判版〉にもとづいた翻訳で贈る。
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商品情報
- シリーズ
- 変身/掟の前で 他2編
- 出版社
- 光文社
- 掲載誌・レーベル
- 光文社古典新訳文庫
- 書籍発売日
- 2007.09.01
- Reader Store発売日
- 2013.12.20
- ファイルサイズ
- 1.3MB
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この作品のレビュー
平均 3.8 (101件のレビュー)
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『変身』は、けして不条理をテーマにした物語ではない。ツッコミ役のザムザが、ボケ倒されて右往左往するコメディであるのだ。
カフカの『変身』といえば夏休みの読書感想文の定番で、僕も中学生の頃に読んだ。なにせ短い。しかも毒虫に変身するというところがSFみたいだ。ところがいざページを繰ってみると、わけがわからない。だから結局「…毒虫に変身してしまったザムザはかわいそうだと思いました」という、ありきたりな感想を書くことになる。他に思い浮かぶこともないから、あとはあらすじを書くだけ。けれども短編小説だからそれも限界がある。なかなか原稿用紙が埋まらずに四苦八苦するから、どうにも読書とは面白くないなという「感想」を抱くことになる。やれやれ。
『変身』を読むのは、これまたおよそ30年ぶりとなる。再読して改めて気づいたことは、ふたつ。ひとつめは、ザムザが変身したのは「虫」としか書かれていないということ。なぜか僕は長い間、ザムザが変身したのは、巨大な芋虫だとばかり思っていた(なぜだろう?)。ところがカフカは、虫に関してあまり細かく描写していない。例えば、手元の光文社文庫版では〈馬鹿でかい虫〉とある。あとは〈甲羅みたいな固い背中〉と〈図体のわりにはみじめなほどに細い、たくさんの脚〉とだけ記述がある。芋虫というよりは、どちらかというとゴキブリに近い。実際、海外のペーパーバック版の表紙などではゴキブリの絵になっている場合が多い。
ではなぜカフカは「虫」に関して、それほどまでには細かく描写をしなかったのか。実はカフカは『変身』刊行の際に、虫を表紙に描くことを拒んでいる。初版本の表紙に描かれているのは、半開きになった扉の前で苦悩するザムザの姿で、これは虫の姿をしていない。つまり「虫」というのは、それほど重要なファクターではない。少々わかりくいかもしれないが、「虫に変身してしまった状況」そのものこそが重要なのだ。じつはザムザは、虫に変身してしまったこと自体には(まあ、最初は驚くけれども)、それほどショックを受けてはいない。彼が気にするのは、これからの家計のことだ。セールスマンである彼は、一家の稼ぎ頭である。その彼が働けなくなるということは、両親や妹が路頭に迷うということを意味する。
家族たちも同様で、ザムザが虫になったことはそれとして(もちろん最初は驚くけれども)、頭を切り替えて今後のことを話し合う。隠居生活を送っていた父親は働きに出なきゃと考えるし、母親も内職を始め、妹も語学を勉強する。みな、とても現実的だ。そのうち、ザムザが世話してくれたこの家は広すぎるなどと言い出して、空き部屋を利用して下宿屋を営むようにもなる(もちろん、ザムザがいることは内緒だ)。誰も(ザムザ本人でさえも)、変身してしまった体を元に戻そうとは考えない。どうして虫になってしまったのか。その理由も問わない。変身しちゃったんだからしょうがないよね、という感じ。
だからこのお話はコントなのだろうと思う。例えば、三人の下宿人にザムザの存在がばれてしまう場面。下宿人たちはザムザの姿を見るなり、彼の父親に向かって〈ただちにこの部屋の解約を通告する〉と告げる。一見、ふつうのやり取り見えるけれども、やはりこれはおかしい。目の前に大きな虫男が出てきたら、まずはその存在自体を疑い、正体を突き止めようとするだろう。そちらのほうが問題のはずなのに、ザムザの存在はそれこそ無視である。「まあ、いたんだからしょうがないよね。でも僕らは虫男といっしょに暮らすのはごめんだよ」という感じ。ザムザとしては、さぞかし「いや、もう少し、虫男のことについて突っ込んでよ!」と言いたかったことだろう。でもザムザ以外の登場人物たちは、そこには触れない。あくまでボケたおす。そのギャップが、なんともいえないおかしみを生み出す。
訳者の解説によれば、カフカはこの物語を〈友だちに笑いながら読んで聞かせた〉らしい。『変身』は、けして不条理をテーマにした物語ではない。ツッコミ役のザムザが、ボケ倒されて右往左往するコメディであるのだ。続きを読む投稿日:2014.01.07
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『変身』を目当てに本を買い読みました。
ある日、目が覚めると主人公が虫になっていたという突拍子もない展開から物語が始まるから、もっと主人公の内面的な葛藤とか苦悩が生々しく描かれているものかと期待して…いましたが、まさかの内容はルッキズム云々的なものであり思ったよりも淡々と物語が進行するので(翻訳の問題なのか?)肩透かしを食らったというのが正直な感想でした。洋書初心者なので単に自分に合わなかっただけかもしれませんが、、、。続きを読む投稿日:2024.02.27
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