聖地にはこんなに秘密がある
島田裕巳(著)
/講談社
作品情報
日本の宗教史の大半は、明治になって国家神道が生まれるまで、古代の神と中国大陸から新たに入って来た仏教が一体となった神仏習合時代。その独特に豊かな信仰の世界が甦ります。日本人が一つになって頑張らないといけない今だからこそ知りたい、「古代から受け継がれたもう一つの日本」。ゆっくり楽しんでお読み下さい!
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商品情報
- シリーズ
- 聖地にはこんなに秘密がある
- 著者
- 島田裕巳
- 出版社
- 講談社
- 書籍発売日
- 2011.06.09
- Reader Store発売日
- 2013.12.20
- ファイルサイズ
- 1MB
- ページ数
- 258ページ
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この作品のレビュー
平均 4.0 (3件のレビュー)
-
楽しそうなタイトルですが、著者は宗教学の第一人者。
表紙のやわらかそうなイラストに引かれて手に取ったものの、中身はきちんとした専門的な内容でした。
もともとはどこにでもあるような山や岩が、人の手によ…って神聖なものとされ、聖地として作り上げられていったそのきっかけと過程に興味を持ち、8つの日本の聖地を巡った記録です。
著者は奈良の三輪山と伏見稲荷を訪れ、どちらも神の住む聖域として、人々の強い信仰に支えられてきたという共通点を上げつつも、決定的な差異も上げています。
それは、三輪山の方は厳重に封印されており、稲荷山は人々に開かれた山だということ。
三輪山は、そのために雑多な信仰が入ってくることなく、古代的な聖地の雰囲気を漂わせたままになっていますが、伏見山の方は、庶民の信仰を受け、どんどん変貌しているそうです。
伏見稲荷には民衆の作った数多くの塚があり、六十年の間に十倍以上増えたとのこと。
特に戦後急増したそうで、千本鳥居の数も同じように急激に増加しているそうです。
伏見稲荷の奥の塚で蝋燭を灯し、般若心経を唱えている人がよく見られるとくくだりを読んで、神社でお経を唱えるという、神仏混淆の日本的な信仰形態を感じました。
天皇家が神道のみを催事に取り入れている伝統は、天皇制発足以来ずっとだと思っていましたが、明治の神仏分離からであり、それ以前の天皇は代々、熱心な仏教信者であり、日本人全体と同じく、神仏習合の宗教を信仰していたということも知りました。
伊勢神宮には天皇の祖先神のアマテラスオオミカミが祀られており、はじめは皇室のものでしたが、そのうち内宮は商業の、外宮は農業の神としての性格を与えられたそうです。
そのため、お伊勢参りがブームとなるほど広く庶民の信仰を集めることができるようになったそうですが、皇室専用のままだったら、威厳と秘密を保ったままで、ここまで民の信仰を集めることはできなかったことでしょう。
伊勢神宮には神宮の中心のようなイメージがありますが、以外にも持統天皇以降、明治天皇までの長い間、天皇は参拝していなかったそうです。
持統天皇の参拝時には、家来の猛反対を受けたとのこと。
その理由は、明確には語られていないものの、斎宮制度があったため、天皇が詣でる必要がなかったのではないかと類推されていました。
また、式年遷宮といったら伊勢神宮のみ行う儀式だと思っていましたが、大阪の住吉神社、千葉の香取神宮、茨城の鹿島神宮などでも、20年に一度遷宮が定められていたと知りました。上賀茂神社でも今なお行われています。
今年は伊勢神宮の式年遷宮の年ですが、総費用は550億円とのこと。
これを20年ごとに行うわけですから、大変な大事業だと改めて思います。
8つ目に沖の島の聖地を訪れた著者。
簡単に行けない場所だとはわかっていながらも、定期的な船便がないと聞くとその僻地さにしり込みします。
ここを訪れたあと、2箇所の聖地を巡って、計10か所の聖地を巡る予定だった著者ですが、この沖の島で「終わった」と悟ったそうです。
よほど強い神的体験を感じたのでしょう。
古代より何も変わらぬまま、その神秘性を保ち続けていると思われる聖地ですが、実際的な救済の機能を期待する信者側の希望と合わないところも多く、少しずつ開かれたものに変化しつつあるそうです。
ミステリアスで、その歴史については何も語らないような聖地ですが、その時々のニーズに合わせて、実は変わってきているという聖地。
なおさら、奥の深さを感じます。
紹介された8つの聖地のうち、4つしか訪れたことがないため、残りの4つ、久高島のクボー御獄、奈良の天理教教会本部、島根の出雲大社、福岡の沖ノ島にもいつか訪問してみたいと思いました。続きを読む投稿日:2013.06.21
宗教学者が日本の8ヵ所の「聖地」と呼ばれる場所についてその歴史やしきたり、現代の立ち位置などを解説している。
比較的近代に創設された天理教本部のような場所から、神話の時代にまで由来が遡る沖ノ島など歴…史の深さも様々。現代でも宗教上の重要な拠点だったり、パワースポットと呼ばれて観光客を呼び込む場所もあり、訪れる人たちの目的もまた多様化している。
各地にあるしきたりや「封印」、伝統行事は誰がいつ、どのようにして決めたのだろうと思う。後の世の人達に不要と判断されればなくなってしまうものが今でも続いているのには、それだけ人々を惹き付ける物があるからだろう。続きを読む投稿日:2023.12.03
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