この作品のレビュー
平均 3.3 (3件のレビュー)
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岡井隆(1928~2020年)氏は、慶大医学部卒で内科医も務めた歌人で、塚本邦雄、寺山修司とともに前衛短歌の三雄の一人。1946年に「アララギ」に参加し、浪漫的な作風から出発したが、1955年頃の塚本…、寺山らとの出会いから、先鋭的な主題を表現して現代短歌に思想性を導入し、前衛短歌運動の旗手の一人となった。1985年頃からはライト・ヴァースを提唱し、口語と文語を融和した作風に転換。長年に亘り日経新聞歌壇や中日新聞歌壇の選者を務め、また、歌会始選者も務めた。紫綬褒章、文化功労者。従四位叙位、旭日中綬章追贈。
本書は、月刊誌「短歌」に1985~87年頃に連載したものを集めて、1988年に出版され、2011年に文庫で復刊された。
私は50代の会社員で、最近短歌に興味を持ち始め、これまで俵万智、穂村弘、東直子、枡野浩一、木下龍也、岡野大嗣、九螺ささら等の歌集や短歌入門書、いくつかの現代短歌のアンソロジーを読み、半年ほど前から新聞短歌に投稿している(最近ぽつぽつ選ばれるようにもなった)のだが、俵万智、穂村弘以前の、近代短歌の流れを汲む歌人の、ある意味ベーシックな考え方が知りたいと思い、本書を手に取った。
読んでみると、初句と結句に注意せよ(予想外の展開が大事)、五句三十一音の定型を守れ、一首の核心となる「事物」(=名詞)を見つけよ、「一般的表現」ではなく「個別的表現」をせよ、「T(時)・P(場所)・O(場面)」を入れて一首をまとめよ、事柄や因果物語ではなくて感情を詠め(散文ではだめ/お話をするな/説明をするな)、常識的でありきたりな心の動きを歌にするのは難しい、常套句(型どおりの、ありふれた文句)は禁句、新鮮で個性的で適度の意外性を持った比喩を使え、プロの歌人が持つ価値基準(=近代短歌史)を身に付けよ、性質の違うものを結びつけよ/小道具の入れ替えをせよ、等々、表現は異なるものの、これまで読んできた、俵万智の『考える短歌』や木下龍也の『天才による凡人のための短歌教室』等に書かれていたことと共通するアドバイスも多い(当然だが)。
その一方で興味深く読んだのは、社会詠は読まないに越したことはない、というくだりである。というのは、私は国際情勢や時事問題に対する関心が比較的高く、それらをテーマにした歌をつい詠みたくなるのだが、現在までその歌が新聞歌壇で選ばれたことはない。これまでも、社会詠は絶対取らないと言う選者がいるという話や、穂村弘が、(社会詠にありがちな)短歌で主義・主張をしてはダメとか、反論の余地がない/身も蓋もない内容は短歌に馴染まない、と述べていることは知っていたが、それらにどのような(近代短歌史的な)背景・理由があるのかが理解できた。ただ、岡井はあとがきで、短歌界も自分の考えも変わって来たこと、「近代短歌の遺産に対する愛惜の気持ち」から、敢えて社会詠や自然詠などの項目を加えたことを書いているし、本書が書かれて30余年が経った今では、若手歌人を中心に、近代短歌の流れとは異なる様々なスタンス・モチーフ・作風の短歌が詠まれているのも事実であり、自分としても、近代短歌の流れは頭に置きつつも、いろいろ試行錯誤をしながら歌を詠んでいきたいと思う。(将来、木下や九螺や斉藤斎藤らが新聞歌壇の選者になるようなことになれば、選ばれる歌もガラっと変わるのかも知れない)
(2022年3月了)続きを読む投稿日:2022.03.22
説明的になるな、お話、散文は要らないというところのメッセージは伝わってきた。
それから、読み手は詠み手であるという主張は、確かにと思わされるところがあった。
現代の歌人と違って権威主義の時代という…感じ。初心の人、殊に女性を下に見ていたんだろうな、特に悪気もなく。
これについてはまた違う機会にと言っておいて出てこないことなどあった。続きを読む投稿日:2023.11.01
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