この作品のレビュー
平均 3.7 (6件のレビュー)
-
このレビューはネタバレを含みます
イタリア古典文学の最高峰
レビューの続きを読む
作者ダンテが自分を主人公に描いた夢物語小説
1265年フレンツェに生まれたダンテは9歳の時にであったベアトリーチェに恋し、その愛が彼の創作活動の源となった。
彼はわざわざ市民たちが読みやすい口語体のイタリア語で『神曲』を13年かけて書き上げた。完成直後に亡命先のラヴェンナに没す。他にもベアトリーチェを称えた最初の作品を残している。
ーーーー煉獄篇のあらすじーーーーーー
地獄→生前の罪を、罪の重さに応じた刑罰で永遠に罰せられる所
煉獄→生前の罰を、罪の重さに応じた刑罰で償えば天国へ登れる所(キリスト教の中でもカトリック独特のもの)
実は「煉獄」は旧約聖書には載っていないもので、あくまでカトリックの”聖伝“として受け継がれている概念
プロテスタントはこれに対して聖書に忠実なので煉獄の存在を基本的には否定する。
生前にカトリック教会の言うことを聞けば天国とまではいけないまでも煉獄にはいけるよ、という感じで都合の良い概念だったそう。
イタリアでは中学で『神曲』を3年くらいかけて読むくらい難解だとか。
ダンテ本人はこの書を”Commedia”(喜劇)と単に名付けたが、ボッカチオが”Divina Commedia”(神聖な喜劇)と付け足し、『神曲』と訳したのは森鴎外が最初と言われる煉獄はイタリア語で”purgatorio”(プルガトリオ)
煉獄では地獄とは逆に「下から上に山に登っていく描写」がされる
煉獄で自分の罪の償いをしながら山に登るのだが、その際に彼らの家族や知人が現世でその魂のために祈りを捧げてくるとそのぶん早く頂上に辿り着けると言うシステムにもなっている
煉獄で会う人たちにはダンテが目を覚まし、現世に戻ったら彼らの家族に「もっと彼らのために祈ってあげて」と伝えてくれと言う約束を交わしながら上に登っていく
途中天使が現れてダンテの額に7つの「P(peccato/罪」を刻みます。この7つのPとは、高慢、嫉妬、怒り、怠惰、貪欲、大食、色欲を表しており、煉獄にいる魂は山を登りながらそれらの罪を順に清めていく。ダンテの額のpも次第に消されていき、体が軽くなっていく。
解説では、もともと煉獄Purgaatorioは「浄罪」と言う意味だから、煉獄=浄罪界と言っても良いかもしれないと説明されている。投稿日:2022.02.23
このレビューはネタバレを含みます
パンデミックの影響で在宅テレワーク時代が到来し、往復3時間の通勤から解放。
レビューの続きを読む
自分時間を持て余す幸福なライフスタイルを信じて疑わなかったにも関わらず、フタを開けると忙しすぎて読書どころかランチの時間す…ら取れない有様。。。
おかしい。。。明らかに何かが間違っている。。。
考え抜いた挙句、「これまでの度重なる罪過のせいで天の怒りをかっているのだ」と結論。
ああ、もはやダンテの『神曲(煉獄篇)』にすがるしかない。
くだらない前置きはこの程度にして、『神曲(煉獄篇)』の感想を手短に表現すると、地獄篇以上に隠喩表現がふんだんに盛り込まれており、その一つ一つが教養の塊。同時に非常に示唆に富みます。
また一方で、ダンテ個人も(ある種の)罪の呵責を受ける特殊なパートだといえます。
「私は歌おう、ひとのこころが浄められ
天上へのぼるにふさわしくなるところを、
その第二の王国のことどもを」
地獄を出て煉獄に達したダンテとウェルギリウスは、頂にある地上の楽園へ歩を進めます。
「煉獄」という言葉からは何か地獄に似たおどろおどろしさを感じてしまうかもしれません。
しかし原典でのこの単語の意味は「浄罪」にあたります。つまりは天国にのぼる資格はあるものの、なおも穢れを抱えた者たちがこれを浄める場と位置づけられます。
地獄は非常に複雑な構造をしていましたが、煉獄はそれよりもシンプルです。
全体は円錐形の山で、頂上に向けてらせん状の環道がはしっています。
そしてその道すがらで、穢れを抱えた者たちが浄罪のための呵責に耐えています。
彼らの罪は7つで、それぞれ 色欲、大食、貪欲、懶惰、情怒、嫉妬、傲慢 がそれにあたります。映画やアニメでよく聞く「7つの大罪」とはこれのことですね。
ダンテはこれらの罪を抱えた者たちと会話を交えながら、やがて煉獄の頂である地上の楽園に至るわけですが、そこで交わされる会話や目の当たりにする現象は『地獄篇』以上に隠喩に富み、注釈なしでそれらを理解するためにはかなりの教養が求められると感じました。
例えば頂に近いある環道で、ダンテは貪欲の罪の呵責に耐える法王アドリアーノ五世に出会います。彼を憐れみ、また敬意を表してひざまずこうとするダンテに法王は次のように檄を飛ばします。
「兄弟!足を延ばして起ち上がれ!・・・、君がこれまでに「人は娶らず」という神聖な福音書の言葉を聞いたことがあるなら、わしの言う意味がよくわかるはずだ。」
この「人は娶らず」は『マタイ伝』におけるイエズスの言葉の引用ですが、法王の真意はそれに続く「そもそも神は死せるものの神にあらず、生くる者の神なり」にあるとのこと。
生き人であるダンテこそ神より祝福されるべきとの示唆が、そこにはあります。
このように示唆に富んだ表現が『煉獄篇』にはふんだんにちりばめられています。
なお、角川ソフィア文庫にはこれらが事細かに注釈として添えられているので、それを読んでるだけでも面白いと感じました。
そして煉獄の頂にいたったダンテは、神の使者ベアトリーチェとの邂逅を果たします。
彼女はダンテが愛したといわれる女性で、一言も言葉を交わしたことのない彼女を、ダンテは終生慕い続けたといわれています。
言葉を交わしたこともない女性に対するこれほどまでの思い入れについては異常さを感じなくもありませんが、ダンテがそれほど彼女の篤信に惹かれていたということでしょう。
ここでベアトリーチェはダンテを激しく責め立てますが、この出来事をあとがきでは「ダンテの特殊な罪、ベアトリーチェに対する罪の浄め」と表現しています。
うーん、やっぱり異常。。。
ある意味ダンテの内面表現がふんだんに織り込まれているといえる『神曲(煉獄篇)』は、様々な示唆と教養に富む、とても興味深い1冊と言えると思います。続きを読む投稿日:2021.02.11
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。