データを紡いで社会につなぐ デジタルアーカイブのつくり方
渡邉英徳(著)
/講談社現代新書
作品情報
著者・渡邉英徳氏は、「ナガサキ・アーカイブ」「ヒロシマ・アーカイブ」「沖縄平和学習アーカイブ」「東日本大震災アーカイブ」等、グーグルアースに証言や写真、動画等を載せたデジタルアーカイブを地元の人々との協働により制作、注目されています。肩書は情報アーキテクト。データを見やすくデザイン、貴重な記録を時空を超えて伝え「記憶のコミュニティ」をつくる―そんな仕事を通して現代におけるデータのあり方を語ります。(講談社現代新書)
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商品情報
- 著者
- 渡邉英徳
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- 講談社現代新書
- 書籍発売日
- 2013.11.15
- Reader Store発売日
- 2013.11.15
- ファイルサイズ
- 25MB
- ページ数
- 272ページ
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この作品のレビュー
平均 3.5 (21件のレビュー)
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「データを紡いで社会につなぐ」とは、データ収集が重要なのではない。「社会をつなぐ」ことにこそ重きがある。
著者は現在、首都大学東京システムデザイン学部准教授だが、もともとは建築家であったらしい。とはいえ、学生時代から「建てない建築家(アンビルト・アーキテクト)」のほうに惹かれていたという。本書で紹介されて…いる名前を挙げれば、次期東京オリンピックの新国立競技場の設計者ザハ・ハディド、あるいは、ベルリンの「ユダヤ博物館」を設計したダニエル・リベスキンドといった建築家。いまでこそ実作を手がけているが、彼らは〈ドローイングのみで作品を発表する「建てない建築家」〉であったらしい。
著者の場合、ちょうど設計にCADが入り始めた頃に学んだということもあって、作品の建築場所はもっぱら「コンピュータの中」となった。そこからゲーム制作の手伝いをするうちに(PS『アディのおくりもの』)、「フォトン」というゲーム会社の代表取締役となる。そこで作った「リズムフォレスト」というゲームは〈仮想世界に樹を植えると、現実世界にも樹が植えられる〉をコンセプトにしていて、それが著者と「グーグルアース」とを結びつけるきっかけとなった。ある日、ユーザーのひとりから、実際に「植林されている場所をみてみたい」という声が届いたのだ。
グーグルアースには、例えば写真や動画などの〈ユーザー独自のXMLデータを重ねあわせる〉ことができる。これはつまり、仮想と現実とをつないだ、これまでにない空間を作り出すことを意味する。これが著者の「建てない建築家」という志向と合致し、そこから現在の「情報アーキテクト」という肩書が誕生した。「情報アーキテクト」とは、現実世界の情報を仮想空間に移し替えて、再構築するひととでもいおうか。
例えば、著者の仕事のひとつに「ツバル・ビジュアライゼーション・プロジェクト」というものがある。地球温暖化の影響で国土が沈んでしまうとされるツバルだが、そこで暮らす人々は必ずしも悲嘆に明け暮れているわけではない。プロジェクトサイトではツバルの老若男女のポートレートとメッセージを見ることができるが、多くの人たちは僕たちと同様に、平凡な日常を送っている。グーグルアースという仮想世界に現実世界を重ねあわせることで、僕たちの知らない(あるいは見ようとしない)ツバルのほんとうの姿が浮かび上がる。
また、仮想空間では時間をさかのぼることもできる。過去に起きた惨劇を写し取ることもできる。それが「ナガサキ・アーカイブ」や「ヒロシマ・アーカイブ」、そして「東日本大震災アーカイブ」である。そこには被爆者や被災者たちの証言が、マップ上に重ねあわされる。「ナガサキ・アーカイブ」であれば、1945年8月9日午前11時2分。その時間に長崎の人々がどこにいて、建物や街の風景がどのように変貌してしまったか。その一瞬が仮想空間に再現されている。もちろん過去の証言や写真にはGPS情報など埋め込まれていないから、マッピングは地道な手作業による。新しい証言の収集などは、地元の有志が動く。
「ビッグデータ」や「オープンデータ」などと聞くと、最先端のスマートな印象をもつが、本書で紹介される作業はずいぶんと泥臭い。技術は道具に過ぎないからやがて寿命が来る。グーグルアースとて、10年後には古びて使いものにならないかもしれない。著者はその点を自覚していて、〈人間のつながりそのものを生かして、未来に向けて記憶を語り継いでいく人々を育てることにも、力を注げれば〉と記す。「ヒロシマ・アーカイブ」で被爆者の証言を取材したのは高校生たちだ。彼らだったからこそ、初めて証言をしたという被爆者もあったという。「データを紡いで社会につなぐ」とは、データ収集が重要なのではない。「社会をつなぐ」ことにこそ重きがある。
続きを読む投稿日:2014.03.13
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筆者は GoogleEarthに様々なデータを重ね合わせた作品を創出している情報アーキテクト。 オープン・ビッグデータ…本質はオープンやビッグではなく、何を伝えたいかという人々の想いだと実感する一冊。
投稿日:2020.12.20
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