経済学は人びとを幸福にできるか
宇沢弘文(著)
/東洋経済新報社
作品情報
2003年刊の底本『経済学と人間の心』(四六版上製)の新装版。
著者は市場メカニズムや効率性の重視に偏った考え方を批判し、人間の尊厳や自由を大切にした経済社会の構築を訴えてきました。
実際、2000年代後半のリーマン・ショックや世界経済危機を経て、「人間が中心の経済」という思想はますます輝きを増しています。同時に、幸福な経済社会を作るうえで、経済学がどのような役割を果たせるかという議論が巻き起こっています。
新装版では底本の構成をガラリと変え、未公開の講演録2本を追加しました。さらにジャーナリストの池上彰氏が「『人間のための経済学』を追究する学者・宇沢弘文」と題して、解説を加えています。
ノーベル経済学賞候補と言われた世界的な知の巨人・宇沢弘文氏が、温かい言葉でその思想を語った、珠玉のエッセイ集です。
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この作品のレビュー
平均 3.9 (23件のレビュー)
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経済学と政治的イデオロギーは切り離して考えたいです
先日(2014年9月)亡くなった経済学者の宇沢弘文氏の講演や論文集です。
死去を伝える新聞記事では、1983年の文化功労者の顕彰式後、昭和天皇に経済学について説明し、「経済経済と言うけれども、要するに…人間の心が大事だと言いたいのだね」というお言葉を受けたというエピソードが紹介されていました(本書にも出てきます)。
近年こそ行動経済学や経済心理学といった学際的な議論も進んできていますが、30年以上前の経済学は完全に合理的な人間を想定し、「効用」という損得の指標で人間の活動を規定する学問でした。
人間が完全に合理的であるという前提でモデルを構築し、実際の経済と乖離すればモデルを修正する繰り返しでしたが、そのまま突き詰めていれば経済学はどこかで行き詰まるか、極端な結論が出てしまうことになっただろうと思います。
じっさい、極端な結論である市場原理主義を推し進めた結果、投資家だけが企業や市民から富を奪って大量の利益を得て、しかし利益を得ること自体が目的ゆえに利益の使い道がなく、さらに多額の投資を行うしかなく結局誰も幸福にならない、という社会が生まれています。
私も、現実の経営や生活にあって、ただ利益を追い求めるだけでは幸福になれないと考えています。
そのために企業は経営理念を掲げていますし、個人もそれぞれに生きがいや価値観を持っているでしょう。自分が嫌いな投資家は、彼らはただ利益しか追い求めず、投資先の企業の成長すら考えていないのが透けて見えるのです。
ということで宇沢氏の経済学的スタンスには非常に共感を示すのですが、一方で政治的イデオロギーが前面に出すぎていることに違和感を持ちました。
太平洋戦争とベトナム戦争を体験し、多くの研究同志を失ったことが影響しているのだろうとは思いますが、一方的な考え方を押しつけられ、かえって自由を失ってしまうような気がしました。
もちろん政治と経済を完全に切り離すことはできませんが、経済学は学問的見地から、政治抗争やイデオロギーとは一線を画したところで政治に助言するスタンスが適しているのかもしれません。
後半の、教育や環境、都市計画についての論文は評価が分かれると思います。
本書全体を通して、効率的すぎることで人間らしさを失っている、という主張があります。
ただ、どこまで非効率を賞賛すべきなのか、古くさい考え方にしがみつき、社会の変化を拒んでいるだけではないのか、という反論もあるでしょう。
様々な考え方があって良いと思いますので、本書の主張を鵜呑みにせず、また老害だと切り捨てることもなく、ひとつの意見、行き過ぎた合理化に対するアンチテーゼとして受け止めていきたいと思います。続きを読む投稿日:2014.11.20
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宇沢弘文の正義感に惹かれる。市場原理主義を厳しく批判。ミルトン・フリードマンを憎んでいるような発言も同根。制御しない資本主義は強欲を暴走させ、しかも力を与えてしまうから、社会的に制限をかけないといけな…い。社会的共通資本は、市場原理主義では守れないのだ。
本書は宇沢弘文の思想や日常に触れるエッセイや対話文の寄せ集めなので、どこかで読んだ内容も多い。それでも理解が深まるので、私には嬉しい。
ー 1945年夏、フリードリヒ・ハイエクとフランク・ナイトがスイスの避暑地モンペルランで会話。ナチズムによって、人間の存在基盤自体が破壊され、人間の自由や人間の存在を回復するために、経済学者として考えなければならない。独裁的な規制を否定し、自由な人間らしい生き方ができるような経済的基盤を考えていく必要がある。そのために運動を起こそうと。ネオリベラリズムはそこから始まった。フランクナイトは、長崎に原子爆弾を落とした事は、人類の犯した最悪の罪であると糾弾し、競争と倫理について深く考えを進めた。素晴らしい経済学者。しかしその後フリードマンが中心になり儲けをひたすら求めた。フランク・ナイト先生は、ミルトンフリードマン、ジョージスティグラーの2人を破門した。
ー 1805年に有名なトラファルガーの海戦があって、スペインとフランスの連合艦隊がネルソン提督率いる英国艦隊に敗北。その後1815年ワーテルローの戦いによりナポレオンが連合軍に乾杯。パックスブリタニカの出発点はここ。バックスブリタニカの崩壊の始まりは、世界大恐慌で、日本では昭和大恐慌と呼ばれている。192 9年のニューヨーク株式市場の大暴落に始まった大恐慌だ。この時2人の経済学者、ケインズとベバレッジがパックスブリタニカの崩壊を防ごうとした。
ー ケインズは一般理論にて。
資本主義制度における資源配分は必ずしも効率的ではなく、またそのときの所得分配は公正なものではない。経済循環のメカニズムもまた安定的ではない。資本主義が安定的に調和のとれた形で運営されるために、政府がさまざまな形で経済の分野に関与しなければならない。
政府の関与が無ければ、巨大な資本を操る成功者が最低賃金で大衆を奴隷化し、継続的に搾取する事が可能になる。生活インフラを買い占めれば、資本家の独裁が誕生だ。民主主義がブレーキの機能を発揮しなければ、資本主義の暴走が剥き出しになる。市場原理主義一辺倒が正しい筈がない。続きを読む投稿日:2024.03.30
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