核の難民 ビキニ水爆実験「除染」後の現実
佐々木英基(著)
/NHK出版
作品情報
ビキニ環礁の水爆実験後、偽りの安全宣言を出し、被曝した島民たちを実験台として健康調査を続けてきたアメリカ政府。あれから半世紀、除染が完了したとされる島は本当に安全なのか。冷戦下のアメリカが推し進めた原発推進と表裏一体の「核戦略」を軸に、過酷な漂流生活を強いられた人々の惨状を綴り、フクシマの将来を見つめるノンフィクション。
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商品情報
- シリーズ
- 核の難民 ビキニ水爆実験「除染」後の現実
- 著者
- 佐々木英基
- 出版社
- NHK出版
- 書籍発売日
- 2013.03.27
- Reader Store発売日
- 2013.09.13
- ファイルサイズ
- 3.7MB
- ページ数
- 260ページ
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この作品のレビュー
平均 4.3 (3件のレビュー)
-
「住民は除染の不完全な故郷に帰った。なぜ? たぶん“人体実験"だったのです」
原子力災害を隠蔽しようとする、日本政府、財界、マスコミの体質に疑問や関心を持っている方は読んだほうが良いと思います。
い…まから60年前に、原爆によってでも原発事故でもなく、計画的に被曝させられた島があった。
1954年3月1日 アメリカ軍の核実験のためマーシャル諸島ビキニ環礁で水爆ブラボーが爆発した。爆発の威力は、開発に携わった研究者の予測をはるかに上回る想定外の威力だった。
そのとき、爆心地の東160kmには日本のマグロ漁船「第五福竜丸」がいた。そして爆心から東180km地点のロンゲラップ島ではちょうど朝食の準備が始まっていた。爆心地からの風は東に吹いていた。
アメリカ(軍)は、ロンゲラップ島に突然現れ、住民の検査を始めた。そして、住民を無理やり土地から引き剥がし隔離した....
核実験から60年経った今、アメリカ政府はロンゲラップ島の除染は完了し、住民は安全に住むことができるとして住民の帰島を推進している。しかし、住民は除染は島の土壌のごく一部のみが完了しただけであり、すべての島そして周辺海域の除染が済まない限り、島に帰ることは困難とこれに反対している。
日本政府は、アメリカ政府から200万ドルの(好意による)見舞金の支払を受け、第五福竜丸の件は完全決着とした。同時に被曝した第五福竜丸以外の多くの日本漁船については、なんの補償も手当ても行われていない。
そして、核実験の翌1955年日本で原子力基本法が成立し、日本はアメリカ原子力産業の顧客として原発ビジネスの大手顧客となった。
2018年7月日本の原子力政策の骨格ともいえる「日米原子力協定」の有効期限が終了する。しかし、有効期限6ヶ月前からの事前通告がなされなければ、この協定の効力は継続してしまう。
おそらく、政府、財界、マスコミはこの件については、口をつぐみなにもいわないまま、協定の存続を既成事実化するよう試みる。
FUKUSHIMAの原発事故を経験した、日本国民はそれを黙ってみているしかないのだろうか?続きを読む投稿日:2013.08.19
このレビューはネタバレを含みます
チェック項目13箇所。ロンゲラップ島では、がんやその他たくさんの病気が発生しました、女たちは死産、あるいは『怪物』のような姿の子どもを産みました、そして、男たちはそれまでなかったようながんを発症しまし…た、恐るべき時代でした、それでもアメリカは『安全だ』と言い続けました、同時に、汚染された食物を、そうとは知らず食べている住民を検査し、放射能の影響を研究しました、これから、私が旅の途上で発見した「真実」を、ともに見届けていただきたい。なじみのない避難先での暮らしは苦労の連続だったという、故郷では自由に木の実を穫り、漁をしていたが、避難先では、なにをするにも地権者の許可が必要だ、「マーシャルでは、故郷の島に葬られないことは、とても良くないことなんです、天国に行けない、と本気で気に病むお年寄りもいるんです」。アメリカはすでに「マーシャル諸島を恒常的な核実験場にする」と発表していた、アメリカはこの地域を「戦略的信託統治領」とすることを国連から認められていた、実質上の「植民地」である、住民の同意なく核実験をおこなうことができるし、「立ち退き」の強制も可能、外国人の立ち入りも拒否できる。「おばあちゃんはニコニコしてじっとしてくれていたよ。元気なおばあちゃんでね、百五歳まで長生きしたのよ」―百五歳? たいへんな長生きですね、「昔は珍しくなかったよ。みんな長生きだった。爆弾が爆発する前はね」。私たち全員が裸で立っているのを彼に見られてしまいました、私たちは涙を流しました、なぜなら私たちの習慣では、親戚の異性に裸を見られることは、決して犯してはならないタブーだったからです、まるで私たちの文化が引き裂かれたようでした」。日本政府……自国民を被曝させられ、死者まで出て、しかも核実験の責任者から「スパイ」と濡れ衣を着せられたにもかかわらず、政府は「早期決着」を急ぐ、アメリカから200万ドル(当時のレートで換算すると7億2千万円)の見舞金が日本側に払われることで「完全決着」とした、この金は価格暴落などへの「慰謝料」として配分された、乗組員には一人あたり平均200万円が支払われた。実は、第五福竜丸以外にも約千隻もの日本漁船が「死の灰」を浴びていた、しかし、その船の乗組員には見舞金は支払われなかった、それらの船の乗組員のなかにも被曝の影響と思われる病気が多発したが、現在に至るまで、なんら補償や手当をなされていない。「よその島の人たちは、私たちが放射能で汚染されていることを恐れて、手を握ることさえ拒みました。よその島の人がいると、私たちは家の外に出ることをためらいました。なぜなら、その人たちは私たちに向かって、『ブドウのような赤ん坊を産む女だ』と言うからです」。マーシャル諸島ではキリスト教(プロテスタント)が主流だ、棺に納めて土葬するのが一般的である、「イバイ島は混み合っていて、遺体を埋めることはできなくなりました。私たちは、死者を埋める場所を探し回らねばならなかったのです。それでも見つからず、やむなく火葬に踏み切るようになったのです」、「弔い」という、共同体にとって最も大切な宗教行事が、変質していったのだ、同時に、自殺する住民が増えた。「アメリカ政府から医療保険を受け取っている母を、私は咎めたことがあります。『お母さんはアメリカを赦すのですか? どうしてアメリカに屈服して、自分のからだを調べさせたりするのですか?』そう言って母を責めたのです。すると母は答えました。『ほかの誰を頼れというの? アメリカ以外のどの国がこの問題に関わってくれるというの? 誰もいないのよ』母は、生前、そう言っていました」。「このままマジュロで暮らすのは、孫たちのためにも良くないと思うの。伝統や文化がすっかりなくなってしまうのが怖いのよ。互いに助け合う気持ちがどんどんなくなっているじゃない。ふだんから私もそういうことを教えているし、学校でもロンゲラップのd念頭文化を伝えているみたいだけど、ここで暮らしている限り、食生活も文化も、ぜんぶ都会のものになってしまうわ。だから、ロンゲラップ島に学校ができたら、それを機会に帰りましょう。どう?」。この本は最初から最後まで「より幸せな未来」をたぐり寄せるために書きました、この小さな本が、少しでも読者のお役に立つことを願っています。続きを読む
レビューの続きを読む投稿日:2013.08.10
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