あわせて学ぶ 会計&ファイナンス入門講座
保田隆明(著)
,田中慎一(著)
/ダイヤモンド社
作品情報
実務上で隣接する「会計」と「ファイナンス」というテーマを1冊でまとめて解説した初めての本。「会計とファイナンスの違い」など両者の関係をわかりやすく解説したのち、MBAの授業でも行われたゲームを通じてファイナンスの概念を本質的に理解できるなど、会計からフィナンスへの知識の橋渡しに最適な1冊となった。
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商品情報
- シリーズ
- あわせて学ぶ 会計&ファイナンス入門講座
- 出版社
- ダイヤモンド社
- 書籍発売日
- 2013.04.25
- Reader Store発売日
- 2013.07.19
- ファイルサイズ
- 22.4MB
- ページ数
- 280ページ
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この作品のレビュー
平均 3.9 (10件のレビュー)
-
ファイナンス部分は私にとって少し難易度が高かったが、非常にわかりやすく解説されており理解が深まった。これは何度も読みたいと思う。
投稿日:2024.01.02
このレビューはネタバレを含みます
分厚い本ながら、わかりやすく親切な本。
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理論的な基礎はおさえつつ、具体例を現実的な数値で説明されており、図表も豊富で、イメージがつきやすい。
会計、ファイナンス関連の本は、今までにも読んできてるけど…、ゼロから学びたい人にも推せる1冊。
こーゆーもんだから覚えとけではなく、必ず理由があったり、実務ではこのくらいになるといった、プロの実践者による本である価値は大きい。
個人的に、ポイントをまとめると、
・ファイナンスの目的は「企業価値の最大化」
→活動は「調達、運用、還元」に集約される。
・企業価値を向上させる為には「将来のキャッシュフローを増やす」か「割引率(WACC:加重平均資本コスト)を下げる」
・キャッシュフロー改善は生産性と収益性を高める
まずは当たり前のように定量化して、分析可能な状態にして、どこに問題があるのかを理解することがスタートラインとなる。
将来のキャッシュフローを「確実性高く」「増やす」のがシンプルな目的ながら、結局のところ、その“見込み”のセンスが重要になってくる。答えは誰もわからないけど、理由のある数字を頼りに意思決定できる意味は大きいなと。
現時点では正直、WACCの計算式なんかは覚えていられる自信がないから、ざっくりWACCの概念だけ理解できてれば良いやと割り切っておく。
以下は読み返し用↓
・財務三表をマネジメントするのがファイナンス
・企業は、いざキャッシュが必要と言う時に、投資家からすんなりと資金を調達できるようにしておきたいと考えています。
・一旦自社の株式を買ってもらった投資家に対して、企業はずっと安定的に株式を保有し続けてほしいと考えます。
・企業価値を最大化する事は、将来生み出すキャッシュフローを最大化することに他なりません。
・ファイナンスと密接な財務会計、意思決定のための管理会計
・会計は、会社が実行した経営戦略の結果が反映された過去の情報であるのに対して、ファイナンスは会社の未来を決める経営戦略と言うことができます。
・会計の主役は利益であるのに対して、ファイナンスの主役はキャッシュフロー、つまり現金です。
・減価償却のやり方によって利益は変わる。どのように償却してもキャッシュフローは変わらない。これは会計が扱う利益とファイナンスが扱うキャッシュの大きな違いです。
・売掛金残高が増えれば、それだけキャッシュが拘束されることから、ネットキャッシュアウトフローとなり、売掛金残高が減れば、それだけキャッシュが回収されることから、ネットキャッシュインフローとなります。
・キャッシュフローはブロック図で考えるとわかりやすい
・利益に対するインパクトが最も大きい打ち手は単価アップである。
・価格に見合うだけの付加価値を商品やサービスに加える、むやみな値引きやセールを止める、クロスセルやアップセルを促進するなどの打ち手を考えなければなりません。
・原価削減も、利益に対するインパクトが大きいため、業績不振の会社が打つ手としては、極めて有効です。
・売り上げ、原価、粗利に関するデータを分析する。短期間で利益を出し、キャッシュフローの改善を図るには、粗利を改善することが最も近道といえます。売り上げデータは、得意先毎の売り上げ、高総額、原価総額、粗利総額、粗利率が明らかになっていることが重要です。営業担当者も明らかにしておくと傾向や課題が浮き彫りになるので、さらに有効です。
・償還年数=借入金残高/当期CF
・債務超過解消年数=債務超過額/当期利益
・通常、金融機関は、融資先に対して、償還年数を10年以内にするように求めています。逆に言えば、償還年数が10年を超えているような会社に対して、追加の融資を行う事は難しいと言うことになります。
・運転資金のための借り入れを続けていくと、新規の借り入れと返済を繰り返すことになり、資金繰りが逼迫する負のスパイラルに入り込みます。これが売り上げ至上主義の恐ろしいところです。
・粗利率の向上を目指すことによって、売上高が増えなくても、確実に利益を残すような戦略を実践すべきです。
・抜本的な経営改革を要する問題であり、銀行から一時的に資金を借りたところで、解決する問題ではありません。
・商品、製品を扱う会社が実地棚卸しを行っていないため、どれだけ資金が寝ているのか、経営者自身が気づいていない中小企業は意外に多いものです。
・売上高が増えていて、利益が出ているのにキャッシュが足りないと言う会社はほぼ例外なく、在庫の対流が大きな原因です。最低でも月に1度は実地棚卸しを行う。べきでしょう。
◎経営不振企業の経営者は、会計に関するデータを軽視する傾向にあります。月次決算は締めるのが早いほど、自社の経営課題を早く明らかにし、課題を克服するための活動に速やかに着手することができるのです。月次決算は、遅くとも翌月5日以内に締めることが望まれます。
・ベンチャー、中小オーナー企業が目指すべき経営は、生産性(経営効率)を向上させることと、収益性(付加価値)を上げること。
◎目標とすべき指標は、生産性については「総資本回転率」と「一人当たり生産性」、収益性については「売上高利益率」となります。
・中小オーナー企業やベンチャー企業は、上場企業を上回る収益性、生産性で勝負するしか生き残っていく道はありません。上場企業の経営指標を参考に、それを上回ることを目指すべき。それらは売り上げ規模が大きくなるにつれて低下していく宿命にあるため。
◎一人当たり生産性は、売上高、粗利、人件費及び経常利益を従業員数で割ることによって計算します。正社員は1人、アルバイトは0.5人とカウントする。
・現在のお金の価値は、将来の同額のお金の価値より高い
・リスクが高いものほど、現在価値と将来価値の乖離が大きくなる。
・複利計算。今500万円を持っています。金利1%で5年間銀行に預けると5年後いくらになる?500×(0.01)^5
・情報のない株式は、よりリスクが高いので買えないし、そもそも売買もしにくいと言うことになります。株式の売買数が減るとどうなるかと言うと、市場での株価に適正な値付けがなされない可能性が出ます。取引量が少ないと流動性が欠如することになり、株価には流動性ディスカウントが付されて、理論的株価よりも低い株価で取引されることもあります。
◎情報量が乏しい場合、投資家はリスクが高いと判断しますので、割引率が高くなります。
・1000投資して、1250のリターンで250もお得じゃないかと言って、このプロジェクトに投資すべきと判断してはいけません。ファイナンスの世界では時間の概念を勘案した。現在価値で考えなければいけない。
◎初期の投資額を含めた将来のすべてのキャッシュフローの現在価値をNPVといいます。NPVはNet Present Valueの頭文字をとったもので、直訳すると正味現在価値と言う意味になります。
◎NPV>0であれば投資プロジェクトを実行する
・IRRはinternal rate of returnの略で、内部収益率。利回り。
・IRR>ハードルレート であれば投資する
◎期待利回りであるIRRがハードルレート(例えば、借入の金利)を超えれば、投資プロジェクトを実行すべきである
・IRRは「NPVをゼロにする割引率」
◎IRRは投資プロジェクトの規模が反映されないと言うデメリットがあることを考慮しておく必要があります。IRRでは投資の効率性、NPVでは投資が企業価値に与える絶対額をそれぞれ計算できる。
・IRRは投資予算が限られているときに、有効。
・ ExcelでIRR関数を使うと求めれる
◎単純回収期間法では投資したお金を何年で回収できるかを計算し、社内であらかじめ決めておいた基準年数より早く回収できるかどうかで投資実行の可否を判断します。
これにはファイナンス理論上はいろんな問題があります。第1に、キャッシュフローの時間価値を無視している点です。第2に投資プロジェクトのリスクを考慮していないと言う点です。第3に回収期間以降のキャッシュフローを無視していると言う点です。
◎上記のような問題を内包しながら、実務の世界では、単純回収期間法が結構重宝されています。計算が極めて簡単だからです。NPVでの割引率やIRRでのハードルレートの考え方は、理論的には正しいものの、いざやってみると、「いったい何%にしたらいいんだろう?」と言う終わりのない議論が続くことになります。陳腐化も早いため、3年位の短期間のうちに投資金額を回収したいと言う事情があります。投資するからには、3年以内に回収すると言う単純明快な判断基準で投資実行の可否を決めたほうが楽だったのです。
・ファイナンス戦略の目的は、企業価値の最大化にあると言う原理原則に立ち返ると、投資の意思決定は、NPVやIRRで判断すべきであり、単純回収期間法は、あくまでも参考指標に留めておくべき。
・フリーキャッシュフローの予想期間について、明確に5年とか10年といった模範解答があるわけではありません。実務上は、業績が成長期から安定期に入るところまでを見積もるのが望ましいとされています。割引率は有利子負債コストと株主資本コストの加重平均資本コストであるWACCを使用します。
◎投資家の期待リターン(割引率)が大きいほど、現在価値は小さくなります。
・キャピタルゲインが資本コストになると言う説明は少しわかりにくいかもしれませんが、投資家が企業に期待するキャピタルゲインを、企業側の資本コストして理解するためには、機会費用と言う概念で考える必要があります。
・A社と言う会社の株に投資する際、国債やB社と言う他の会社の株に投資することによって得られるであろう期待リターンを犠牲にしているわけです。これが機会費用の概念です。
・企業は、有利子負債と株主資本を組み合わせて資金を調達していますので、企業にとっての資本コストは、有利子負債と株主資本の組み合わせ(資本構成)を反映して、有利子負債資本コストと株主資本コストの加重平均(WACC)で決まります。※計算式は複雑なため省略
・株主資本コストは、キャップエムで求められる。
株主資本コスト=リスクフリーレート+β×マーケットリスクプレミアム
・リスクフリーレートとは文字通り、「リスクのない投資に対する期待リターン」ですから、すなわち、国債の利回りと言うことになります。
・マーケットリスクプレミアムは「株式市場が国債と比べて、どれだけ高いリターンを期待できるか」を示した値です。日本の場合、過去30〜40年ほどの統計データによるとおおむね5%程度となっています。
・データは、株式市場全体に比べてどれだけのリスクが高いかを示している。
・株主資本コスト(つまり株主の期待リターン)は6%と計算できます。少し幅を持たせて5〜7%と思っておけば良いのです。
・事業価値を算出するために、将来10年間のフリーキャッシュフローを予想すると言う場合、11年目以降のフリーキャッシュフローの現在、価値については、永久成長モデルと言う考え方でターミナルバリューを計算するのが一般的です。
・永久成長率を何%にするかと言う点は、コーポレートファイナンスの現場でも議論になる論点ですが、通常は、中長期の物価上昇率と同程度に設定されます。(日本企業の場合は0%から1%で考えれば良いでしょう。)
・キャッシュは、株主より銀行から調達したほうがお得。
・企業はWACCを下げることによって、企業価値を向上させることができます。(割引率が低いほど、現在価値は高くなります)。したがって、WACCを下げるためには、株主資本でキャッシュを調達するより、有利子負債でキャッシュを調達したほうがお得なのです。
・有利子負債の節税効果。金利は税引き前の利益から支払われるのに対して、配当は税引き後の利益から支払われるのです。金利は税務上損金に算入されるため、その分だけ節税効果がありますから、100と言う同じ金額の配当を支払う場合と比較して実行税率を40%とした場合、金利に実行税率をかけた。40 (= 100 × 40%)だけキャッシュが浮くことになります。
・借り入れによる方がキャッシュフロー上有利になる。
・経営者が企業価値を向上させようと思ったら、フリーキャッシュフローを大きくすれば良いわけです。もう一つの方法は、割引率であるWACCを下げることです。有利子負債の株主資本に対する割合を負債比率またはD/Eレシオと呼んでいますが、WACCを下げるためには、資本コストの高い株主資本を減らして、資本コストの低い有利子負債を増やす、つまりD/Eレシオ高めればいいわけです。財務レバレッジを効かせるといいます。
・ただし、実際は有利子、負債への依存度が高くなりすぎると、返済や利払いができなくなり、倒産する確率が高まり、資本コストの上昇を通じてWACCが高くなります
・事業価値を求めるプロセスは、
①予想フリーキャッシュフローを算出する。
②割引率(WACC)を設定する。
③ターミナルバリューを求める。
・実際の企業実務の現場では、WACCで計算される割引率にバッファとして、数%を上乗せした数値を割引率(ハードルレート)として用いることが多いといえます。DCFで求められる事業価値は、ターミナルバリューが占めるウェイトが非常に高くなっています。
・最適資本構成とは、負債と株式の最適バランスのことであり、資金調達コストが最も安いポイントです。
実際はこの最適資本構成を実現している企業はほとんどありません。多くの企業は、最適資本構成よりも少し左側にしています、突然景気が悪くなって、資金調達環境が悪くなったりしたときに困るからです。
・借入余力をある程度キープしつつ、ある程度WACCの低下も実現すると言う企業が多い。
◎PLをシンプルなボックスに変換するだけで、企業の儲けの全体像を俯瞰できる。売上、原価、粗利に関するデータさえあれば、それらをほんのちょっと加工するだけで利益を増やしてキャッシュフローを改善する施策を導いてくれます。ROAやROICを用いて収益性と生産性を分析することによって、企業がキャッシュフローを改善するために、明日からやるべきことを明らかにしてくれます。
続きを読む投稿日:2023.10.24
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