この作品のレビュー
平均 4.2 (98件のレビュー)
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尊敬している精神科医の泉谷閑示さんの本。
日頃から人間を徹底的に見つめ、深く洞察されている結晶が、沢山書かれていた。
特にまえがき、第二講、四講はハッとさせられた。
第2項の、パブリックな言葉と内的…な言葉について。個人的に、言葉に対するこだわりが割とある方なので、独自の意味を帯びさせてしまっているきらいがある。そんな内的な言葉を、時々そう親しくない人にも使ってしまうことがたまにある。ゆっくりと話して、その言葉について説明できるときは良いのだが、そううまくはいかないので、相手に誤解されたまま、ときには失礼にあたるまま会話を終えることになり、確かに内的な言葉を使う時や場所、相手を考えなければいけないなと反省した。
そして、この2つの側面のある言葉の使い分けをうまくできなくなっているという指摘は、現代をとてもよく表してるなと思った。
覚えておきたいことが多すぎる。でも、忘れてしまうので、備忘録として…
まえがき
人間の特性を理解し、その上で「自分で感じ、自分で考える」という基本に支えられた生き方を回復しなければいけない。
正常と異常の境界線上にあるような視点や言葉が今の時代では失われている。
鬱が治るとは、実際は、「あるべき悩みを悩むようになること」
第二講
言葉には、(内的言語:自分の内側を把握するのにも使われる)と(公共性を持つ言葉)の二つの側面がある。この2つの使い分けができない人が増えてきた。それは、自分と他者が違う内界を持ち、違う価値観で、言葉1つにも自分とは違う意味合いを載せているかもしれないということが想像できないから。
この想像は、自分はこう感じるが、この子はどう感じるか?など、丁寧に観察し、擦り合わせが行われるなど、子育てにも役に立つ。
第四講
『エミール』ルソーより
子供につけさせなければならないただ一つの習慣は、どんな習慣にも染まないという習慣です
お腹が空いていないのに、習慣で3度食事を取る、天候やホルモンなどにより体調は変わるのに、毎日同じ時間に起き寝るなどの習慣は、本来の体の声を聞いていない。
自己形成のイメージ、
あるべき自分になるように足りないところを身につける(粘土や石膏をくっつけていくイメージ)
ではなく、
本来の自分を削り出す(彫刻のイメージ)
をすると良い。
第5講
心由来の深い感情の場合は、それを大切にし、頭由来(しかも心由来のように見せかけている)の場合は、それに振り回されないようにする必要がある。
意識と無意識の間には、浅いところから怒・悲・喜・楽の順に感情の井戸があり、古い怒りから吐き出していかなければ、その先にある本当の楽は発せられない。
三様の変化
駱駝(従順さ、忍耐、努力、勤勉さ)
→獅子(窮屈であることに気づき、怒りが爆発し、1人称の自分の誕生)
→小児(全てあるがままに。創造的な遊びに没頭する)
第六講
角を矯めて、牛を殺す(少しの欠点を直そうとして、かえって全体をダメにしてしまう)
欲望を大欲(より深く本質的な魂の満足に向かうこと)に膨らませていくことにより愛になる。
第七講
絶望とは、残していた一抹の期待をきちんと捨てることである。しっかり執着を断つことによって、真の絶望が訪れ、自由に解放されていく。
繊細で神経質な人が感じていることを、感じないようにすることはできない。無理にやれば離人症になる。
ガラス細工のような壊れやすい純粋さから、螺旋状にグレードアップしながら変化成熟していき、強化ガラスのような強さと純粋さを手に入れる。
第八講
森有正の経験と体験の考え方。
「苦労が身になる人」と「苦労が勲章になる人」の違い。
第九講
すべての良い仕事の核には、震える弱いアンテナが隠されている
第十講
人生の目的を考える→あるところから先へ行くと、目的や目標というものは、ある種の導入に過ぎなかったことがわかる。→目的に向かって、生きることの貧しさや窮屈さもわかってくる→何か大きな流れが私たちを運んでいると感じられてくる。
つまり、自分らしく生きることを追いかけていくうちに、主語の(自分)が消え、天命とでも言うべき、大きな力が自分を動かし生きていることに気づく。
[十牛図]禅の考え
ある者が、牛(本当の自分)を探し、手なづけ、遊び、また牛(牛と自分:本当の自分とそれまでの偽りの自分)はいなくなり、無になり、自然の一部としてあるがままになり、仙人のように暮らし、また人里に下りて、若者に会い、その若者に影響与え、若者がまた牛を探すようになる。続きを読む投稿日:2024.03.10
理性、理知的、論理的など、ある意味では美徳とされる感性に警鐘を鳴らす本書。
普通とは何か、普通に疑問を持たずに生きていないか、自分の生き方を省みる機会となった。
獅子的な生き方の先に行ってみたいと思っ…た。続きを読む投稿日:2024.04.08
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