この作品のレビュー
平均 4.1 (10件のレビュー)
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とにかく受験も就職も超競争社会の韓国。なにもかも極端で、国のマーケットが小さいからとにかく外へ外へって感じ。でも筆者はこんな社会のひずみを認めつつ、なんか共感している。
個人的に感じるのは、なんか余裕…がないのが韓国。常に走り続けているイメージだなあ。かごの中のハツカネズミみたい。ある意味、サブカルチャーが生まれにくいのかなって気がする。ピッチャーで言うとひたすら直球勝負でストレートに磨きをかけている。いやまあ、カーブとフォークくらいはありそうだけど配球とかは適当そうだ。
韓国の勢いを認めつつも、なんか違うだろうって思ってしまうなあ。社会がまだ落ち着いていないというか、形になっていない気がするけど、日本が逆に落ち着き過ぎたのだろうか。続きを読む投稿日:2013.04.15
韓国好きの端くれとして10年強韓国に行ったり韓国人とつき合っていて思うのは、かの国のほうがグローバルナイズされているのではないかってこと。ガラパゴス化した日本の人々が何となく後進だと思っている韓国だけ…ど、日本が「韓国はまだ追いつけない」と思っている横を進み、別の道を先へ先へと進んでいるんじゃないかと感じることがある。そんな感覚が現実的であることを示すような一冊。
韓国を評する本って、「この面では進んでいるけど、全体から見ると日本には、あるいは世界標準にはまだ至っていない」的な論調のものが多い感じがするんだけど、その点この本はひとまず率直に人材育成に向けた取り組みにおける韓国の先進性を認め、受け入れたり倣うことを説いている点で、漢江……判官びいきの自分としては胸の空く読後感。
実は自分も「韓国人は一人ひとりは高学歴でパフォーマンスも高いけど、個人主義的傾向が強く集団になると力が発揮できない」といった、いわばステレオタイプな見方が半ばうなずけると思ってきたんだけど、「韓国の人材の特徴として、リーダーシップを尊重し、戦略性を強く志向することは特記してよいだろう。」(p.74)といった記述をはじめ、この本を読むと、かつてはともかく今の韓国はそうではないみたい。その転換点となったのは、1997年のIMF危機を受けてのこと。昇り調子をくじかれた韓国はこのときやその後のワールドカップを通して一体化することを身につけたと。つまり、ほんの20数年ほどの蓄積であり、もともとの国民性とかでなく後天的に取り入れ適応しつつあるものだというのは、認識があらためられた点。これを知ったことで、ステレオタイプ的な国民性にも変遷があるという認識になるし、たとえばノーベル賞受賞者の輩出のように、成果が目に見えるかたちで出るにはもう少し時間が必要だろう。
一方で、古来の韓国的な文化が人材育成や発展を障害してきたという見方も述べていて、これも面白い。それは儒教的精神に基づく朱子学の発達で性理学が重視される一方、実学は賤視されてきたというもの。実学軽視はおそらく近代発展のなかで改められてきただろうし、一方で性理学的な物事の理を突き詰める考えの伝統があるということは、考えようによっては物事を根源から生み出すことができるということでは。それはつまり革新・イノベーション向きともいえる。古来からの理を重視する考え方と、ここ20数年の変革が組み合わせれば、韓国のパフォーマンスってかなりすごいことになりそうな気がする。
この本では、人材育成の実践の数々も紹介されていて、特に小学校から大学・大学院までの教育機関を舞台に数々の取り組みがなされているのが印象的。ときどきの施策に振り回される弊害もあるだろうけど、果敢に新しいものに取り組み実行していくダイナミックさは韓国の強み。若者の就業難や中高年の名誉退職のような過酷さもあり、書中でも自殺率の高さが指摘されていたりするが、とにかく手を打とうとしているのはこの国のおかれた立場(国内市場が狭いこととか)が反映された必死ともいえるもので、自分は好感をもつ。この本は2013年の本なので、現代といいながら韓国的な感覚ではだいぶ昔。きっとその後7~8年でだいぶ進んでいることだろう。
この本では、かつて日本が隆盛を誇った1980年代に、アメリカが日本を見習って様々な取り組みをしたことも紹介している。かつての敗戦国で自分たちが援助した国から学ばないといけないって屈辱的だけど、それを乗り越えないと未来はないとアメリカは判断したってこと。翻って、嫌韓的な発言がそこかしこで見聞され、しかも近年その程度が増しているような日本はそういう振る舞いができるかな。できないでガラパゴスのまま退化していったりして。続きを読む投稿日:2021.01.10
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