宇宙は本当にひとつなのか
村山斉(著)
/ブルーバックス
作品情報
最新の理論と実験から迫る全く新しい宇宙観。宇宙の90パーセント以上は得体の知れない暗黒物質と暗黒エネルギーからできている。その正体を探っていくと多くの次元と宇宙が見え隠れしているというのだ。急展開を見せる宇宙の最前線をふまえて「宇宙とは何か」を問い直す最新宇宙論入門。(ブルーバックス・2011年7月刊)
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商品情報
- シリーズ
- 宇宙は本当にひとつなのか
- 著者
- 村山斉
- ジャンル
- サイエンス・テクノロジー - 数学・物理学・化学
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- ブルーバックス
- 書籍発売日
- 2011.07.20
- Reader Store発売日
- 2013.02.08
- ファイルサイズ
- 3MB
- ページ数
- 208ページ
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この作品のレビュー
平均 4.0 (98件のレビュー)
-
中国の故事に杞憂というのがある。空が落ちてこないかを心配する男を笑う話だが、この杞憂を真面目に考えている学問がある。それが理論物理学者の考える宇宙に関する理論である。この分野の学問では、宇宙の始まり…から、今後の運命までを理論的に解明しようとする。
近年、宇宙にはまだ人間がその本質を理解しえていない暗黒物質なるもがあることが分かってきたと言う。暗黒というだけにそれは何もないのではなく、確かにあるのだが分からないものなのだ。この存在を認めると宇宙のさまざまな現象が理解できると言うのだ。
さらに興味深いのは本書のタイトルにもなっている多元宇宙論だ。宇宙は10次元の世界からできており、宇宙はその発生の際はさまざまな可能性をもって生み出されていく、しかし3次元空間を保つことができる可能性のある宇宙はかなり限られている。私たちがいる宇宙のようなものが他にもいくつも生み出されている可能性はあるのであり、実は宇宙は一つではないというのである。
理論の積み重ねからできた摩訶不思議な話であるが、どれもが真剣に研究されている結果でありSFではないのが面白い。
本書はサブタイトルに「最新宇宙論入門」とあるように一般に向けた啓蒙書であるが、あとがきにこの分野の学問をミュージシャンにたとえ、学問が好きになればどれだけでも学問に打ち込めブレークスルーの機会も生まれるだろうし、自分が学者でなくとも、この分野へ関心をもつ人が増えれば研究者にもやりがいが生まれ、よりたかい研究心を持つことができるだろうといったことが書かれている。
確かに本書はきわめて分かりやすく書かれているとはいえ、肝心な点が直感的に理解できない。何を言っているのか本当に理解できないうちに、それを前提とした理論がさらに積み重なっていく感じがどうしても否めないのである。別の言い方をすれば、それこそがこの分野の特徴であり、魅力なのかもしれない。続きを読む投稿日:2011.08.14
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村山 斉
(むらやま・ひとし)
1964年東京生まれ。東京大学国際高等研究所数物連携宇宙研究機構(IPMU)の 初代機構長、特任教授。米国カリフォルニア大学バークレー校物理教室教授。 199…1年、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。理学博士。東北大学大学院理学研究科物理学科助手、ローレンス・バークレー国立研究所研究員、カリフォルニア大学バークレー校物理学科助教授、准教授を経て、同大学物理学科MacAdams冠教授。米国プリンストン高等研究所メンバー(03~04年)。2007年10月より現職。専門は素粒子物理学。2002年、西宮湯川記念賞受賞。素粒子理論におけるリーダーであり、基礎科学分野における若き指導者の一人でもある。
原子一つの大きさは一億分の一センチメートル程度で人間の感覚ではとてもとらえられないような小さな粒子である。例えば五〇グラムの鉄の中に含まれている鉄という名の原子の数は約一の後にゼロが二三個付く数()である。このように我々が日常生活で接する物質は膨大な数の原子からできているのである。
しかし鉄に限らずどんな種類の原子を取ってみても、一つ一つの原子は構造を持っており、原子の中心には原子核というさらに小さなしかも重い核があり、その核の周りに電子と呼ばれる軽い粒子が回っている。ちょうど我が太陽系を思い起こしてみるとよい。太陽系では太陽が中心であり(太陽系の核)、太陽の周りに水星、金星、地球、火星などの惑星が回っている。太陽系ではその核を成す太陽が最も重い。すなわち太陽が原子核に匹敵し、惑星が電子に匹敵する。
当然原子核は原子よりも小さく、原子核の大きさは一〇兆分の一センチメートル程度である。原子と原子核は言葉上混同されやすいので、以後、原子の中心を成す原子核のことを単に「核」と呼ぶことにするが、必要に応じて原子核と呼ぶときもある。原子爆弾が爆発するのはこの核が爆発を起こすのである。したがってより正確には原子爆弾は核爆弾と称されるべきであろう。
当時、科学と言えばドイツとうたわれていたくらいにドイツの科学は世界一を誇っていた。そして核分裂はそのドイツで発見されている。第二次世界大戦前までは日本に限らずアメリカでさえも、物理学に限らず科学を志す若者たちの多くはドイツに留学していたのである。原子爆弾の構想が出てきた以上、ドイツは間違いなく原子爆弾開発に乗り出すであろうことは容易に推測できたし、またドイツはそれを可能ならしめるような国であることもわかっていた。イギリスやアメリカの科学者達は、アメリカがヨーロッパ戦に参戦する以前から、ドイツの原子爆弾開発を懸念している。
マイトナーの父はウィーンで弁護士をしており、彼女はなに不自由ない少女時代を過ごした。数学や物理に対する娘の秀でた能力に気づいた彼女の父は、早くから彼女に家庭教師を付けて大学に入る準備をさせた。当時女性が大学に入ることじたい大変なことであった。しかし彼女は難なく入学試験に合格し、ウィーン大学に入学した。向学心に燃えていたマイトナーはできる限り多くの講義に出席したが、どのクラスも女子学生は彼女一人であった。ある教授の強い勧めもあって彼女は物理学を専攻することになった。当時、ウィーン大学は創立以来五四一年間の長い歴史中わずか一四人の女性にしか博士号を授与しておらず、しかも物理学の分野では一人として女性に博士号が授与されていなかった。一九〇六年、マイトナーが二七歳のとき、その物理学の分野で彼女に博士号が授与されたのである。当時ドイツにはマックス・プランクという物理学者がいた。プランクは後に 黒体輻射 理論を打ち立て、結局それが量子力学というまったく新しい物理学を生み出す結果となり、その業績によりプランクは一九一八年にノーベル賞を受賞することになる。マイトナーがウィーン大学で博士号を取得した頃、ベルリンでプランクは一連の講義を担当していた。内気ではあったが人一倍向学心の強いマイトナーは両親の反対を押し切って、女一人、プランクの講義を受講するためウィーンからベルリンに出向いる。
さてアインシュタインのもっとも有名な式 E = mc 2 において E はエネルギーを表し、 m は物体の質量を、 c は真空中での光のスピードを表す。真空中での光の速度( c の値)は秒速三〇万キロメートル(時速ではない!)である。地球の赤道にそって光が走行することを考えた場合、光の走行距離は一秒間に赤道の周りを七回り半する。この赤道の周り七回り半の距離がちょうど三〇万キロメートルである。これが光の秒速である。エネルギー E はすべての種類のエネルギーを表す。 E は熱エネルギーであるかもしれないし、運動エネルギーであるかもしれい。
その頃、フランス人科学者ピエール・キュリーに嫁いでいたポーランド人のマリー(ポーランド語ではマーヤ)はこのミステリアスな放射線に異常な興味を抱いた。夫のピエールはすでにピエゾ効果の発見者として有名になっていた。結晶をギューッと押して圧力を与えるとその結晶に電圧が現れ、逆に結晶に電圧をかけてやると結晶の形は変わり歪むのである。これがピエゾ効果である。ピエール・キュリーはこのピエゾ効果を利用して電位計、エレクトロメーターを考案した。マリー(キュリー夫人)はこの電位計を用いてウランから出てくる放射線を測定し、放射線の実在を確かめたのである。いちいちフィルムを感光させて放射線の有無を確かめるよりも電位計を用いたほうがより正確で手っ取り早い。この電位計を用いる方法によりマリーは、さらにウランだけでなくトリウム元素からも同じような放射線が出ていることを突き止める。
放射能に侵されていた晩年のキュリー夫人は手の指は曲がったままになり、目はほとんど見えなくなっていた。「暴いてはいけない自然を暴いてしまった神のたたりなのかしら?」と言ったことがあるマダム・キュリーは、一九三四年、白血病のため六七歳の生涯を閉じる。
ただ中性子は電気的に中性であるという点ではガンマ光子と同じである。ガンマ線を中性子線(中性子群の流れ)に置き換えてみると、右に掲げた二つの奇妙な点は完全に取り除かれることがわかったのである。
ニュートリノの存在の予言はオーストリアの物理学者ヴォルフガング・パウリによってなされている。続きを読む投稿日:2023.09.27
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