対立の炎にとどまる――自他のあらゆる側面と向き合い、未来を共に変えるエルダーシップ
アーノルド・ミンデル(著)
,松村憲(訳)
,西田徹(訳)
,バランスト・グロース・コンサルティング株式会社(監訳)
/英治出版
作品情報
怒りの渦中にこそ
新しい対話が生まれる
旧ソ連諸国の民族紛争、日本企業におけるジェンダー格差、職場の人間関係……。
自分と相手の奥底にある感情に耳を傾け、あらゆる対立の場に変容をもたらす「ワールドワーク」の実践書。
世界のリーダー/ファシリテーターから支持される名著、完訳復刊!
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この作品のレビュー
平均 3.3 (3件のレビュー)
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冒頭から「ワールドワーク」「エルダーシップ」「アウェアネス」など聞き慣れないカタカナ用語が雪崩のように出てくるので頭を抱えてしまった。自己啓発本の類を読むといつも思うけれど、こういう独自に意味を付与…された用語を使うことなく内容を説明することは本当にできないものなのだろうか…何が言いたいのか全然頭に入ってこないよ…
とは言え中盤以降、少しずつ用語に慣れてくるにしたがって徐々に内容を掴めるようになってくる。まず本書で語られる「ワールドワーク」という試み。対立や衝突が起こったとき、それを直ちに止めたり仲裁したりしようとするのではなく、その只中(「ホットスポット」と呼ばれる)に敢えてとどまることで新たな対話が生まれ、和解や相互理解が可能になるという考え方だ。日常会話というよりは政治的な集会やカウンセリングなどの場において、さらに当事者同士ではなく第三者的な立場にいる人間にとって重要となる概念のように思えた。
127ページあたりの「消極的な復讐心」について書かれている章も非常に興味深かった。共感の嵐。ただここも、自身の復讐心にどう対応するかという視点ではなく、復讐心を抱えた人と対峙したとき「ワールドワーカー」としてどのように振る舞うべきかという視点で進んでいくので、自分の問題を解決したいと思って読んでいくと思ったような答えは得られず、やきもきしてしまうかも。わたしは立派な「ワールドワーカー」となって人々や世界の問題を解決するより先に、立派な「ワールドワーカー」と出会って自分の問題を解決したい…傷付けられたときに涙を堪えて笑って誤魔化したり何事もなかったように振る舞ったりすることが子どもの頃から癖になってしまっていて(だって「パワー」を持った相手を前にしてそうし続けるしかなかったから)、大人になった今もまさに「消極的な復讐心」に囚われている日々なのよ…つらい。
第七章は虐待についての章。虐待被害者と対話する際のステップが示されていて、読みながら著者と対話しているような、話を聞いてもらっているような気分になった。子どもの頃のことを思い出すのは辛いし、いまだにベッドに入っても何時間も眠れなくて苦しくなる夜もあるけれど、そういう話、誰かにちゃんと聞いてもらったことないなあ。恥ずかしい記憶を思い出すこと自体が苦痛だから蓋をする。だからいつまで経っても当時の屈辱が薄れずに残り続ける。
この本を読みながら一番強く思ったのは、ここでは何を言っても泣いても喚いてもいいですよという場所が欲しい、ということ。長年、抑圧続けてきた自分の怒りやネガティヴな感情と心ゆくまで向き合って吐き出して楽になりたい。カウンセリングでも行こうかな。誰かに、わたしが話し終わるまで否定せず批判せず論破しようとせず何も言わずじっとそばで聞いていてほしい。でもそれと同時に、誰かにとって自分がそういう存在になれたらもしかするとその人の救いになれるのかもしれないとも思った。きっとすごく難しいけれどそれができたら自分にとってもすごくプラスになるような気がした。続きを読む投稿日:2023.01.10
対立を解決しようとするのではなく、そこから学び、なるがままに任せるエルダーシップ。対立は解決するべき問題ではなく理解するべき現象である、というNVCやミディエーションの考え方にも近いのかなぁと思った。…
また自分のあり方、ランクという言い方をしているけれどもその場における影響について自覚的であれ、というメッセージも響いた。続きを読む投稿日:2024.01.04
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