わたしが消える

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  佐野広実『わたしが消える』講談社文庫。
  
  第66回江戸川乱歩賞受賞作。受賞作の前日譚になる短編『春の旅』を併録。
  
  社会派ミステリー小説。
  
  非常に面白かった。ブクログの評価は僅かに星1つとなっており…、読むのに不安があったが、数年に一度のミステリー小説と言っても過言ではない。
  
  『わたしが消える』。
  
  第一章を読んだ限りでは、主人公の元刑事の藤巻が認知症の一歩手前という状態の中、身元不明者の正体を調査する話かと思ったら、第二章の急展開に驚いた。そして、たどり着いた驚愕の真実。認知症により自分を失うことへの危惧と自分自身の存在を失った男の数奇な運命。
  
  元刑事でマンションの管理人を務める61歳の藤巻は自転車で交通事故に遭い、病院で脳の検査を行ったところ、軽度認知障碍の症状が出ていたことを知り、愕然とする。
  
  1年以内に認知症を発症する可能性に不安を感じる藤巻だったが、離婚した妻は既に亡くなり、18年前に別れ、大学生になった娘にも迷惑を掛けられぬ状況だった。
  
  しかし、娘の方から藤巻にとある相談を持ち掛けて来た。大学の介護実習で通っている施設に施設の門の前に置き去りにされていたことから『門前さん』と呼ばれる認知症で身元不明の老人がおり、老人の身元を突き止めて欲しいと言うのだ。
  
  藤巻に残された僅かな時間。刻一刻と現れる認知障碍の症状と闘いながら調査を続ける藤巻は『門前さん』を置き去りにした老女を発見し、『門前さん』の過去に隠された恐るべき真実に近付いていく。
  
  ★★★★★
  
  『春の旅』。
  
  『わたしが消える』の前日譚。藤巻が離婚して別れた娘と再び距離が縮まる前の心暖まるエピソードが綴られる。
  
  別れたとしても、父親と娘の関係は永遠に変わらない。
  
  ★★★★
  
  本体価格880円
  ★★★★★続きを読む

  投稿日：2022.09.27

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  てら*

  静かなミステリと思ってたら、読み進むにつれ広まり絡まる展開に引き込まれてしまった。
  "クルーカット"の通称とか、渋いんだけど、ちょっとくすぐる感じもすごく好き。
  
  最後に残される記憶、私は何だろうな。…
  それを不安だと考えてしまう"門前さん"の生きてきた日々を思うと、心がきゅーっとなった。続きを読む

  投稿日：2023.03.18

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