髪追い 古道具屋 皆塵堂
輪渡颯介(著)
/講談社文庫
作品情報
遊び人の茂として、ふらふらしていた茂蔵も、巳之助の弟分におさまり、小間物屋・大黒屋で真面目に働いている。その茂蔵が花見の後、酔った勢いで祠の戸を開けて、紐で固く結ばれていた箱を開けてしまう。箱の中にあったのは女の長い髪。するすると伸びて、茂蔵の足に触れたとたん、大音響が響き渡った。逃げるように立ち去った茂蔵は、翌朝、帳場の観音像が真っ二つに割れているのを見つける。観音像が身代わりになってくれたのか。幽霊が見える太一郎によると、「封じ込めている」ものを茂蔵が開けてしまったらしい。祠の場所には昔、三十年前に焼け落ちた履物問屋備前屋の寮があった。今の主の徳五郎によると、先代はかなり悪辣で、借金漬けにして潰した下田屋から寮を強奪したらしい。下田屋の亭主は行方知れず、一人娘も病で失ったお此という不幸なおかみさんが失意の末に自害して、長い髪を残したというのだ。茂蔵が開けてしまったのは、備前屋が封印したお此の髪だった。この世に怨みを残すお此を太一郎や茂蔵は救えるのか? 人気シリーズ第九弾!
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商品情報
- シリーズ
- 髪追い 古道具屋 皆塵堂
- 著者
- 輪渡颯介
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- 講談社文庫
- 書籍発売日
- 2022.04.15
- Reader Store発売日
- 2022.04.15
- ファイルサイズ
- 4.6MB
- ページ数
- 304ページ
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この作品のレビュー
平均 3.8 (10件のレビュー)
-
曰く品が集まる古道具屋皆塵堂シリーズ第9作。
あとがきにある通り、シリーズが『しれっと』再開してからは第二作となる。
今回はいつもと趣向を変えて、新規の登場人物はなし。
元遊び人の茂蔵が酔った勢いで…祠にある木箱を開けると、中には長い髪の毛の束があり、それが襲って来た。慌てて元に戻し逃げ帰るも、翌朝祠からは木箱が消えている。
ホラー部分は怖いのだが、それを上回るコメディ要素とテンポの良さで楽しく読める。
最初、茂蔵と円九郎がごっちゃになっていた。二人とも小者感たっぷりだし『巳之助に逆らえない男』なのだが、茂蔵は聞き込みは上手くやっているしチーム皆塵堂に上手く溶け込んでいる。ちょっと外して巳之助に睨まれたり殴られそうになることもあるが、そこはご愛敬。
巳之助といえば、相変わらず猫好きは変態レベル。猫好きネットワークはますます拡がり、巳之助が知らない人は猫好きではないか、江戸にいないかのどちらかというほど。
そして巳之助が毎年楽しみにしている猫の赤ちゃん誕生の季節が近付き落ち着かない。
逆にそれを地獄のように恐れているのは巳之助の幼馴染みで銀杏屋若旦那の太一郎。こちらも相変わらず猫が苦手なのに猫には異常に懐かれている。
一方で彼の、幽霊やその手の物を見る力は更に強くなっているように見える。死神に憑かれた青年を『祟り婿』で出てきた曰く品で作ったもので救うという新しい技も見せている。
峰吉はいつも通り異常な五感と商売魂とシニカルさを見せているが、珍しく店主・伊平次に買付をやらせてくれと頼んでいて、彼も出世欲があったのだなと安心する。
また伊平次も怠け者の釣り好きではない顔を少し見せている。ご隠居の清左衛門は店番にお財布にと良いように使われているようで最後は上手く締めていた。
肝心のホラー部分については太一郎と同じように見守るのみ。むしろ髪の毛の思いを遂げさせてやりたい気分だった。
茂蔵が何故巻き込まれたのかは後に分かるが、そのせいで茂蔵は『けちな遊び人』ではなく『一段上の遊び人』を目指すことに。根が小者の茂蔵に出来るかどうかは分からないが、身近に目標が見つかったようだ。
再びあとがきにて、猫増えすぎ問題は作家さんも反省しているようだ。太一郎が猫に押し潰されないためにも、少しは抑えてくれるとありがたい。続きを読む投稿日:2022.07.03
このレビューはネタバレを含みます
本作では新しい登場人物はなく,皆塵堂に居候することになるのは巳之助の弟分,茂蔵である。
レビューの続きを読む
「朽ち祠」
茂蔵が以前の遊び仲間との花見の宴の帰り道,ほろ酔い気分で歩いていたところ奇妙な祠を見つけて,つい扉を…開けて,御神体が入っていると思われる箱を開けてしまう。するとそこから女の髪の毛らしきものが飛び出して茂蔵を襲った。「パキッ」という音とともに攻撃が止むと,髪の毛は自ら箱に戻ったので,茂蔵は蓋をしてしっかり紐で縛って祠に戻した。
しかし髪が箱から出たときの不穏な気配を遠くで太一郎が察知していた。
「髪絡み」
翌日再び祠を訪れると,箱が消えてしまっていた。皆塵堂チームは箱探しを始める。茂蔵はことの発端を作った責任から箱探しに加わることになり,その間皆塵堂に居候することになった。
太一郎が気配を感じた店に行ってみると,店主の八べえが梯子から落ちたところだった。その時足に黒いものが絡みついているという証言が出ていた。八兵衛はその後死亡し,葬儀が終わってから訪ねて箱のことを尋ねると捨ててしまったという。捨てられたゴミはすでにそこにはなかった。
「死神憑き」
太一郎が気配を感じた戸倉屋に古道具の買い取りを装い訪ねてみると逆に相談を持ちかけられてしまう。跡取り息子が死神にとりつかれたようで,自殺を図ったり死にたがっているという。息子の件を解決するのと引き換えに戸倉屋からなんでも譲ってもらえるということになる。皆塵堂チームはそれぞれ息子・喜三郎に生きる気力が湧きそうなものを持ち寄ることにする。巳之助はうまい魚,峰吉は高さの違う枕をたくさん,茂蔵は大量の枕絵を持ち寄った。そして太一郎は連助の件で宮越が折った刀から作ったという小刀を渡す。それで自殺を図ったらどうするんだという周囲の心配も気にする様子はない。
「髪つき首」
茂蔵はひとりではこの行方を追ってとある道具屋を訪れる。すると,箱は確かにあったが売れてしまったという。買った男の話を聞いて追いかける。次のところでもすでに転売されており,「八助」という男が買っていったらしい。その名前に危ういものを感じるが,緊急性があると思い一人で八助の家に向かうと...。
「花の祠」
太一郎は箱の最後のターゲットと思われる店を訪ねる。続きを読む投稿日:2023.05.08
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