世界史のなかの蒙古襲来 モンゴルから見た高麗と日本
宮脇淳子(著者)
/扶桑社BOOKS新書
作品情報
2019年6月刊行の同名単行本を加筆修正。待望の新書化!著者による「対馬・福岡」元寇史跡レポートを収録。
<蒙古襲来>──海を渡ってやって来たのは本当にモンゴル人だったのか!?
日本とモンゴルとの関係といえば、誰もが知っている鎌倉時代の「蒙古襲来」すなわち元寇。元という国のモンゴル人が攻めてきたという前提で語られる国難です。二度とも水際で追い返すことができたので「神風が吹いた」「鎌倉武士が強かった」「元軍の矢が尽きた」など、その勝因が盛んに論じられてきました。
他方、大陸側ではどう語られているでしょうか。当のフビライ・ハーンにとっては「辺境のエピソードの一つにしかすぎない」(著者)うえに、いまどきのモンゴル人では、近年まで学校で教えられてもいなかったとか。
では、元はなぜ日本征討に来たのか。
「モンゴル人が主になって攻めてきたものではなかったという視点をもつことが必要」という著者の指摘に、当初の固定観念からまず解き放たれます。
元朝には当然、モンゴル人はいましたが、元の直轄地だった高麗の軍が、日本への嚮導役をさせられたことは、近年の研究により知られています。加えて、日本遠征の総司令官はモンゴル人の可能性が極めて低く、副司令官も高麗人、漢人、南宋人などで構成されていて「そこにモンゴル人はほとんどいなかった」という著者の見解には衝撃を受けるでしょう。
本書では、モンゴル史を専門とする著者が、『元史』や『高麗史』などの一次資料を紐解きながら、壮大な世界史の視点で「蒙古襲来」を再検証。歴史好きを飽きさせない一冊です。
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商品情報
- 著者
- 宮脇淳子
- 出版社
- 扶桑社
- 掲載誌・レーベル
- 扶桑社BOOKS新書
- 書籍発売日
- 2021.12.22
- Reader Store発売日
- 2022.01.07
- ファイルサイズ
- 13MB
- ページ数
- 304ページ
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この作品のレビュー
平均 3.5 (2件のレビュー)
-
島国の日本ですが外国から攻められた有名なものとして、元寇があると思います、蒙古襲来と言われることもあるようですが、この本を読むことで、フビライ=汗が日本へどの程度の興味を持っていたのかがよく分かりまし…た。
遠征軍の構成内容を見ると、フビライの本当の狙い(征服したエリアの兵士を消耗させる等)も見えてきた気がしました。すると、秀吉が晩年に行った二度の朝鮮への出兵も、彼の狙いも見えてきた気がしました。
更には、元寇でかなりの被害を受けた「対馬」の位置付けも再認識できました。将来時間が取れた時に、是非一度訪れて、自分の目で見てみたいと思います。
以下は気になったポイントです。
・シナの歴史でいう五胡十六国「五胡」とは、匈奴・鮮卑・かつ・てい・きょうの5つの遊牧民を指す、5つの遊牧民が16の王国を建てた時代である。鮮卑族が北シナに「北魏」を建て、華北を統一し(439)その時代が終わる。(p66)
・フビライと、その弟のアリク・ブガも同じ母から生まれた兄弟なのに弟は兄に降りて(1264)軟禁されて、2年後に亡くなった。この争いをきっかけに、モンゴル帝国は大きく4つのウルス(国家)に分裂する、フビライ・ハーンの元朝、チンギス・ハーンの長男ジョチの子孫の「黄金のオルド=キプチャクハーン国」、チンギス・ハーンの次男チャガタイの子孫の、チャターン・ハーン国、そして、イル・ハーンである(p89)
・モンゴルは最初から税金さえ徴収できて自分たちが儲かればそれでいい、と思っているので、支配した土地のやり方は伝統を否定して、変えようとしたことはない。その方が摩擦も少なく氾濫も起こらないから、支配地の人々が使う言葉・宗教・税金の徴収の仕方でさえそのままにして、代官を置くだけの「代官制」である(p96)
・史実としては高句麗の成立が一番古く、次に百済、そして新羅が一番遅れて誕生したが「三国史記」では、あたかも三国の中で最初に成立したのかのように書いている。これは作成した金氏が、新羅王国の一族に連なる人だから(p102)
・任那は漢が朝鮮半島から退いた後、南部にできた弁辰12国の後身で、3世紀にも12の城郭都市が連合して弁辰王を戴いていたが、5世紀末になっても共通の加羅王がいた。日本府という字面は、「百済本紀」から「日本書紀」に転載されるときに「和府」が「日本府」に書き直されたのではないか。府とは将軍府のことで、軍団の司令部のこと、また司令官に直属する部隊のことでもある(p103)
・煬帝は漢の武帝に匹敵するような積極性を持つ皇帝で、そのめざましい大事業の1つが今も残る大運河の開鑿である。長江と黄河をつなぐこの大運河のおかげで、江南の物資が隋の首都大興(西安)まで直接運ばれるようになった(p106)
・668年、中大兄皇子が大津で即位して天智天皇が誕生、同時に我が国初の成文法典である「近江令」が制定された、そこで「日本」という国号が初めて採用され、倭国は「日本」と名乗ります(p108)
・第二代執権に就いたのが政子の弟、北条義時である、義時の法名「徳宗(とくそう)」から、北条氏の嫡流が「得宗家」と呼ばれるようになり、多くが得宗家から就任した(p136)
・時宗が連署(副執権、ナンバー2、他の人の署名に連ねて署名するという意味)に就任したとき、異母兄の北条時輔は京都の六波羅探題南方に就く、これは鎌倉幕府の出先機関で、北と南に設けられ、京都にあって公家を監視する役目を担っていた(p142)
・元軍の二回の日本侵攻が敗退したにもかかわらず、フビライ・ハーンは帰国した総司令官、副司令官などの責任者たちを誰も殺していない(p229)
・元軍に負けなかった日本側の私たちこそが「蒙古襲来」は決して、モンゴルが主になって攻めてきたのではなかったという視点を持つことから始めるのが大事である(p235)モンゴルの中央にいたのは、羊を飼って遊牧する草原の人、であるモンゴル人にほとんど関係のないところで行われた遠征である(p237)
・朝鮮半島において、敵対勢力を押しとどめておくのは、朝鮮半島の39度線まででなければダメである、そのあたりまでが沿海州や満州から人間が陸続きで行き来のできる、大陸の文化圏だからである、明治時代の元老たちはそれがわかっていたので、なんとか朝鮮半島を自立させようと日清戦争で清と戦い、北清事変でロシアが満州に居座るようになると、その結果として日露戦争を戦う羽目になった(p241)
2022年2月26日作成続きを読む投稿日:2022.02.26
★3.5というところ。
元寇って、そうだったのかと、よくわかる。
小説に書かれたモンゴルのイメージが、
研究者からしたら違うというのもよくわかる。
元寇のあれこれもよくわかる。
でもね、そこまで「蒼き…狼」にこだわらなくても良いのでは?
今、どれほど井上靖のあの小説が読まれているだろうか?
元寇に興味はあるけれど、私だって読んでいないし、読む気にならない。
そのあたりに、なんだか違和感で減点。続きを読む投稿日:2023.05.12
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