集まる場所が必要だ――孤立を防ぎ、暮らしを守る「開かれた場」の社会学
エリック・クリネンバーグ(著)
,藤原朝子(訳)
/英治出版
作品情報
ここでは、誰にも居場所がある。
高齢者がゲームに熱狂する図書館、
親どうしのつながりを育む学校、
子どもがスポーツを楽しむ警察署…
あらゆる人が受け入れられる「社会的インフラ」では
何が行われ、何が生まれているのか。
1995年のシカゴ熱波で生死を分けた要因に社会的孤立があることを突き止めた著者。
つながりを育み、私たちの暮らしと命を守るには何が必要なのか?
研究を通して見えてきたのは、当たり前にあるものとして見過ごされがちな場、
「社会的インフラ」の絶大な影響力だったーー。
コロナ禍を経験した今こそ、私たちには集まる場所が必要だ。
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商品情報
- 著者
- エリック・クリネンバーグ, 藤原朝子
- 出版社
- 英治出版
- 書籍発売日
- 2021.12.25
- Reader Store発売日
- 2021.12.25
- ファイルサイズ
- 13.3MB
- ページ数
- 352ページ
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この作品のレビュー
平均 3.5 (14件のレビュー)
-
人々の行動を変える社会的インフラ
1995年7月に発生し多数の死者を出した「シカゴ熱波」の発生時、著者はカリフォルニアで学生生活を送っていた。
生まれ故郷で発生した大惨事に衝撃を受け、フィールドワークを開始する。
そこでわかったの…は、人種や格差など社会学者が扱う一般的な変数と死者の分布図に明らかな相関が見られなかったこと。
つまり、暴力が蔓延する貧しいマイノリティーの居住地区であっても、シカゴでもトップクラスの高級住宅街と同じくらい死亡率が低い地域があったのだ。
なぜ大きな被害を受けると思われた地区で、それを回避できたのか?
その謎が頭から離れず、解明にのめり込んでいく。
コンピューターを閉じ現場を訪れてはじめて見えてきたのは、数字ではわからない実態だった。
統計上は同じ貧しいマイノリティー地区なのに、一方では空き家やシャッターが閉まった店ばかりの地区と、もう一方では多くの人が道を行き交い、手入れの行き届いた公園のある地区というように違っている。
「こうしたローカルな条件が、日常生活でも災害時でも、重要な違いをもたらすことがわかってきた」。
条件とはすなわち、私たちの交流の形や暮らしの質を左右する物理的な場、図書館や公園、市民農園などの社会的インフラのことである。
社会的インフラこそが、日常生活の質を高めるだけでなく、天災による被害を小さくし、ひいては犯罪を削減するしくみのカギにもなっている。
"物理的な場所"が重要だと強調するのは、住民の交流意欲や価値観、文化的背景など、道徳的警告だけでは連帯が生まれないためだ。
特別な努力ではなく、公園での憩いや食料雑貨店での買い物など、継続的で反復的な、気軽な交流が日常生活の一部になっていたことが重要だった。
こうした社会的インフラのある地区に住んでいることは、「エアコンがあるのと同じくらい命を守る効果」があった。
面白いのは「インターネットは社会的インフラではない」と断言しているところ。
対面交流につながらないオンラインでの結びつきは、真のつながりとは程遠く、我々の間の分断や断絶を解決するためには、物理的環境を共有できる場所、つまり社会的インフラが必要なのだ。
「ソーシャルメディアにはたしかに大きなパワーがあるが、教会や組合やスポーツチームや福祉国家がもたらすようなものを与えることはできない。また、ソーシャルメディアはセーフティネットでもなければ、集会所でもない」
社会的インフラは、都市や郊外における、見ず知らずの人や友達や近隣住民と交流する機会など、一見なにげないけれど、実は重大なパターンに影響を与えている。
なかでも図書館は、もっとも過小評価されている社会的インフラの1つあると指摘している。
近年ではアメリカにおいて、図書館を住民にとって必要な施設ではなく、贅沢のための施設とみなしている。
書籍などコンテンツはデジタル化され、なんならインターネットで無料で利用できる。
そのため、財政が悪化すると、真っ先にその予算を削られてしまう。
しかし図書館ほど、良質な社会環境を提供している施設はない。
老若男女を問わず、誰にも開かれたこの公共の場所は、ティーンエージャーにとって、人生の基礎をつくる重要な環境でもある。
「図書館は、周囲の人を無視しつつ、ひとりぼっちではないと感じられる場所だった。そこは、特定の方向に私を励ます場所ではなくて、自分の興味を探ることができる場所だった。誰かに見られているとか、許可が必要だとか感じることなく、好きなことを自由に追求できると感じられた」
図書館職員が利用者に対してとる程よい距離感と中立性は、好奇心と自立心を育む得難い経験となるのだろう。
環境を整備すれば、犯罪を減少させることができる。
犯罪対策の議論になると「割れ窓」理論が有名だが、「割れ窓」の前に「空き家」があることを多くの人は忘れている。
窓が叩き割られるまえには、雑草が伸び放題の空き家があることを忘れてはいけない。
アメリカでは長年、刑務所をつくることが最大の犯罪対策とされてきたが、荒廃した空き地や空き家対策にこそ重点を置くべきだ。
廃屋を修繕したり、空き地は市民農園にするなど緑化することで、犯罪は劇的に減らせることが社会実験で明らかになっている。
「きちんと手入れされた緑地は、住民に頻繁に利用されるため、"街の目"によるさりげない監視が行き届くほか、当事者意識と管理意識が高くなるのだ」
続きを読む投稿日:2022.08.13
-
以前から漠然と感じていた「貧困地区は一律リスクあるのか?」という疑問が、スッキリ解決しました。コミュニティを作るための環境を作るのは大事。自分も何らかお役に立ちたい。。
投稿日:2024.01.06
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