味の台湾
焦桐(著)
,川浩二(訳)
/みすず書房
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「二十数年前に美食家だと誤解されて以来、こんな質問をたびたびされた。“何が台湾の味なのでしょう?”“台湾の特色をそなえた食べものとは何なのですか?”知っているような気がしつつも、どう答えていいのかは分からなかった。私は台湾の食文化を研究し始め、しばしばフィールドワークにも出かけるようになった。」(「日本語版序」より)現代詩と料理のレシピを融合させた異色の詩集『完全強壮レシピ』により名を馳せた詩人は、十数年にわたり台湾じゅうを食べ歩き、庶民に親しんだ食べものを味わいつくした。土地や店ごとにさまざまに異なる“小吃”の数々から透かし見えるのは、貧しく厳しい日々のなかで生活の平穏無事を祈り勤勉に働いた古い時代の人々の姿であり、ふるさとを思って作った食べもので郷愁を慰めた移民たちの記憶であり、台湾の歴史のなかで起こった文化の混淆と変容の痕跡であった。台湾の味わいを、時に甘やかに、時にほろ苦く描き出し、台湾飲食文学の聖経と評された『味道福爾摩莎』より60篇を厳選。
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この作品のレビュー
平均 4.2 (11件のレビュー)
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詩人としても知られる著者が「『台湾の味』とはなんなのか」を考えながら魅力的な台湾料理の思い出を語るうち、記憶と味の結びつきに深く分け入っていくエッセイ集。
本書で取り上げられるのはどれも屋台や家庭…の味。焦桐は自身が愛着を持つ類いの料理を「労働者階級の美食」と呼んでいる。一見粗野に見えるものにも料理人の美学が宿っていることを丁寧に説きながら、それでいて心理的ハードルは限りなく低い庶民の味を称揚する。露店の雰囲気を伝える挿画もいい味をだしている。
台湾は移民の国であり、先住民と漢民族はもちろん、オランダ・スペイン・日本の統治時代を経て混淆された食文化が「台湾の味」をなしているという。日本版まえがきでは「ポスト植民地時代の飲食文化」と言い表されている。「天婦羅」と表記される料理が「さつま揚げのおでん」だという衝撃。冬瓜を砂糖漬けにしてお菓子として食べたり、未熟なパイナップルを漬物にしてスープに入れたりする食べ方も知らなかった!フルーツの使い方ではやっぱり和食は大陸に勝てない。鶏肉とパイナップルとゴーヤのスープ美味しそうだなぁ。
食いしんぼうとしての焦桐のスタンスにはかなり親しみをおぼえた。「情欲に満ち、人を魅惑する封肉(客家風角煮)のかたまりがあるのに一杯のあつあつの白飯がなければ、どんなに寂しいことか」なんていう一文に、いい意味での暑苦しさと少しの気持ち悪さと嫌いになれない食いっぷりの良さが表れている。恋人として初めて妻の実家に行って食事したときのエピソードも強すぎる。客家というエスニシティの話も面白かった。
取り上げられる料理はどれも著者の個人的な思い出と結び付いているが、特に後半で生き別れの兄と再会したエピソードのあたりから〈記憶と食〉の関係性が一段深堀りされていく。父とは再会しないまま亡くなり(この章の気持ち全体的にわかりすぎる)、妻のガン発症と死が食の記憶と共に語られる。できたての料理が並ぶ湯気の立つ食卓はどうしようもなく生者の領域だが、同時に味の記憶で死者とつながれる空間でもあるのだ。
邦訳にあたって160篇(!)あった原書から60篇を抜きだし、食材別になっていた収録順を並び替えたという。完全な時系列順ではないものの、著者の人生を辿るような順番にしたのは正解だと思う。滋味深いスープのような食エッセイの良作だった。続きを読む投稿日:2023.03.27
現代詩と料理のレシピを融合させた詩集をだしたため美食家だと誤解されたのがきっかけで台湾の食文化を研究し始め、フィールドワークにも出かけるようになった台湾の詩人・焦桐さんの台湾の料理にまつわるエッセイ
…原書となる本には160篇収録されているそうですが、この日本版には60篇選ばれていて、たくさんの台湾の食べ物が紹介されています。
知らないものがほとんど!
食材も日本にはないものが多く、丁寧に作り方や材料が紹介されているので、想像しているととても楽しくなります。
食べてみたいな〜。
著者の生い立ち、人生、家族が合間合間に食べもののエピソード共に語られ、それがまた心に響いてきます。
特に奥様への愛情がにじみ出るエピソードに温かい気持ちになりました。
「人生とはやはり茶葉蛋のようなものだ。ときに傷跡や欠損があり、茶葉を煮こんだように、かすかに苦味がある。苦味の中に甘さがあり、渋みの中に楽しみがある。それはほほえみの中に涙がきらめくようなものだ。茶葉蛋は味のしみこむことによるうまさを表現したもので、ひび割れが多ければ多いほど味が入る。」
ちょうど菜脯蛋(干し大根のオムレツ)を読んでいておいしそう〜と思っていた翌日、台湾料理屋さんに行くことになり、メニューにあったので食べることができました。
まさに「シンプル」で「外はさくっと中は軟らか」くてとってもおいしかったです続きを読む投稿日:2024.03.14
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