猫と生きる。
猫沢エミ(著者)
/天然生活の本
この作品のレビュー
平均 4.5 (12件のレビュー)
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猫沢エミさんの存在を知らなかっだけれど、元はミュージシャンらしいです。そして、この本を読んで、彼女の虜になりました。これ程までに心をかき乱される本は初めてかもしれません。
ゴミ置き場に捨てられて…いた子猫ピキを拾った所から、彼女の猫人生は始まります。その猫を連れフランスへ渡ります。
そこで、言葉の通じない所から始まり、ピキを心の拠り所とし、彼女は成長していきます。日本とは違う、ペットとの関係性も肌で感じながら。
フランスで…
☆人はだれでも新しい世界を恐れるものだが、それは私も同じで、見合わない仕事が来ると、そのチャンスはピンチにしか思えなかった。何とか大きな仕事をやりこなすうちに分かった事は、チャンスはピンチの顔をしてやってくるというものだった。ピンチをピンチのまま受け止めてしまうのも、チャンスに変えるのも、同じ1人の人間の捉え方次第なのだと、私は考えるようになった。
☆日本ならばどの分野でも、何も知らない新人が入ってくれば先輩が気遣って手取り足取り教えてくれるものだが、ここフランスでは自分から何を知りたいか申し出なければ、何時間でもそのまま放って置かれた。自分の立ち位置を決めるのが、周りの人の反応であることが多い日本とは真逆の発想。私は「自分の存在理由は、自分で決めて良いのだ」そう解釈した。
言葉を実地で学んでいく過程で必ず発見する思想の違いは、感情だけで捉えれば、ただの辛い出来事で終わってしまうが、論理的に自分の中に落とし込むことによって、新しい価値観へと生まれ変わる。
その後、ピキを見送り、新しい猫を2匹迎えて穏やかに生活していたころ、道路に痩せ細ってほとんど動かずにいたメス猫イオと出会う。酷い状態で保護したイオは、何とか命を繋ぎ、幸せな時間を過ごす。しかし、それはほんのひと時で、間もなく深刻な病、扁平上皮がんが発覚。その病はあっという間に広がり、余命はわずか。
弱っていくイオと残された大切な時間を過ごす作者。
一番感動した場面です…
☆イオはいつものように私の右腕の中で丸くなりながら、深遠な眼差しでじっと私を見つめた。そしてほっそりとした白い手をふっと私の胸元へと差し入れた。その手は、実際に私の皮膚を貫いて、心臓のあたりに入ってくる感触があった。「イオちゃん…もしかして、天国に行ってしまったあと、私のここに宿ろうとしている?それなら心配ないよ。イオちゃんと出逢ったあのとき、ママは魂の一部をイオちゃんに預けた。だからここは空いているし、あの日からイオちゃんの場所なんだよ」
作者の溢れる猫愛や、愛するが故の葛藤、強さと弱さなどが、手に取るように伝わってきて、幸せや辛さを共感して、その大きな振れ幅が心の中でバインバインと大きく弛んで、息苦しくなる。
作者の、何事にも身を削って懸命な様子に、私は日々なんて怠惰に何もせず過ごしているんだろうとあきれたりもしたけれど、作者と猫との濃密な世界に圧倒され、身体は硬直、心は大荒れだった。
心からの猫好きな方には是非読んで欲しい一冊でした。猫はそれほど…という方は、今ひとつ共感できない部分はあるかもしれないけれど、作者の生き様には心を動かされると思います。表紙の絵も文字も素敵ですね。続きを読む投稿日:2022.05.29
猫と生きる
いつぶりかな
こんなに泣いたのは。
一昨年の11月に愛猫ルナを亡くした以来かな。
こんなにも猫を愛し、
気持ちが心に響く文を綴る
猫沢エミさん
私の猫への想いをたくさん表現してくださっ…てるみたいで、
とても嬉しかった、っていうのかな?
共感できて安らげた、っていうのかな?
なんだかわからないけど、
胸が熱くなりました。
今この時を幸せに、
ニャンコ達を幸せにしてあげたい。
また読みたいなぁって思いました。
猫沢エミさん
ねぇピキ
ねぇイオ
幸せだったね
ねぇルナも
幸せだったよね
favorite sentence
ピキは、猫生の最後を飾る、贈り物のような素晴らしい人生観を私に与えてくれた。
4匹の命のバトンリレーが見せてくれた愛と尊重は、そのままイオが私にくれた大いなる死生観そのものだった。
世界でたったひとつの命と向き合い、生きて見送ることはいつも"生"という光の中にある。
セ・ラ・ヴィ 「これが人生(だからしかたがない)」
チャンスはピンチの顔をしてやってくる。
人はなぜ、動物と暮らしたがるのか?それは、日々、人間同士が言葉を介して交流し、深く理解し合う反面、ときにその言葉で傷つき誤解が生まれる疲労感を、言葉なしでコミュニケーションする動物の存在が癒してくれるからなのだと思う。
愛したぶんだけ哀しいのなら、涙の量はピキの生涯の意義そのものなのではないか?そう考えられるようになった。
自信とは、人に見せびらかすためにあるものではなく、誰も自分など見てくれないどん底の時期に、どれだけ自分を信じられるかを指すものだと私は思っていた。
続きを読む投稿日:2024.03.01
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