刑務所の精神科医――治療と刑罰のあいだで考えたこと
野村俊明(著)
/みすず書房
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〈私には、非行少年少女や受刑者の多くが人生の偶然や不運に翻弄されているように見えた。そして、人生のほんのわずかな何かが変わっていれば、自分も少年院に入って反対側の椅子に座っていたかもしれないと感じていた〉刑務所や少年院などの受刑者・被収容者の中には、精神障害が理由となって法を犯した者もいれば、矯正施設という特殊な状況下で精神障害を発症する者もいる。しかし、受刑者たちの治療の前には、つねに法の「平等主義」が立ちはだかってきた。親の顔も知らずに育った青年。身寄りもなく、万引きを繰り返して刑務所と外の世界を行き来する老人。重度の精神障害のため会話もままならず、裁判すらできずに拘置所に収容されつづける男性――。著者は精神科医として、矯正施設でありとあらゆる人生を見てきた。高い塀の向こうで、心の病いを抱えた人はどう暮らし、その人たちを日夜支える人々は何を思うのか。私たちが暮らす社会から隔絶された、もうひとつの医療現場を描くエッセイ。
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平均 3.7 (13件のレビュー)
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矯正施設の受刑者や非行少年たちの中には、一般社会よりも高い割合で、精神障害の方や、学習面や身体面に困難さを抱えて社会に適応できずに道を踏み外してしまった方がいるとされる。
本書は、そうした矯正施設で…精神科医師として20年以上勤務した著者のエッセイである。著者の野村先生は、哲学、臨床心理学を経て、30代後半で医学の道に進んだという。この“回り道”が、野村先生の医師としての懐を深いものにしていることが、本書を読むと伝わってくる。
野村先生は、このトレーニングをすればいい、この治療でどうにかなる、ということを軽々しく言わない。むしろ何度も医療の限界を述べ、それでも試行錯誤して、根気強く、支持的に対応をしようとする。落ち着いた口調で、殊更に煽ることなく、淡々と語られる塀の中の精神医療は、非常に心を揺さぶられる。
先日も刑務所の受刑者には再犯者が多く、高齢化も深刻な状況であると報道されていた。このため国は矯正施設にリハ職である作業療法士を配置したり、触法者の地域定着支援をしたりしているが、なかなか思うようにはいっていない。自助ができず、互助、共助の力も落ちている今、矯正施設が彼らのセーフティネットとなっている。
堀の中の人たちにも人生がある。本人、家族、被害者、それぞれの人生が入り乱れ、交わる。もしかしたら、この人生は自分の人生だったかもしれない。そう思い、読み通した。続きを読む投稿日:2022.06.11
社会から隔離された場所で過ごした後、もう一度社会で暮らさなければならない。元々、居場所が無いような人達が、さらに追い詰められるようなら構造になってしまっているのだろうか。
また、精神病患者が現れたのは…ここ最近の出来事では無いというのは、興味深かった。確かに、知能などが劣っている人や、落ち着きがない人は昔からいたはずであり、彼らはどのようにして生きたのだろうか。気難しい人というイメージは持たれていただろうが、それでも、現代よりは気にかける人が多分、居たのだろうな。
精神病患者と名付ける事で、より患者は増えただろうが、一方で、彼らを気にかける人は減ったのだろう。このドアの向こうに住んでいる人は、どんな方だろうかと、私自身は考えることすらしない。こういう部分がある事を思うと、繋がりって何だろうと思ってしまう。続きを読む投稿日:2024.02.06
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