この作品のレビュー
平均 4.0 (10件のレビュー)
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現代の司書が知っておくべきレファレンスの心得が網羅された一冊。
司書課程や講習に実践として取り入れたほうが良いと思えるほど、実用的な内容で感激しました。
私のようにブラッシュアップやアップデートを目的…としても最適です。
世間からは理解や認知されにくい地味な専門職ですが、その専門性を保つためにはツールを最大限に使いこなせなくてはなりません。
他の職業と同様に苦労はありますが司書は楽しさも沢山ありますので、日々の努力を怠らず精進したいと思います。続きを読む投稿日:2020.12.09
司書の資格を取る勉強の為に読んだが、もっともっと早くこの本に出会いたかった。
メモ
p.25 グーグル一本槍の検索で手詰まりになった学生に:「では一緒に検索しながら、データベースの使い方や、キーワー…ドの発想法を覚えましょう。検索はコツをつかめばどんどん精度が上がります。同時に、『あ、こんな関連情報があった、これは使える!』と知見が広がっていくのも醍醐味です。ちなみに図書館や司書を上手に使うと、調べる力は各段に深まりますよ。」
・データベースは世界中に無数にあって迷うが、最も使いやすく便りになるのは、各分野の「定番」である。その分野の専門家なら誰でも知っているデータベース。
・データベースの内容は千差万別で検索方法にもそれぞれクセがある。特徴を知り、複数のデータベースの長所を組み合わせたり、弱点を補い合うといった軽やかなサーチが○
・日外アソシエーツがネット公開している「図書館員が選んだレファレンスツール2015」が役に立つ。データベースは自分のお気に入りをリストアップしておくと○
・検索が行き詰った!→司書がおススメする打開策は
①「複数の情報源で探す」
登山では、多くのルートを知っていてベストを選ぶか、一つしか知らないルートで行くかは命に関わる。研究やビジネスも同様、行き詰まったら情報源探しに立ち戻るのがおすすめ。
②「信頼できる情報源で探す」
主観や感情、商業的な意図、悪意の嘘や扇動。インターネットは混沌としており、もたらされる情報は玉石混合。情報の検証方法を活用して信頼性を獲得して。
③「複数のキーワードで探す」
二の矢、三の矢を放つことは、一発必中のウデを磨くと同時に、豊な余慶の獲得につながる。だから司書は、最初のキーワードで「検索の目的を達した」と言う方にも「別のキーワードも試しませんか?」とささやきかけるのである。
例:「森林」について調べたいなら、「山林」「樹林」「山岳」「forest」
④「思い込みを外す」
レファレンスをしていると、利用者の思い込み、うろ覚え、もの忘れ、誤解、誤認、錯覚、先入観は多い。いったん信じると思い込んでいることすら気付かないのが人間。③の別キーワードに当たることも、自分の思い込みに自力で気付けるきっかけとなる。
・混沌の中で虚実を手早く見分ける検索方法6つ
①できるだけ学術情報を活用する
学術論文とは、学術研究の成果として生み出された情報のこと。国や高等教育機関が絶えず検証し、正確に作成するための厳密な基準が何世紀もかけて学際的・国際的に築かれてきたもの。査読(専門家が内容を評価、検証)している。
②信頼できるサイトを選ぶ
サイトの信頼性は、URLの末尾にある「トップレベルドメイン」でチェックする。
【.go.jp】日本の政府機関、各省庁所管の研究所等が登録できるドメイン
【.ac.jp】academic 国公立大学や私立大学など
【.gov】government 主としてアメリカ合衆国の連邦政府機関や各州の自治体などで使う
【.edu】education 主としてアメリカ合衆国の教育機関で使われる。ほぼ大学のみで使われる。
ちなみにグーグルでトップレベルドメインを指定できる。設定→検索オプション→サイトまたはドメインに.edu .gov などを入力。
③信頼できる出版者、著者を選ぶ
各出版社の名著を読むなど、自分なりの出版社の鑑識眼を養う。
「新聞の記事が信頼できるか?」の問いをよくきかれる(新聞に対する社会全般の信頼度が揺らいでいる)ので入江さんは「内容の判断はできません。しかし、『この新聞が何年何月何日に、こう報道した』というのは事実ですよ」と答えている。
④記述の正確性を見る
「~らしい」「かもしれない」などの表現、伝聞、推測表現は信頼性が低い。根拠があるのか憶測なのかを見極めて。「ある研究によると」「という数字がある」も信頼せず確認すること。初歩的な誤字脱字のあるサイトも内容に精密さを欠く。
⑤複数の情報源で確認する
複数のサイトから同じ情報を得られたからといって信頼性が高いとは限らない。なぜならそれはコピペを重ね、孫引き、ひ孫引きとなったものなのかも。出典が明記されているか等検証する。オリジナルのコピー元を探すこと。また、検索上位に来たサイトが信頼できるとも限らない。
⑥自分自身の常識を疑う
・司書とは「情報の案内人」広い視点から適格なアドバイスができると◎新しいコンテンツ、データベースの使い方が変わったetc
・p.38 司書は「創造の同伴者」。研究者は自分の専門分野ではデータ探しの達人だが、専門外では必ずしもそうではない。一方で、研究の独創性を深化させるには、着想の宝庫ともいえる未踏の分野からも情報を横断的に集める必要がある。それを手伝い、積極的な提案もするのが司書の役割の一つ。歴史の専門家に経済学の最新研究を知らせる、社会学の研究者に文学雑誌で見つけたエッセイを渡す、そういうふうに異文化の資料を紹介するのも○
・レファレンス
p.42 相手の思い込みや無意識のウソに巻き込まれることなくプロの判断力を保て。
『5年くらい前の新聞で見た』と言われたら10年前までさかのぼれ。『毎日新聞で読んだ』と言われたら『サンデー毎日』もあわせて調査せよ。
入矢さんの司書としてのカンの鍛え方:
p.44 入職直後の五年間は、年刊約2万点におよぶ本の発注と受入れをし、その後の五年間は目録の作成を行う。様々な本の書名、著者名、出版社、目次、序文を読む日々。利用者から情報を求められた時、バラバラな小ネタが頭の中で結びついて「そういえばあの本!」とスパークするようになった、入矢さんのカンの原点はここにある。
・情報検索は本探しを基本とする。本には専門情報が最も豊かにあり、また、情報はメディア→記事→論文→本→辞典や事典に載るという手順をたどる。本は情報としての成熟を終えた形だといえるから。
・p.51 世の中で起きていることを『知る』には新聞がベースとなり、世の中で起きていることを『理解する』には書籍がベースになる
・検索で満足な結果が得られない時に、軽やかに気分を変えてウィキペディアにいくのも◎。必要な情報(作品がどの本に収録されたかとか)やキーワードが拾えるかも。また、検索ワードに冠詞が抜けていてヒットしない(「Echonomist」だと思ったら「The Echonomist」だったとか)もウィキペディアで正式名称がわかったりもする。
p.86・「芋づる式情報術」のススメ
情報Aに接したらAで紹介されていた本Bを読み、次はBがふれていた人物Cについて調べるというやり方。自然と広汎な情報を俯瞰できるようになる。(といういみでネットだけでなく本の情報収集はおすすめ)
・ネットの芋づる式情報術「人物メモ」
人名からのアプローチ。新聞データベースでテーマを検索し、コメントしている学者や識者を見つけてメモする
→CiNiiやOPACでその人の論文や著作を探す。テレビの情報番組や特集などで「お!」と思う発言をしていた人もメモをとると情報のツテが広がる。
・「データベースで検索する前にまずはグーグルからあたろう」ではなく、学術を対象としたグーグルのサービス「グーグルスカラー(Google Scholar)から入るのが○。それでもなかったら図書館に行ってデータベースを使う。
・p.99 グーグルスカラーの検索窓の下には「巨人の方の上に立つ」と書かれています。物理学者のアイザック・ニュートンが使ったことで知られる言葉です。私たちが先人よりも遠く広く見渡せるのは、私たちの方が優れているからではなく、積み上げられた先人の業績の上に立って世界を眺められるからだ、という意味を表しています。「先人の積み重ねた業績に基づいて創造、発見する」という謙虚な態度と、事故の人類史的な役割を忘れるなということです。
・医療についての情報を求める人は増えている。
その背景に、患者に十分な情報を伝えて治療の合意を得る「インフォームド・コンセント」が進んでいることがある。それに伴い、患者への情報提供を目的とした一般向けの診療ガイドラインもつくられるようになった。このガイドラインを探すには日本医療機能評価機能が提供する「Mindsガイドラインライブラリ」「東邦大学・医中誌診療ガイドライン情報データベース」もおすすめ。
・キーワードをタテ、ヨコ、ナナメに考える
【ヨコ】類語、日本語なら英語(庭園→ガーデン)、人物なら幼名、いみな、フルネーム、通称、愛称、送り仮名の違い(「申し込み」「申込」申込み」)、カタカナ語(「プリンタ」「プリンター」「ウイスキー」「ウィスキー」)
【タテ】上位概念と下位概念。一般的⇔個別的 抽象⇔具体 広義⇔狭義
【ナナメ】人物について調べるなら、「業績・思想・出身地・上司や部下・著作・思想・性格・生きた時代」などなどをキーワードにしてみる
・AND,OR,NOT検索を極める
・ショートカットキーを覚えて使う続きを読む投稿日:2023.09.26
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