中国の歴史4 三国志の世界 後漢 三国時代
金文京(著)
/講談社学術文庫
作品情報
講談社創業100周年企画「中国の歴史・全12巻」の学術文庫版。第2回配本、第3巻と同時発売の第4巻は、後漢末期から魏・呉・蜀の三国時代に焦点を当てる。
日本人にもっとも長く、広く親しまれてきた外国文学、『三国志』に語られる歴史は、どれほど史実を伝えているのだろうか。中国文学の研究者である著者が、小説『三国志演義』を手掛かりに、大抗争時代の戦乱と外交、文化と社会を解き明かす。
著者によれば、この時代は、現代にいたる中国の歴史を知るうえで、見逃せない重要性を持っているという。たとえば、小説では悪役の魏の曹操は、卓越した改革者であり、その子の曹丕、曹植は優れた詩人だった。曹操父子を中心とする文学運動が、後の唐詩の原点となったのである。また、広大な中国に、統一帝国を強く指向する理念が確立したのは、この時代だった。さらに、中国思想の骨格を成す儒教・仏教・道教が定着し、三教の間で論争と交流が行われるようになったのも、後漢末から三国時代のことだった。
また、陳寿の正史『三国志』や羅貫中の『三国志演義』では脇役だった呉こそが、実はこの時代を演出した影の主役だという。邪馬台国と朝鮮半島を含む東アジアの動乱は、現代に何をもたらしたか。文学から歴史を読む、中国通史シリーズとしては異色の一巻。〔原本:2005年、講談社刊〕
もっとみる
商品情報
- シリーズ
- 中国の歴史
- 著者
- 金文京
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- 講談社学術文庫
- 書籍発売日
- 2020.11.12
- Reader Store発売日
- 2020.11.12
- ファイルサイズ
- 42.1MB
- ページ数
- 440ページ
- シリーズ情報
- 既刊12巻
以下の製品には非対応です
この作品のレビュー
平均 4.1 (7件のレビュー)
-
「中国の歴史」シリーズ4巻目、「三国志演義」を歴史学の側面から検証する本。その方面に関心のある方には、面白いはず。私は「第9章 邪馬台国をめぐる国際関係」のみについて記す。
日本や朝鮮半島の考古学か…らのみ深掘りしてきた私ではあるが、この時代の中国の文献史学の信頼性は無視出来ない。批判的検証を経てどのように弥生時代末期を描いたか?1番大きな検証は以下。
「卑弥呼は景初2年に洛陽に来たのか?3年に来たのか?」
魏志東夷伝には景初2年(238年)、使者・難升米が6月に朝鮮半島の帯方郡に来て、天使に朝貢したいと申し出たので洛陽に向かわせ、12月に貢ぎ物生口(奴隷)男女10人と班布二匹二丈を献じたとある。コレは考古学界では景初3年の間違いであるというのが定説である。大きな理由は、景初2年6月は魏と戦闘中で帯方郡公孫氏が8月に滅びる直前であり、そんな余裕はなかったというのが大きい。
しかし、金文京氏は景初2年であると主張する。読んでみると、非常に説得力がある。
たかが1年の違いではない。この一年で、皇帝の代替わりがあった。よって、たかが東夷の小国に、生口10人というみすぼらしい贈り物に対して「鏡100枚」等という破格の待遇を授けた意味合いが、まるきり変わるのである。
金文京氏は文献を読んで、景初2年でも無理がないと判断する。そうすると、倭国に対して期待したのは、呉に対する魏の「牽制」だったことがハッキリするのである。つまり、呉国が海を渡って公孫氏を援助させないようにする、呉と倭国との朝貢関係を結ばせない、とさせたのである。それは景初2年でなくては意味がなかった。三国時代は、諸葛亮孔明が期待するように、三国が併立して平和をもたらすものではなかった。どうしたらいち早くTOPになるか、魏としては何としても朝鮮半島を自分のものにして呉国からの挟撃を潰さなくてはならなかった。そのためには、蛮国たる邪馬台国への過剰な接待など当たり前のことだったのである。
魏にとり、卑弥呼が凄いから、倭国が凄いから、「親魏倭王」になったわけでは無かった。
見方を変えると、まるきり違う世界が見えてくる。
つくづく「文字の力」は大きい。炎天下、大汗をかいて山を登り、土を掘り返してやっと掴んだ仮説も、机上の考察ですんなり覆る。
以下、完全私の覚えです。完全無視を。とりあえず、勉強になった。
・後漢光武帝中元2年(57)正月、「倭の奴国、貢を奉じて朝賀す」
・安帝永初元年(107)10月、「倭国王帥升等、生口160人を献じて請見を願う」←因みに、松木武彦氏は帥升を吉備国王と見ている。
・155年曹操生まれる。(ー220)
・161年劉備生まれる。(ー223)
・165年高句麗新大王即位。
・167年「この頃卑弥呼即位」と文京氏は書く。ちょっと根拠が不明。誕生としても少し早すぎる。
・179高句麗の故国川王即位。
・182孫権生まれる。(ー252)
・197高句麗山上王即位。王の兄反乱、遼東の公孫度が援助するも失敗。
・201扶南大王立つ。
・207遼東太守の公孫康が袁氏を斬る。袁氏滅亡。
劉備、諸葛亮を得る。
・208 赤壁の戦い
・216曹操魏王となる。
・220曹操死亡。曹丕皇帝に。
・221劉備皇帝に即位。
・223孫権黄武の年号をたてる。
・227諸葛亮出師表
高句麗の山上王死去、東川王即位。
・228遼東の公孫康死去、公孫淵即位。
孫権皇帝に。建業に遷都。
大月王が親魏大月氏王に封ぜられる。
・232孫権、遼東に周賀らを派遣。
魏の田豫、遼東を討つも成果なく撤退。
遼東の公孫淵、呉に使節を派遣。
田豫、成山で呉の使節の周賀を斬る、曹植死去。
・233孫権は使節を送って公孫淵を燕王に封ず。
12月公孫淵は呉の使者を斬る。魏は公孫淵を楽浪公に封ず。呉の使節の従者、高句麗に至る。
陳寿生まれる。(ー297)
・234魏の明帝が親征、呉軍は撤退。
諸葛亮死去。
高句麗王が呉に使節を送り臣従、呉も使節を送る。
・236高句麗王が呉の使者を斬り首を魏に送る。
・景初元年(237)魏、公孫淵を討つも失敗。公孫淵は燕王を自称、明帝、海船を建造させる。
・景初2年(238)1月、司馬懿が遼東を征伐。他将軍が海路、楽浪、帯方郡を攻める。公孫淵は呉に援助を求める。
6月、倭の卑弥呼の使節、難升米ら帯方郡に至る。
8月、遼東の公孫氏滅亡。
12月、明帝重病。この頃、難升米ら洛陽に到着。魏は卑弥呼を親魏倭王とし、鏡などを下賜する。
・景初3年(239)1月、明帝死去。曹芳(少帝)が即位。
2月曹爽が実験を握り、司馬懿を太傅に祭り上げ政権から遠ざける。
4月呉国遼東援助部隊が到着、既に時期を逸す。
・元始元年(240)3月、帯方郡太守が健中校尉を倭に送る。
・241、孫権は四路に分けて魏を攻撃するが、失敗。
・243、12月倭の卑弥呼の使節、伊声耆ら洛陽に到着。
・246、2月魏の母丘倹、高句麗を攻め、丸都を陥落。高句麗王を粛慎の境界まで追い詰める。
・247 王きんが帯方太守となり、張政を倭に送る。
倭に内紛が起こり、卑弥呼は帯方郡に訴える。
・248 高句麗東川王死去、中川王即位。
・249、この頃卑弥呼死去。壱与が女王になる。
司馬懿がクーデター、曹爽一派を誅殺。
壱与の使節が入貢。
・251 司馬懿死去、司馬師が跡を継ぐ。
・263 蜀が滅ぶ。
・265司馬炎が魏帝を退位、晋武帝として皇帝になる。
・266 11月倭の使節が晋に貢物を献ずる。続きを読む投稿日:2022.01.03
2021/3/12読了
後漢~三国時代。
後世のフィクションである『三国志演義』と史実との照らし合わせを中心に、この時代を解説するという切り口は、『三国志』関連の作品でおなじみの人物も多く出てきたこと…もあり、前3巻より理解がし易い内容となっていた。あと、朝貢という相手国との対等の関係を認めない外交関係が基準となっていたことが、現代まで日本と中朝韓の関係が抉れる一因になったのではないかという指摘に、なるほどと思った。続きを読む投稿日:2023.10.01
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。