未来の医療年表 10年後の病気と健康のこと
奥真也(著)
/講談社現代新書
作品情報
医療未来学の第一人者が描く、病気と医療の未来予想図、そして健康にまつわる新常識
2025年 初の本格的認知症薬誕生
2025年 病院へのフリーアクセス廃止
2030年 AIドクターが主流に
2030年 感染症の脅威から解放
2032年 安楽死法制定
2035年 がんの大半が治癒可能に
2040年 神経難病克服
2040年 糖尿病解決
★イノベーションで変わる医療
・人間不要! 診察の主役はAIドクターに
・効く理由はわからなくてもOK! ビッグデータ創薬
・不整脈も血糖値もうつ病も、スマホでかんたん測定
・非医療系企業も続々参入! 医療ビジネスは巨大市場に
★健康にまつわる新常識
・医者と患者で「治る」の意味が違う?
・自前の臓器は「節約」が得策
・60代からは小太りが健康長寿の秘訣
・おススメはゆるい運動
★日本のガラパゴス医療が生き残る道
・日本は世界の「二番手」でいるのが巧みなやり方
・日本のお手本は「医療情報管理先進国」エストニア
・外国人観光客への医療提供を本気で考える時期に
・日本流「おもてなし」クラウドで世界競争へ
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商品情報
- 著者
- 奥真也
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- 講談社現代新書
- 書籍発売日
- 2020.09.16
- Reader Store発売日
- 2020.09.16
- ファイルサイズ
- 9.5MB
- ページ数
- 256ページ
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この作品のレビュー
平均 3.8 (13件のレビュー)
-
【はじめに】
成毛さん『2040年の未来予測』の中で、医療の未来についてはこの本を参考にした、と書かれている本。著者は、東大医学部で医学博士を取得し、放射線科の臨床医として長年医者として現場にいて、そ…のMBAも取得した後に製薬会社や薬事コンサルティング会社など医療ビジネスに転身し、今はこの本で書かれているような内容を伝道する医療未来学者として活躍中。放射線科にいたことで、広く疾病についての知見を得る機会があったことや、医者だけではない複数の立場で業界を見ることができたことから医療の未来について包括的な視点を持つことができた、と自らの強みについて説明しいてる。
前著『Die革命』でも言っていた通り、医療の完成までに今は9合目まで来ているという。
【概要】
本書の表紙には、この本に書かれた衝撃の事実として次のような記載がある。
2025年 初の本格的認知症薬誕生
2025年 病院へのフリーアクセス廃止
2030年 AIドクターが主流に
2030年 感染症の脅威から解放
2032年 安楽死法制定
2035年 がんの大半が治癒可能に
2040年 神経難病克服
2040年 糖尿病解決
ユヴァル・ノア・ハラリの『ホモ・デウス』でも予言されているように、飢餓と疫病と戦争を克服した人類が次のターゲットとして「老化」の克服に向けて総力を挙げて取り組んでいることがよくわかる。その武器は、遺伝子工学であり細胞学というミクロな世界であり、そしてより根本的な原因対処に向かっている。
例えば、がんについてもかつては不治の病であり、今となれば信じ難いことでもあるのだが、患者本人に告知するかどうかが大きな問題となっていた。現状は、手術だけでなく、放射線治療、抗がん剤の組み合わせで、がんの一定期間後の生存率も向上してきた。さらに遺伝子工学の進化とともに、分子標的薬の効率が上がり、免疫チェックポイント阻害剤との組み合わせで最適解を見つけ出す、というのが現状で、シッダールタ・ムカジーが2010年に『病の皇帝「がん」に挑む』でそれまでのがんとの闘いをまとめたころからもたゆまず進歩しているのである。
アルツハイマー病に代表される認知症も、人類が闘いを挑まなければならない敵のひとつである。名著『アルツハイマー征服』に書かれた免疫治療薬アデュカヌマブも期待されるところである。
また多くの人の生活の質を落とす原因になっている糖尿病の治療や予防も大きく前進することが期待されている。糖尿病は、生活習慣病と言われているが、遺伝の影響が大きな疾患であるという。2035年ごろには糖尿病の原因遺伝子はほとんどすべて解明され、2040年には糖尿病を完全に解決できている可能性があるとまで言い切る。
また、人の臓器を耐用品として捉えて、過度な使用は早く期限か切れてしまうことにつながるのではという仮説を持っている。もちろん、定期的に動かすこと(=運動すること)は必要だし、いいことだけれど、酷使してはいけないというのである。面白いのは脳という臓器も同じように過度な使用はよくなく、脳トレにもその観点から否定的だ(それでも全く脳を使う機会がない人はやった方がいいという理屈にはなるが)。
また、「治る」という感覚も調整することが必要だし(病気にはずっと付き合う必要があり、それは悪いことではない)、中長期的な予防という概念もますます重要になる。
やや意外ではあったが、かつ著者の意見の客観性を少しではあるが高めるのではと思うのは、iPS細胞に対するやや否定的な見解である。再生医療についてはiPS細胞意外にも元からあったES細胞などの選択肢がある中で、日本発ということで勝算が薄くなった中でも賭けを続けてしまい、予算削減という判断に対しても批判的な声が上がり軌道修正ができなくなるという状況を批判している。著者は、[iPS細胞で回り道をしたかもしれない」とまで断定的に言うのである。
【所感】
著者の主張における特長のひとつは、医師法への批判的態度にある。多くの人が医師法の老朽化に気が付いているが、その改正は莫大な利益を上げている医師の既得権益に関わることであり、日本医師会の反対に会うために不都合がそのまま放置されている。今の医師法は、AIのない時代、いやコンピュータもほとんどない時代に作られたものであり、これを改正することが、日本において根本的に必要なことであることはわかる。著者が人生の多くの時間を医師として過ごしながら、現在はその医師という職業から離れているからこそ主張できるものであり、個人的にはこの分野でも大きな声を上げ続けてほしいと思うところである。特にオンライン診療については、医療リソースの効率的な活用や、患者の負担を減らすことにもつながるためにも広がってほしい。
また、これだけ医学が進歩するのであるから、医師免許更新の仕組みの必要性を上げているが、ものすごい抵抗があるかと思うが、ぜひ実現してほしいとは思う(ちなみに、中小企業診断士も知識拡充のための更新制度がある)。
著者は日本の医療制度についてもいくつか批判的な指摘をしている。国民皆保険と病院のフリーアクセス制度がどこまで維持できるかという問題、「ドラッグラグ」の問題、理系高校生の医学部偏重、「死」の定義がないことの問題(安楽死、臓器移植)、医療情報のデジタル化、などである。医療がこれから大きく変わるときに、医療制度は適切に変わる必要があるのである。
副題に「53の未来予想図」と書かれているが、バラバラのエッセイが並んでいるというものではなく、前著『Die革命』に続いて、医療の未来について、元医師であり、現在は医療革命を起こす側にいるという比較的稀有な立場からまとめられた有益な本。ここから10年で変わる必要はあるが、果たしてどうなるのか。非常に重要な問題を提起している本。
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『病の皇帝「がん」に挑む ― 人類4000年の苦闘』(シッダールタ・ムカジー)のレビュー
上巻 http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4152093951
下巻 http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/415209396X
『2040年の未来予想』(成毛眞)のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4822288900続きを読む投稿日:2021.02.21
AI、ビッグデータ、遺伝子解析などが技術的ブレイクスルーのきっかけになるようだ。
イン・シリコ(コンピューター上で薬の臨床試験の候補品をスクリーニングできる)とか、リキッド・バイオプシー(体液中の疾患…成分を分析したガン遺伝子の同時検査)など聞きなれないワードに、へぇと思った。
その他にも人工角膜、皮膚培養、分子標的薬などなど。治療よりも予防が進みそうだ。
医学の分野でも情報技術が重要になってくるんだなあ。最優秀な頭脳の若者たちは、医学部ばかり目指さずに理工学系に進んでもらいたいものだ。続きを読む投稿日:2023.01.11
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