この作品のレビュー
平均 4.0 (9件のレビュー)
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文庫化されて飛びついた、
架空の本の書評群という体裁のメタフィクション短編集
『完全な真空』(1971年)。
順序が逆で、後から刊行されていた《実在しない未来の本の序文集》
『虚数』(1973年)を先…に読んだので、
多分ついていけるだろうと思って(笑)。
収録は全16題。
■完全な真空
ワルシャワで出版された
スタニスワフ・レム著『完全な真空』の書評
(という触れ込みの文章)。
■ロビンソン物語
パリで出版された
マルセル・コスカ著『ロビンソン物語』の書評
(という触れ込みの文章)。
■ギガメシュ
ロンドンで出版された
パトリック・ハナハン著『ギガメシュ』の書評
(という触れ込みの文章)。
■性爆発
ニューヨークで出版された
サイモン・メリルの長編小説『性爆発』の書評
(という触れ込みの文章)。
■親衛隊少将ルイ十六世
フランクフルトで出版された
アルフレート・ツェラーマンのデビュー作である
長編小説『親衛隊少将ルイ十六世』の書評
(という触れ込みの文章)。
■とどのつまりは何も無し
パリで出版された
ソランジュ・マリオ『とどのつまりは何も無し』
の書評(という触れ込みの文章)。
■逆黙示録
パリで出版された
ヨアヒム・フェルセンゲルト『逆黙示録(ペリカリプシス)』
の書評(という触れ込みの文章)。
「逆黙示録」は創作活動という無駄(!)に
与しない者が助成金を受け取れる世界で、
あらゆる創造に対する控除額の一覧を提示する。
現代のある種のSNS上での投げ銭システムを予見し、
皮肉を投げかけているような気がした。
■白痴
ミラノで出版された
ジャン・カルロ・スパランツァーニ『白痴』の書評
(という触れ込みの文章)。
■あなたにも本が作れます
Universal社が著作権の消滅した古典文学を解体して
素材とし、どなたにもお好みの本が作れます、
という触れ込みで販売したDIYキットについて。
「超ミニ短篇小説を各家庭の即席文士が作って、喜んでいる」(p.161)
とは、まるで、現代のツイート文化を40年以上も前に
予見して皮肉っていたかのよう。
■イサカのオデュッセウス
アメリカ人の作家、クノ・ムラチェ著
『イサカのオデュッセウス』の書評
(という触れ込みの文章)。
■てめえ
パリで出版されたレイモン・スーラ『てめえ』の
書評(という触れ込みの文章)。
■ビーイング株式会社
ニューヨークで出版された
アリスター・ウェインライト『ビーイング株式会社』
の書評(という触れ込みの文章)。
コンピュータを使ったマッチングによって、
あらゆる事象を意図的に作用させられるようになった
――という一種のディストピア小説
「ビーイング・インコーポレイティッド」について。
■誤謬としての文化
ベルリンで出版された
ヴィルヘルム・クロッパー『誤謬としての文化』の
書評(という触れ込みの文章)。
■生の不可能性について/予知の不可能性について
プラハで出版されたツェザル・コウスカもしくは
ベネジクト・コウスカ教授が物した全2巻の
『生の不可能性について/予知の不可能性について』
の書評(という触れ込みの文章)。
■我は僕(しもべ)ならずや
アーサー・ドブ『我は僕ならずや』の
書評(という触れ込みの文章)。
ペルソナ(人間)とゲネティカ(創造)を合わせた
「パーソネティクス」という名で呼ばれるプログラムの住人、
人間に似た「パーソノイド」
――恐らく今日AIと称されるもの――について。
■新しい宇宙創造説
アルフレッド・テスタ教授による
ノーベル賞受賞時の講演のテキスト
(という触れ込みの文章)。
特に面白かったのは「親衛隊少将ルイ十六世」と
「てめえ」(笑)。
前者はナチスの元親衛隊将校ジークフリート・タウドリツが
第二次世界大戦後、アルゼンチンへ逃れ、
パリシアと名付けた奥地に王朝を築く――という、
コンラッド『闇の奥』を想起させる筋立ての小説評。
実在するなら是非読んでみたいと思ってしまった。
後者曰く、作品の原題はフランス語「toi」。
著者レイモン・スーラは作中で読者に語りかけるのではなく
“読者について”語ろうとしたのだと述べる。
野心的なアイディアではあったが、その試みは失敗に終わった、
何故なら著者が成し得たのは
アクロバティックな言語上の曲芸に過ぎなかったから。
書き手の読者に対する反乱の形式は
沈黙以外にあり得ないのだと、評者は語る。
いずれにしても、訳者の一人、
沼野充義先生の解説にあるとおり、
レムは架空の書物を書くことで、
作家と批評家という二つの相反する精神を結合させたのだろう。
作中に《書評家》の意識が織り込まれることで成立する
メタフィクションの魔術を堪能した。続きを読む投稿日:2020.01.29
短編集
SFらしく、学者のこころに満ちている
● 「新しい宇宙創造説」
“教養のある人ならばこの著作の題名くらいは知っているでしょうし、著者の名前も聞いたことくらいはあるでしょう。しかし、それだけ…のことです。
続きを読む投稿日:2022.10.31
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