「小児性愛」という病――それは、愛ではない
斉藤章佳(著)
/ブックマン社
作品情報
「そりゃセックスもしましたよ。恋人同士ですもん。それを周りの人たちが、ぶち壊したんです。 私がロリコンで、Yちゃんは被害者だといって引き離したんです。
私はそんな人達によって犯罪者にさせられました。おかしいのはどっちだっていいたいです…」
これは、12歳の少女に性加害をした49歳の男性のケースです。
女子児童の側には、交際しているという認識はありません。怒ると声を荒げる男が怖くて、言われるがままになっていたのだとわかっています。
彼がしていたのは、明らかに加害行為です。子どもに肉体的・精神的に後々まで残る多大なダメージを与えました。
しかし、彼が見ていたのは、「子どもから求めていた」「子どもはよろこんでいた」という光景。事実とは、正反対です。
クリニックで子どもの性加害経験者からヒアリングしていると、これは性加害をする者なら誰もが持っている、特有の思考の歪みだと実感します。
彼らの問題行動の背景には、精神疾患があります。日本語では小児性愛障害、英語ではPedophilic Disorder, Pedophiliaといわれ、この「ペドフィリア」という語のほうが馴染みがある人もいるでしょう。
私は、150名を超える子どもへの性加害者らと関わってきて、彼らも私達と変わらない、同じ“人間”だと考えるに至りました。決して性欲が抑えられないモンスターではありません。
子どもへの性被害、つまり小児性愛障害は、社会のなかで学習された行動です。大げさかもしれませんが、いまの日本社会が「ペドフィリア」を生み出し続けているといっても過言ではありません。
本書より抜粋
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商品情報
- 著者
- 斉藤章佳
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- ブックマン社
- 書籍発売日
- 2019.11.20
- Reader Store発売日
- 2020.03.27
- ファイルサイズ
- 15.7MB
- ページ数
- 296ページ
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この作品のレビュー
平均 4.0 (12件のレビュー)
-
小児性愛者、ペドフィリア、ロリコン。
彼らの認知は歪んでいる。フリーズした状態を受け入れた、同意があったと思い込み、子供から求めてきたと信じ込む。
挙げ句の果てに、LGBTと同じ文脈で語られるべき、と…まで。
本書には、実際の加害者の言葉も綴られている。
もし、自分が被害者なら、知人の子が被害に遭ったら、ありとあらゆる暴言を浴びせ、GPSで管理し、人権を剥奪しろと言われたら同意してしまうかもしれない。
でも、心を落ち着かせて読んでみよう。
彼らの論理は何か。
なぜ独特の思い込みに至るのか。
何が問題か、再犯防止のために何が必要か。
そういった論点を非常に丁寧に、かつわかりやすく書いている。
扱う内容は悍しく、苦しい箇所もあったが、これらを知ることで、何かが、変わるかもしれない。
本書で議論になりそうな箇所は「児童ポルノ」について。
著者は「児童ポルノは確実にトリガーになりうる」(119頁)と断言する。
表現の自由との兼ね合い、また、単純所持だけなら犯罪抑止になるという反論についても、臨床の立場から異論を唱える。
「現実とファンタジーの区別はつく」という抗弁に対しても、真っ向から批判する。
欲望は増幅する。
初めは2次元で我慢していても、だんだん欲求が高まり、ばれなかったことに味を占めるものがいることは間違いない。
206頁、「被害者が加害者を許さなければならない謂れは、全くありません」
257頁、「日本は、「女性は男性の性を受け入れなければならない」という社会通念がとても根強い国です。」
258頁、「日本は女性にかわいさと未熟さを求める社会であり、女性に男性の性欲を引き受けさせる社会です。どちらも、女性と男性が同等であれば起こりえないことです」
260頁「自分の中にある加害者性と向き合う必要があります」
私たちが生きる社会はとても未熟だ。
だからこそ、こういった指摘を真摯に受け止め改善していくべきだ。
もし、それが果たされないのであれば、こどもたちだけではなく、私たち大人にとっても決して安全ではなく、また過ごしやすい社会にはなりえないだろう。続きを読む投稿日:2020.03.02
児童わいせつを犯してしまった人たちが、どのような心境で実行に至ったのか、逮捕や服役した後のことなどとても詳細に書かれていた。本の中での使われ方は違えど、児童へのわいせつを起こす原因として「ケーキの切れ…ない非行少年」にもあった「認知の歪み」という表現が使われているのが興味深かった。
・盗撮や痴漢といったAVを好む人と実際に犯罪を犯す人の統計には関係がみられなかったのに、児童ポルノの所持と児童わいせつの実行率には様々な調査で関係がみられる。児童ポルノの規制は事件の防止のために不可欠。
・小児性愛に目覚めてしまった原因に家庭環境やモテない思いをしたことによる劣等感などがあるが、「原因」があっても罪を犯した「責任」は本人にある、という認識でないと治療につながらない。
・児童わいせつは特に釈放されてからの再犯率が高い。加害者への治療は、本人や家族のためでもあるが、それ以上に新たな被害者を増やさないためのものである。
・かわいい=自分より小さい、弱いものに対して心引かれる感情、を抱く時点で人は対象を弱い(下の)存在だと無意識に認識している。性犯罪に限らず、自分もふとしたきっかけで加害者になるかもと自覚的であるべき。
・性犯罪者にGPSをつけるなどの対策を行う国もあるが、コストに対して再犯率が減少しているとは言いがたい。
「こんな事件が二度と起きないように、同じような法律を日本にも導入しろ」と反射的に言うのではなく、事件を防ぐには何が必要なのか、を考えるのにとても参考になる。
「うちの子に限って」というのは被害者・加害者家族が言う常套句である。最悪の事態を少しでも防ぐために、教育関係者や子をもつ人など、できるだけ多くの大人に読んでもらいたい一冊。続きを読む投稿日:2023.03.26
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