韓国 現地からの報告 ──セウォル号事件から文在寅政権まで
伊東順子(著)
/ちくま新書
作品情報
セウォル号事件、朴槿恵退陣を求める巨大デモ、悪化する日韓関係、文在寅政権下の分断……そのとき、韓国では何が起こっていたのか? 人びとは何を思い、考えていたのか? 二〇一四~二〇年はじめまでに起こった出来事のほか、過度の競争を強いる教育制度、軍隊生活や不動産階級社会の実際、日韓をつなぐ人や物など、さまざまな物事を現地から報告する。メディアにはあらわれない韓国の人々の本音、日々のつぶやきを聞き取り、思考するための一冊。
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商品情報
- 著者
- 伊東順子
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 筑摩書房
- 掲載誌・レーベル
- ちくま新書
- 書籍発売日
- 2020.03.10
- Reader Store発売日
- 2020.03.20
- ファイルサイズ
- 11.7MB
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この作品のレビュー
平均 4.2 (10件のレビュー)
-
珍しい韓国の同時代史である。伊藤順子さん、「中くらいの友だちー韓くに手帖」という雑誌を編集、翻訳業も担っている。「82年生まれ、キム・ジヨン」の巻末解説も書いた人である。嫌韓の立場でもなく、韓国を無駄…に褒めもしない「中くらい」の立場を保っている、と見えた。在韓日本人。
日本のワイドショーとウェブは、主に嫌韓寄りだ、と私は思慮する。特に徴用工とレーダー照射問題が報道されていた2018年-19年はそうなり、ともすると伊藤順子さんの主張は左寄りに見えるかもしれない。しかし、全て読んだら分かるが、伊藤さんは一貫して変わらない。世の中が変わったのである。
特に強調しているのは、韓国で起きていることと、日本での報道の「ズレ」である。
曰く。
・2014年のセウォル号沈没事件では、韓国は過激なデモや警察の弾圧が日本で報道されたが、韓国人は1年間常に寡黙にずっと哀悼していた。
・朴槿恵退陣を求めるロウソク集会で、韓国全土で200万人が結集したと聞き、日本の一部は「韓国の民主主義が羨ましい」と話題になった。伊藤さんは「日本の安保法制のデモと比較しているのだろうが、悲観することはない」という。政策やイデオロギーデモならば意見は割れる。今回は、韓国国民の「愛国心」に火がついたのである、と。「政権の腐敗を正す」。そういう時に燃えるらしい。(←そういう腐敗の時でも20万人デモさえ、日本は起こらないだろうとは私は予想する)
・因みに、大統領退陣を求めるロウソク集会で、韓国人は何に怒っていたのか?ちょっと時系列を紹介する。
(2016年10月24日) JTBCテレビが崔順実のPCを入手して「秘腺」(外部相談役→司令塔)の証拠を明らかにした。
(10月29日)光化門広場で大統領退陣を求めるロウソク集会3万人。
(10月31日)崔順実緊急逮捕。
(11月4日)朴槿恵第二回謝罪会見。第二回ロウソク集会、20万人。
(11月26日)全国で200万人が退陣を訴える。
つまり、ムーダン(巫女)のような存在が大統領の「司令塔」だったことに、若者は民主主義の危機を感じ、老人たちは父親の朴正煕元大統領に申し訳ないと思ったのである。ところが、この韓国人の気持ちは莫大な日本の報道の中からは、ほとんど伝わってこない(と、私は感じる)。
・徴用工問題で「反日デモ」「日本製品不買運動」が起こった、と日本では大きく報道された。しかし、最大で1万5千人である。しかも、徴用工の時の主張は「反日」ではない。「反アベ」だったのである。しかも、徴用工と従軍慰安婦は、担う団体は、まるきり別系統。日本は一緒くたに「反日」としているが、それにも「ズレ」があると伊藤さんは言う。
・「従軍慰安婦問題」と「徴用工問題」を伊藤さんなりに条文に沿って整理しているが、この視点は、日本人はどのくらい共有しているのだろう。日本人の誰が関連条文、政府公式発言をしっかり読んでいるのだろうか。ワイドショーとウェブが一色に染まって、私はキミ悪さを覚える。
全てではないが、伊藤さんの主張には大いに同意する。特に、韓国人は日本人が思っているほど反日ではない。私も何十回と韓国を旅して、何度もそう思った。
以下、説得力を持たせるために私の体験を具体的に書くが、長くなるのでスルーしてくださって結構です。
2012年8月11日、私は長い韓国旅行をしていた。前日は慶州の安宿に泊まった。前日は韓国大統領が、大統領として初めて独島(竹島)に上陸したと言うことで、携帯の日本のSNSは大騒ぎをしていた。
朝4時に起きた。オリンピックのサッカー韓日戦が始まっている。まだ0-0だ。ところが、日本のパスが全然通っていない。そして向こうのFWが神懸かった様な個人技で一点獲ってしまった。その後もいいところなし。0-2で終る。韓国のチャンネルは4局でやっていて、全部実況の声が違っていた(日本は一つ)。慶州の田舎では、流石に終わった後も外は騒がしくはならなかった。
慶州でいいことなんて一つも無い!ということで、6時50分発のバスで引き上げることにした。大邱に行って陜川のバスがあればそれに乗り、古墳群を見るためである。
そしたら、長距離バスの中の朝のニュースは、八割がサッカー、一割は大統領独島訪問、他はオリンピックニュースだった。この割合は、バス待合所やホテルのテレビでもずっとそうだったか、むしろ独島訪問は無視されていた。
韓国人にとっては、独島(竹島)は愛国心発露の象徴ではあるが、今回ばかりはサッカーによって完全に消し去られた。
そのあと、ずっと私は韓国の田舎を15日ほど旅したのであるが、韓国語が拙い明らかな日本人の私を差別したり、嫌ったりされたことは一度もなかった。むしろ、たくさんたくさん親切してもらった。道を丁寧に教えてもらうこと数えきれず。日本人と分かると、むしろ「こんな田舎によくきた」と見知らぬ私を、家や、絵の工房や、合唱の練習場に引き入れ、コーヒーをご馳走してくれたことが三回もあった。人と場所は、勿論違う。日本人は、果たして外国の通りすがりの旅人にそんなことをするだろうか。
ところが、日本に帰ってきた時に、例外なく先ず聞かれたのが、「韓国大丈夫だった?」のひとことである。この2週間、日本人は在韓反日(私のような旅人へ)の心配よりも、在日嫌韓(韓国嫌いへ)の嵐が吹き荒れていたのだと合点した。
日本人は韓国人をわかっていない。私もまだわかっていないことを本書を読んで痛感したが、少なくとも日本人の韓国認識には大きな「ズレ」がある。
〈後書き〉で、伊藤順子さんは旧正月をあけた後の韓国の新型コロナウィルスのことに触れている。2015年に、韓国の社会がMERSウィルスでパニックになったのは情報公開がきちんとされなかったかららしい。この時、朴槿恵政権は2016年春の国会議員選挙(4年に一回)で、事前予想を大幅に裏切って大敗をする。今年の4月に、また国会議員選挙があるのは巡り合わせであるが、その結果に注目してほしいという(伊藤さんは2020年2月に原稿を書いている)。「日本人はそこから学ぶべきことがあると思う」。
結果は文在寅政権の大勝だった。
初期からの対応、情報公開、「公平で公正な社会」への理想。それがどれだけ実現したのかは、どこかで伊藤順子さんにまた語ってもらいたいが、結果は出た。翻って日本はどうだろう。
韓国は、いろんな意味で「注目すべき隣人」だと思う。
続きを読む投稿日:2020.04.29
第2次安倍政権(2012年〜20年)下で進行した「嫌韓」ブームを背景に、日本のワイドショーによる一面的な報道に反発して(池上某も批判されている)韓国側の目線で時事トピックを解説した連載のまとめ。
映画…やドラマでは統制と抑圧が過剰に描かれがちな学校生活だが、現実には2010年以降、各地方において児童生徒人権条例が成立して、体罰禁止、茶髪化粧携帯電話の自由などが保証されているという話題には驚かされた。成立の過程には児童達も参画しているという事情を知ると、18歳選挙権を与えられた日本の高校生達が見習って頑張ればブラック校則の撤廃も可能なのではないかと……。
【蛇足】今では聞かなくなった「キーセン観光」を取り上げて、「韓流ブーム」をその裏返し(リベンジ)と説くくだりはなるほどと。続きを読む投稿日:2023.08.06
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